2月11日~15日 原油マーケットレビュー

 前週のNY原油相場は反発。米中通商協議の進展期待や主要産油国による減産履行を好感した買いが優勢となった。ただし、米国の原油需給の緩みやドル高の流れから上値は抑えられている。

 トランプ米大統領は12日、合意が近いとみなされれば交渉期限の延長は可能との見解を示した。一部では期限である3月1日から60日間の延長を検討しているとの声も聞かれた。ただ、同大統領は期限延長を回避したい意向で、習近平国家主席との会談についても言及した。また、翌日には通商協議について非常にうまく進んでいると述べたため、市場では妥結への期待が高まった。協議進展、そして世界経済の見通しが明るくなるとの見方が広がり、同時にエネルギー需要の減退観測が和らぎ、原油相場は買いが優勢となった。

 しかし、一部では協議はほとんど進展していないと悲観的な見方もある。米中首脳会談の日程は決まっていないが、それまでに片付けなければならない問題が山積みの状態である。両国とも期限延長は避けたいところだが、両国の距離は縮まっていないのが実状。そのため、楽観ムードが高まる場面もあったが、原油買いの勢いは限られた。また、楽観からドルが売られる場面もあったが続かず、ユーロ/ドルは下落基調にある。欧米の金利差拡大や直近の欧州経済指標の悪化からのユーロ売り/ドル買いもあるが、協議進展に懐疑的とみる向きの安全資産としてのドル買い需要が根強くある模様。ドル高も原油相場上昇の重石となった。

 各調査機関などから主要産油国の減産履行が示されたことも支援材料となった。石油輸出国機構(OPEC)、米エネルギー情報局(EIA)、国際エネルギー機関(IEA)はこの週、それぞれ月報を発表した。ともに1月のOPEC産油量は前月から減少したことが示されている。特にサウジアラビアが積極的に減産に動いていることが確認され、かつ同国は3月にさらに日量約50万バレル減産する計画を明らかにしている。また、制裁に伴うベネズエラの供給減への懸念もあり、世界の原油需給は引き締まるとの見方が広がり、原油買いを促した。

 ただ、不安要因も同時に示された。ロシアの協調減産目標に対する達成率が低く、また先行きの米国の供給増加が示された。OPEC非加盟国の供給増加分で、ベネズエラの減産分を十分補完できるという。ここにきてリグ稼働数が増加傾向にあり、米国のシェール活動はより活発になっているため、生産増加は避けられないだろう。足元の需給においても、米国の原油在庫は4週連続で増加、高い水準にある。大型の製油所が定修入りしたこともあり、処理量の減少から在庫は一段と積み上がりやすい状況にある。そのため米国需給の弱さが原油相場の上昇を抑えた。

 上がれば抑えられ、下がれば下支えされるといった揉み合いが続いている。足元、ブレントとWTIのディファレンシャル(スプレッド)が拡大しており、値ごろ感からWTIは買われやすい状況にはある。直近高値55.75ドルを上抜いたことで、踏み(売り方の損失確定の買戻し)を誘って買い気付く可能性も残っている。しかし、上げた場合でも、米国産の供給増が重くのしかかるため、内部要因、テクニカル要因からの買いは一時的にとどまる公算が大きい。大きな上昇には、米中の合意が条件といっても過言ではないだろう。

 

今週の予想

  • WTI    やや強め 53.50-57.50ドル
  • BRENT    やや強め 64.50-68.50ドル