今回がこのコラム8回シリーズの最終回となります。今回はボリンジャーバンドと組み合わせるのに相性が良い指標としてADXとの組み合わせを紹介します。

ADXはDMI(ディレクショナル・ムーブメント・インデックス)で表示できる指標のひとつですが、+DI、-DIは使っていてもADXはあまり気にしないという方も多いかと思います。しかし、ADXというテクニカル指標はトレンドの有無であるとか、過熱感を測れる数少ない指標であり、DMIの一部としてだけ使うには非常にもったいない指標です。今回はこのADXの基本的な使い方としてトレンドの有無の判断方法を紹介し、このADXをボリンジャーバンドと組み合わせ、トレンドが無い場合の逆張り指標としての利用法について考えてみることとします。

まずDMIについて簡単に説明しておきましょう。DMIは、多くのテクニカル指標を開発したワイルダー氏による指標のひとつで、前日のレンジと当日のレンジを比較し、上下どちらにずれているのかをベースに、通常14期間の動きを+DI、-DIとして強弱の指標として表示します。さらにDIの差の部分を平均化したものがADXで、ADXはトレンドの方向性に関係なくトレンドが強まると上昇し、トレンドが弱まると下降する指標です。つまり、「ADXが上昇時はトレンドがあり、ADXが下降時はもみあい」という判断が成り立ちます。

こうしたことから、オシレータ系のテクニカル指標を逆張りの判断に用いる際に、ADX下降時というフィルターを補助的に利用することは理に適っています。ボリンジャーバンド自体はトレンドがある際に上下のバンドを買われ過ぎ、売られ過ぎと判断することは危険ですが、ADXを併用することでもみあい、あるいはトレンドが弱まっている時のボリンジャーバンドとローソク足の位置関係は興味深いものがあります。

次の豪ドル円日足チャートをご覧ください。メインチャートにはボリンジャーバンド(±1.5σ)、サブチャートにADX(14期間)を表示しています(+DIと-DIは非表示にしてあります)。

まず、3月中旬以降の豪ドル円上昇の部分をご覧ください。この流れではローソク足がボリンジャーバンドに到達後も次々とバンド上限を超える動きとなっていますが、この時のADXを見るとADXが上昇するトレンド発生のパターンになっています。

いっぽう、4月下旬から5月上旬にかけての豪ドル円の緩やかな下げの局面ご覧ください。ここでもローソク足はボリンジャーバンドの下限を下抜ける動きとなっていますが、この時のADXはADXが下降するもみあいを示しています。

このチャートでは、ローソク足がよりボリンジャーバンドに到達するようにあえて小さめの±1.5という数字を入れていますが、使う通貨ペアと時間枠によって、この数字は1〜2の間で調整すると良いでしょう。また、ADXを見る場合も1期間だけ上下の向きを変えるような動きをすることもありますが、あまり細かい動きを気にせず、ADXのトレンド(上昇・下降)の大きな動きを掴むようにすると使いやすくなると思います。

今回は、ADXとボリンジャーバンドを組み合わせてみましたが、他のオシレータ系指標と組み合わせても有効ですし、またADX上昇時にトレンド系指標と組み合わせることも有効です。試してみるべきテクニカル指標のひとつと言えるでしょう。

ボリンジャーバンドのコラムは今回でもって終わりますが、ボリンジャーバンドと派生指標をうまくつかって、皆さんのトレードに活かしてください。ありがとうございました。

第8回のポイント

  • ADXは上昇下降でトレンドの有無を判断するのに便利な指標である。
  • ADXが下降するトレンドが無い時には逆張りを考えることが有効。