米国の航空会社を取り巻く環境は良い
米国の航空会社を取り巻く環境は良いです。折からの好景気で旅客が多いこと、無茶な事業拡張を試みる業者がいないこと、ジェット燃料の価格が比較的低位で安定していることなどがその背景にあります。
図1は有効座席マイルという指標で、各社の運航する旅客機の総座席数に、運行した距離を掛け算したものです。「顧客輸送力のキャパシティーがどれだけ増えているか」を示す指標だと思ってください。
図1:有効座席マイル(年次報告書)
これを見ると各社ともキャパシティーは微増に留まっており、無秩序な競争が起きてない様子がうかがえます。
次の図2はロードファクターと呼ばれる指標です。これは有償座席利用率とも呼ばれ、「お金を払って乗っている乗客で座席がどのくらい埋まっているか」を示す指標です。
図2:ロードファクター(年次報告書)
当然、この数値の高いほうが稼働率は良いことになります。
デルタ・エアラインズ(ティッカーシンボル:DAL)が抜きん出て高く、一方、かつての優等生だったアラスカ・エアー(ティッカーシンボル:ALK)はロードファクターが落ちています。また効率経営で知られてきたサウスウエスト・エアラインズ(ティッカーシンボル:LUV)も精彩がありません。
図3の有効座席マイル当たり旅客収入は「旅客機を飛ばすことで1つの座席が1マイル飛ぶごとに何セント(¢)稼ぐか」を示しています。
図3:有効座席マイル当たり旅客収入(年次報告書)
言い換えればキャパシティー当たりの「売上げる力」を示しています。ここでもアラスカ・エアーの凋落(ちょうらく)が目を引きます。
米国航空会社5社の業績分析
デルタ・エアラインズ(DAL)
デルタ・エアラインズは、大手の中で最も財務的にしっかりと経営されている航空会社として定評があります。
図4:デルタ・エアラインズの1株当たり業績 (年次報告書)
デルタ・エアラインズのCFPS(1株当たり営業キャッシュフロー)を、SPS(1株当たり売上高)で割り算して求められる2018年の営業キャッシュフロー・マージンは、15.8%です。これは航空会社としてはたいへん立派な数字です。またEPS(1株当たり利益)に比べてDPS(1株当たり配当)が大変小さいので増配余地が大きいと思います。
アメリカン・エアラインズ(AAL)
アメリカン・エアラインズ(ティッカーシンボル:AAL)はキャパシティーでは最大級です。しかし歴史的に運航の効率は悪く、経営危機に瀕したこともあります。現在は事業再編を経て立ち直りつつあります。同社の課題はロードファクターを引き上げることでしょう。
図5:アメリカン・エアラインズの1株当たり業績(年次報告書)
アメリカン・エアラインズの2018年の営業キャッシュフロー・マージンは8%に過ぎず、不十分です。
ユナイテッド・コンチネンタル(UAL)
ユナイテッド・コンチネンタル(ティッカーシンボル:UAL)も経営が安定しない時期がありました。コンチネンタルとの合併は同社によって良い合併だったと思います。その影響もあり、昔よりは見違えるほど良い会社になりました。
図6:ユナイテッド・コンチネンタルの1株当たり業績(年次報告書)
2018年の営業キャッシュフロー・マージンは15%であり、立派な数字です。
サウスウエスト・エアラインズ(LUV)
サウスウエスト・エアラインズは歴史的に最も経営効率が良く、財務的にもしっかりした航空会社でした。
図7:サウスウエスト・エアラインズの1株当たり利益(年次報告書)
同社の2018年の営業キャッシュフロー・マージンは22.3%と航空会社としては驚異的に良い数字です。しかし上に述べたようにロードファクターはやや落ち気味であり、テコ入れする必要があります。
アラスカ・エアー(ALK)
アラスカ・エアーは近年急成長してきた「時代の寵児」でしたが、バージン・アメリカ航空を買収して以降、すこしリズムを崩しています。
図8:アラスカエアーの1株当たり利益(年次報告書)
2018年の営業キャッシュフロー・マージンは14%であり、2017年と比較しても低い数字でした。いずれ買収で増えたキャパシティーを消化し、立ち直ってくると思われますが目下の業績には大いに不満が残ります。
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