過去3カ月の推移と今回の予想値

※矢印は、前月からの変化

1月米雇用統計のレビュー:非農業部門雇用者が大幅増加

 1月の雇用統計は、NFP(非農業部門雇用者数)が30.4万人と予想を大きく上回りました。前回12月の雇用者数は下方修正されたのですが、それでも直近2カ月で雇用者は平均26.3万人増加しているわけで、米国の雇用市場が相変わらず順調だと言えます。

 一方、失業率は4.0%に上昇(悪化)。また平均労働賃金は前月比+0.1%(予想+0.3%)、前年比+3.2%(前回12月は+3.3%)にそれぞれ低下しました。

 

2月雇用統計の予想

 では2月の雇用統計はどうでしょうか? 2月はNFPが+18.5万人の予想。やや少なめの印象を受けますが、1月も事前予想の16.0万人に対して結果は30.4万人の大幅増でした。予想が低いぶんだけアップサイド・サプライズが大きいともいえます。ただし前回は米政府機関の一部閉鎖が理由で集計が間に合わなかったようなので、修正値のブレにも注意が必要です。失業率は4.0%から3.9%に低下の予想。

 貿易戦争という不安要因はあるものの、雇用が減っているといった兆候は今のところ見えません。実は米国ではその逆が心配されています。

労働者不足が深刻に

 今、米国各地では労働者不足が深刻化しているとの報告が次々と上がっています。

 リッチモンド地区連銀によると、募集条件の必要経験年数を短縮したり、技能水準を引き下げたりする企業が増えているそうです。またロサンゼルスやボストンで刑務所の出所予定者を見習いとして採用したり、アトランタでは前歴のある人の採用を拡大したりする会社もあります。あのアマゾンでさえ「履歴書、面接不要」の求人広告を出すほど、どこも人手を確保しようと必死の状況です。

 では賃金はどうかというと、平均労働賃金の予想は前月比+0.3%、前年+3.3%と堅調ですが、深刻な人手不足のわりには目立つほどの勢いはありません。ただこれについては、BLS(米労働省労働統計局。雇用統計を発表する機関)の計算方法では、平均労働賃金が実際より低めに出るとの分析もあります。別の計算では5%上昇という結果も出ているそうです。

 

FRBは意外に早く利上げ再開?

 もしそうならば、なぜ米国で物価が上昇しないのか?という疑問が湧きます。それに対してパウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長の答えは、今は「辛抱強く待つ」時期。(条件はそろっているのだから)「近くインフレ率は目標の2%に到達するだろう」ということです。

 人手不足の現状を見ると、インフレ率の目標達成は意外に早いかもしれません。FRBは今年利上げしないと、マーケットは考えていますが、これを早くも修正する必要が出てくるかもしれません。ダドリー前NY連銀総裁は、FRBは今年後半に利上げを再開するだろうとの見解を示しています。