夏の需要期終了で動力炭相場に下落圧力、長期的には需要横ばいか

 中国では夏の動力炭需要のピークシーズンが終盤を迎え、国内最大の石炭積み出し港・秦皇島の主要スポット価格指数が3週連続で調整した。動力炭相場を1トン=500-570元の目標レンジに抑えようとする国家発展改革委員会(NDRC)の意向が反映された形。続く需要閑散期を控え、BOCIは向こう2カ月、動力炭価格の下落圧力が続く見通しを示し、香港上場の石炭銘柄の逆風になるとした。個別銘柄の目標株価を上方修正しながらも、セクター全体に対する従来の強気見通しを中立的に引き下げている。

 中国経済の力強い成長(2017年上期の実質GDP成長率は前年同期比6.9%)や、異例の猛暑、さらに水力発電量の落ち込みを受け、上期には石炭火力部門の発電量が前年同期比7.1%増加。その結果、動力炭需要は前年同期比3.8%拡大した。ただ、BOCIは下期の需要軟化を予想している。北部地方で、「気代煤」(石炭利用をガス利用に置き換える)プロジェクトが本格化するとみられることが、ピークシーズンの冬場の石炭需要に影響する見通しという。また、政府によるクリーンエネルギー普及促進策の影響で、長期的には国内の石炭需要が横ばいか、あるいは小幅の減少傾向を示すとみている。

 NDRCが年間276日を上限とする作業日数制限を緩和したことで、国内の石炭生産量は17年上期に前年同期比6%増加した。過剰設備の是正に向けた「供給側(サプライサイド)改革」は順調に進行しており、上期に閉鎖された炭鉱は年産1億1000万トンと、当局の通年目標の74%を達成した。当局はその代わりに新規炭鉱の操業開始や優良炭鉱の増産を認めつつ、輸入を一部制限する形で供給を抑制する手法を取っている。

 BOCIは秦皇島における17年の山西省産高品位炭の予想スポット価格を1トン当たり平均550元から595元に上方修正。18年、19年に関しては同535元との予想を据え置いた。この数字はNDRCの目標レンジ(1トン=500-570元)の中央値に当たる。

 一方、コークス価格は鉄鋼生産量の増加を背景に、7月から再び値上がりに転じたが、BOCIは北部での鉄鋼生産の制限を受け、冬場にコークス価格が軟化する可能性を指摘している。山西省産強粘結炭の17年の予想平均価格については、1トン当たり679元から785元に上方修正。18年、19年の予想値も同600元から680元に引き上げた。

 BOCIは、中国神華能源(01088)とエン州煤業(01171)に対して強気見通しを示した。中国神華能源は石炭相場が低下した4-6月期の純利益が前期を上回るとの見通しを発表しており、BOCIは事業多角化が奏功したとの見方。下期には露天掘り炭鉱2カ所の生産停止で30億元の損失が発生すると予想しながらも、17-19年通期の予想純利益を10-16%増額修正した。また、エン州煤業は上期純利益が前年同期比440%増となる見通しを発表済み。豪コール・アンド・アライド買収が18年利益を約20%押し上げる予想と、現在株価の低バリュエーションを強気見通しの理由とした。