日経平均は「二本抜け」で上昇、75日移動平均線が上値抑える

 連休明けで4営業日だった先週の国内株市場ですが、週末2月15日(金)の日経平均は2万900円で取引を終え、週の半ばには、終値ベースで昨年12月18日以来となる2万1,000円台乗せの場面も見られました。前週末が大幅下落を見せていて嫌なムードだっただけに、ガラリと相場の雰囲気が変わったような印象です。

 そのため、今回のレポートはおわびから始めなければなりません。前回のレポートではHLバンドを紹介し、「Lバンドが切り上がるため、下値の余地は限られる一方、上値も重たい」という見通しを立てていましたが、終わってみれば節目の2万1,000円台水準まで戻り幅を広げ、想定よりも上方向への動きが強く、見通しを外してしまいました。

 早速、反省の意味も込めて足元の相場状況から確認します。

■(図1)日経平均(日足)の動き(2019年2月15日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 

 先週、日経平均が2万1,000円台乗せを達成するカギになったのは、週初12日(火)のローソク足です。見た目通りの大きな陽線ですが、前週末に空けた「窓」を埋めただけでなく、5日と25日の二本の移動平均線を跨いで上昇しています。

 とりわけ、このローソク足と移動平均線との関係については「二本抜け」と呼ばれ、強い買いサインとして知られている形ですので、これが株価上昇に勢いをつけた可能性があります。実際に、翌13日(水)の取引で日経平均は窓空けで上昇して2万1,000円台に乗せています。

 ただし、そこからは75日移動平均線が抵抗となる格好で上値が重たくなりました。14日(木)は迷いを示すとされる十字足、そして週末15日(金)も2万1,000円台を割り込む陰線が出現しています。移動平均線(5日・25日)の二本抜けが株価上昇ときっかけとなったわけですが、同じく別の移動平均線(75日)が上値を抑える目安になってしまったと言えます。

 さらに、窓空けに注目してみても、上昇に弾みをつけたのが前週末に空けた窓埋めになりますが、週末は一段高となった窓を埋めに行くことで2万1,000円台を割り込んでいます。

 したがって、週を通じて株価水準自体は切り上がってはいるものの、強めの買いサインが出現した割には上昇の勢いがあっさり止まってしまった一面ものぞかせているため、これからの相場に対して強気のままで良いのかどうか躊躇(ちゅうちょ)させる格好になっています。まずは、抵抗となっている75日移動平均線を上抜けるかどうかが今週の焦点になりそうです。

線形トレンドとMACDにも上方向への意識が感じられる

 また、別のテクニカル指標でトレンド面から足元の状況を見ていきたいと思います(下の図2)。

■(図2)日経平均(日足)の線形トレンドとMACD(2019年2月15日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 

 上の図2は、日経平均の直近高値である昨年10月2日を起点とした線形トレンドとMACDの推移です。

 線形トレンドの傾きはまだ下落基調を描いていますが、日経平均は+2σ(シグマ)の線を上抜けしそうなところまで値を戻しています。下段のMACDも横ばいの動きながらも0円ライン上をキープしており、上方向への意識は根強いことが感じ取れます。こうして見ると、+2σ超えや2万1,000円台乗せの維持、75日移動平均線の上抜けはそんなに難しくないように見えます。

 とはいえ、+2σの線までの株価上昇は「下落トレンドの範囲内での戻り」ですが、ここから先は「トレンド転換に向けた戻り」となり、同じ株価の戻りでもかなり意味合いが異なってきます。いわば「戻り基調の第二段階」に入るため、株価材料についても、今後は買い戻しから買い上がるものが求められることになると思われます。

 

NYダウ、株価とRSIの「逆行現象」

 そもそも、先週に見せた株価上昇は、米国で暫定予算案が合意される見通しとなり、米政府機関の再閉鎖が回避できるとの観測が広がったことと、先週11日から行われている米中の次官級および閣僚級協議への期待が高まったことを背景に米株市場が上昇したのがきっかけです。政治的な要素が強いだけに、ムードの再悪化には警戒しておいた方が良さそうです。

 では、その米国株市場の状況についても見ていきます。下の図3は米NYダウの日足チャートとRSI(相対力指数)の動きです。

■(図3)米NYダウ(日足)チャートとRSI(2019年2月15日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 

 NYダウは75日移動平均線を上抜けてからも戻り基調を描いているほか、週間ベースでも2月15日時点で8週連続の上昇となっています。順調な相場地合いが続いていますが、下段のRSIに注目すると、こちらは切り下がっていて、いわゆる「逆行現象」となっています。

 株価が戻り高値を切り上げている中での逆行現象はトレンド転換型とされていますので、そろそろ上昇が一服してもおかしくはなく、米国株の相場地合いの悪化には少し注意が必要です。ちなみに、同じ米国のS&P500指数も同様に逆行現象が現れています。

 先週は米国株の上昇が日本株のムードを好転させましたが、今度は逆のパターンもあり得るわけです。そう考えると、今週は上げ下げを繰り返すもみ合いシナリオも考えられます。仮にそうなったとしても、株価水準を維持できれば図1の5日と25日移動平均線が75日移動平均線に近づくことになり、チャートの形は徐々に改善へと向かって行きます。そのため、あまり欲張らないことが肝要な局面なのかもしれません。