今週の予想

経済指標が堅調で、米国市場株価が戻りを試せば連動

 米国株式は米中通商協議の進展期待を織り込みながら年初から上昇しましたが、3月になって高値警戒感から上値が重くなりました。さらにここへきて、世界的な景気減速懸念を生じさせる、次のようなニュースが多く出てきました。

・12月米貿易赤字が10年ぶりの高水準となった

・OECD(経済協力開発機構)が世界景気の見通しを下方修正

・米ベージュブックで多くの地域で景気減速が指摘されてきた

・ECB(欧州中央銀行)が2019年、2020年のユーロ圏の成長見通しを引き下げ、利上げの時期を引き伸ばした

・中国の2月の輸出入が減少した

・2月米国雇用統計で、非農業部門雇用者数が予想を大きく下回った

 そのため今週の日経平均株価は、米国を始めとする主要国の経済指標の内容や英国のEU(欧州連合)離脱問題の結論をにらむ神経質な相場が続くことになります。悲観的見方が広がれば、欧米株安とともに日経平均も2万1,000円を割り込む水準で下値模索の動きとなります。

 日経平均は11日(月)朝方、自律反発で始まり、時間外の米国株価先物の下落を受けて、一時▲87円の2万938円まで下げたものの再度切り返し、後場になると上海株式の上昇や自律反発の強まりで、一時+120円の2万1,145円まで上昇。終値は+99円の2万1,125円となりました。ここから米国市場が戻りを試す動きとなれば連動することになります。しかし、NYダウ平均株価がまだ下値を試すようだと、今週は下値確認の動きとなります。

(今週の指標)日経平均株価

 今週の日経平均は、世界経済の減速懸念が広がる中、米国を始めとする主要国の経済指標内容や英国のEU離脱問題の結果を睨む神経質な取引となりそうです。

 悲観的な見方が広がって欧米株式が下落すれば日経平均は、2万1,000円を割り込んだ状況で下値模索の動きとなりそうです。

 下値ポイントとしては、2018年12月26日の1万8,948円の安値から今年3月4日の2万1,860円の戻り高値までの上昇幅(2,912円)の3分の1押しの2万890円水準、2万500円水準の心理的フシ、2分の1(半値押し)の2万404円水準が目安となります。

(今週の指標)NYダウ平均株価

 米国の経済指標が強弱マチマチの発表となっており、今週は、今後の経済指標で景気動向を見極めたいとの思惑が強まることになりそうです。例えば、地区連銀経済報告(ベージュブック)では、多くの地域で景気減速が指摘され、2月雇用統計は予想を下回っている一方で、足元では2月ISM非製造業景況指数や12月新築住宅販売件数は予想を上ブレしており、強弱入り交じっています。

 先週の予測では、地政学的要因や政治要因で不安材料がある一方で、好調な経済指標が出てきていることもあり、強弱の材料が対立する中で高値圏でのもみ合いを想定しました。ところが、2018年10月の高値から12月の安値までの下げ幅の80%以上を急速に回復していきていることで、高値警戒感が出て利益確定売り優勢となりました。 柴田罫線を見ると10月3日の2万6,951ドルをピークに、順下げの三尊天井[(1)(2)(3)]となって急落後、3山目を突破して、2山目の11月8日の2万6,277ドルに接近する2万6,241ドル(2月25日)まで戻しています。

 結局、ここが高値となり、高値警戒感の中で中国の景気悪化懸念や北朝鮮のミサイル基地の回復、さらに週末にはECB発表の2019年の成長率見通しの引き下げもあり、世界経済の減速懸念から、NYダウを始め、S&P、ナスダックの主要3指標は5日続落で引けました。チャート的には、NYダウの下げ幅は今のところ大したことはなく、2月8日の2万4,883ドルを切らなければ問題はありません。

(今週の指標)ドル/円

 今週は、追加利上げ観測は一段と後退し、ドル買い要因より強い売り要因が多く、ドルの上値は重くなることを想定し、1ドル=110~112円の基本レンジを想定しました。

 ECB(欧州中央銀行)やBOE(英中央銀行)は金利引き上げに慎重であることから、FRB(米連邦準備制度理事会)の追加利上げ観測も弱まり、ドル先行地合いとなるものの、今週発表される米経済指標が低調だった場合は、早期追加利上げはさらに後退し、ドル買いは抑制されることになります。

 先週の予測では、FRBの追加利上げ停止観測で、政策金利がしばらく据え置かれる公算から、ドル買いがさらに高まってくる可能性は低く、111~113円の中で円高方向でのもみ合いを想定しました。

