今日は、「優待タダ取り」について解説します。ネットで「優待タダ取り」と紹介されることが多い手法ですが、正確に言うと、「株主優待を、低コスト・低リスクで得る方法」です。取引手数料・貸株料などのコストはかかります。

 今日はその概要を説明し、明日、「3月末基準の優待銘柄」で具体的にどうやればいいのかを解説します。

 

株主優待制度とは

 日本には、世界でも珍しい「株主優待」という制度があります。上場企業が株主に感謝して贈り物をする制度です。上場企業が株主に、お中元やお歳暮を贈るようなものです。

 株主への利益還元は通常、「配当金」の支払いで行います。「株主優待品」は、配当金とは別に株主に贈られるものです。魅力的な制度なので、積極的に活用したら良いと思います。

 

優待は欲しいが、株価が下がるリスクを負いたくない場合、「つなぎ売り」を使えばよい

「つなぎ売り」を利用して、株価下落リスクを回避しながら、株主優待を獲得する方法

 株主優待に魅力を感じて、株式投資を始める方が多いと聞いています。ただし、株式投資である以上、投資した後、株価が下落することもあります。

 優待は欲しいが、株価変動のリスクは負いたくない時、活用したらいいのが「つなぎ売り」です。「つなぎ売り」は信用取引の一種で、信用口座を開設しないとできません。

 

優待取り「つなぎ売り」のイメージ図

出所:楽天証券経済研究所

【参考1】「つなぎ売り」とは

 株を借りてきて売ることを、「信用売り」といいます。株を持っているが、持っている株を売らず、別途借りてきた株を売ることを「つなぎ売り」と言います。株を保有したまま、株が値下がりするリスクをヘッジする効果があります。この状態で、権利確定日を迎えると、優待をもらう権利が確定します。権利が確定したら、保有している株を、借りてきた株の返済に充てれば、取引が完結します。保有株を、返済に充てることを「現渡(げんわたし)」と言います。

【参考2】「から売り」とは

 保有している株を、借りてきて売るのが「つなぎ売り」でした。それに対し、保有していない株を借りてきて売ることを「から売り」といいます。から売りした株が、値下がりした後に買い戻せば、利益が得られます。たとえば、1,000円でから売りした株が、900円に値下がりしてから買い戻せば、1株につき、100円の利益が得られます。

ただし、から売りした株が、値上がりしてから買い戻すと、損失が発生します。

「つなぎ売り」のやり方:現物買いと信用売りを同じ株数ずつ行い、優待の権利を得たら、現渡しで決済する

 それでは、つなぎ売りのやり方を具体的にご説明します。

優待取り「つなぎ売り」のイメージ図

出所:楽天経済研究所

 まず、魅力的な優待を提供している銘柄について、株式現物の「買い」と、信用取引の「売り」を、同じ株数ずつ、同じ価格で行います。買ってから売っても、売ってから買っても、どちらでも問題ありません。同じ価格で行うのが理想ですが、同じ価格で行えないこともあります。

「買い」と「信用売り」を同じ株数(たとえば100株)ずつ同じ価格(たとえば1,000円)で行えば、株価が上がっても下がっても、損も得もしません。

 株価が1,000円から900円まで下落すると、買った株に10,000円(値下がり100円×100株)の含み損が発生しますが、同時に、信用で売った100株には10,000円の含み益が発生します。合わせると、損も得もしません(売買手数料は考慮しないベース)。

 逆に、株価が1,000円から1,100円まで上昇すると、買った株に10,000円の含み益が発生しますが、同時に、信用で売った株に10,000円の含み損が発生しますので、合わせると、損も得もしません。

「優待は欲しいが、株価下落リスクは負いたくない」時に、有効な方法です。優待の権利を得たら、速やかに、現渡し(げんわたし)で決済してください。それで、完結です。

 

つなぎ売りを使った優待取りにかかるコストが、優待で得られるメリットよりも、大きくならないように注意。制度信用でなく一般信用を使うのが望ましい

 最初に、お伝えしたように、「優待タダ取り」はできません。売買手数料や、貸株料などのコストがかかります。優待取りにかかるコストが、優待で得られるメリットより大きくならないように、注意する必要があります。

 具体的な、つなぎ売りのやり方、コストの計算方法については、明日、解説いたします。

 

つなぎ売りを行うにあたってのご注意

 

 

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