 結果的には、週始めはISM製造業景況指数や12月新築住宅販売件数が市場予想を上回ったことで、3月5日に112.14円までドル買い先行となるものの、OECDの世界経済の成長見通しの引き下げや12月の米貿易収支の大幅な赤字などを受け、リスク回避によるドル売り・円買いが優勢となりました。さらに週末3月8日には、前日のECBの2019年、2020年のユーロ圏の成長率の引き下げ決定を受け、ドルは一時110.79円まで売られ111.16円で引けました。

先週の結果

先週は、週始めこそ、2万1,860円と3カ月ぶりの高水準となるが、その後は4日連続安の2万1,25円で引ける

 先週の予測では、チャート的には目先の戻りを試す動きで、まずは2019年10月2日の高値2万4,448円から、12月26日の1万8,948円までの下げ幅の半値戻しである2万1,698円を試すところであり、さらにNYダウ平均株価に比べて日経平均株価は出遅れ感があることから、出遅れムードが高まれば2万2,000円を目指すことになるとしました。

 しかし、相場環境としては、インド、パキスタンの地政学的リスク、トランプ米大統領のロシア疑惑の再燃や、3月期末を控え機関投資家の決算対策売りへの警戒感が出てくるところとしました。また、週末にはメジャーSQ(特別清算指数)や中国2月貿易収支、米2月雇用統計の発表を控え、週後半は手控えムードとなりそうだとしました。

 結果的には、週始めに日経平均は一気に下げ幅の半値戻しである2万1,698円を突破して2万1,860円まで上昇して、2万1,822円と3カ月ぶりの高値水準で引けました。 ここでNY市場が堅調であれば2万2,000円目標となったところですが、米国株式の主要3指標が高値警戒感から利益確定売りが続き、世界的景気後退懸念が出たことで、4日続落となり日経平均も5日(火)からは4日続落となり、特に週末の8日(金)は、日本も世界景気の先行き懸念から▲430円の2万1,025円で引けました。

3月4日(月):前週末の米国株高、1ドル=112円に接近する円安を好感し、寄り付きから+210円の2万1,812円と高値で寄り付き、後場には一時+257円の2万1,860円まで上昇し、その後は一服商状ながら高値圏で推移して、+219円の2万1,822円で引け、3カ月ぶりの高値水準となりました。 このまま2万2,000円目標も期待できましたが、この日の米国市場では、高値警戒感からの利益確定売り優勢となり、3指標そろって下落となりました。

5日(火):日経平均は、米国株安で売り先行となり、一時▲160円の2万1,659円まで下げ、引け値は▲95円の2万1,726円と3日ぶりに反落しました。

6日(水):前日の米国市場は、小幅ながら3指標そろって続落となったことで、日経平均も先物を交えての売り先行となり、一時▲175円の2万1,550円まで下げ、▲129円の2万1,596円で引けました。

7日(木) 前日の米国市場では、2018年の貿易収支が8913億ドルの過去最高の赤字となり、特に中国に対する赤字が過去最高となったことで、トランプ大統領の米中通商交渉圧力を強める結果になるのではないかとの懸念から3指標大幅下落となりました。 これを受けて日経平均も3日続落となり、売り先行後は方向感の乏しい展開となり、▲140円の2万1,456円で引けました。 この日の引け後の米国市場では、ECBが2019年の成長率見通しを引き下げたことで世界的景気減速懸念が高まり、NYダウは一時▲320ドルまで売られ、引け値は▲200ドルとなりました。3指標そろって大幅な4日続落となりました。

8日(金) :日本市場は、前日の欧米株式の下落を受け、先物中心に売り先行となり、▲116円の2万1,339円で寄り付いたあと、円高や上海株式の下落を嫌気して前場は▲359円の2万1,102円まで下げました。 後場になると2月の中国貿易統計で輸出額が大幅に減少したことを受け下げ幅を拡大し、一時▲462円の2万993円と2万1,000円を割り込みました。ここでは少し下げ渋って▲430円の2万1,025円と大幅な4日続落となりました。

 引け後の米国市場は、注目の2月雇用統計で非農業部門雇用者数は予想を大きく下回り、さらに中国の2月貿易統計で輸出が大きく落ち込み、また、原油相場も下落したことで、世界経済の減速懸念が強まり、NYダウは▲220ドルまで下げました。ただ、引けにかけて下げ幅を縮小し▲22ドルの2万5,450ドルで引けました。そのためシカゴ日経先物は一時2万645円まで下げましたが、引け値では+135円の2万905円となっています。