優待といえば、名人・桐谷さん。桐谷さんの投資術について取材をしてきました。

桐谷さんに聞く!優待銘柄の買い時

――株主優待の買い時はいつでしょうか。2018年の後半から株式相場が大きく動いています。そんなとき桐谷さんは、どうしているのですか?

几帳面な字で銘柄名が書き込まれた売買帳

 どんどん買っていますよ。日経平均株価は2018年暮れから株式相場が値下がり傾向にあるので、売るよりも買う方が多くなっています。60銘柄ほど新規に買って、保有銘柄はおよそ900銘柄に増えています。

――相場が下がっているときに買うと、含み損が増えるので怖い気がするのですが。

 株価が下がれば含み損も増えてしまいますが、気にしていません。私が目安を4%以上としている「配当+優待」利回りが、株価が下がるに従って5%、6%と高くなっていきます。するとこれから投資する人には魅力的に映り、買いたくなるでしょう? そうなればいずれ反転する(株価が底を打って上昇に転じる)はずです。

「配当+優待利回り」とは、年間の配当金額に優待品を金額換算したものを加え、投資金額(株価×優待がもらえる株数)で割って算出した数字です。私はこの数字を4%以上としているわけです。

――3月の優待銘柄の場合、今年は権利付き最終日の3月26日までに株を買わなければなりませんが、そこを意識して買うことはありますか。

 私は「安ければ買う」ことにしているので、特に意識することはありません。みなさんが3月の優待銘柄を探すときは、証券会社などにある「優待検索機能」を使うのがよいと思います。スクリーニング機能で配当利回り(年間の配当金額÷投資金額)の高い順に銘柄を並べて、上位銘柄の中で、自分が欲しい優待品を出している銘柄を探しましょう。

 私はさらに「配当+優待」利回り4%以上の銘柄に絞って選びますが、皆さんの基準は皆さん自身で決めてくださいね。

優待銘柄や優待品についてとめどなく話す桐谷さん。

桐谷さんの購入銘柄

――いま桐谷さんが買いたい銘柄、買った銘柄はありますか?

 トリドールホールディングス(3397)は昨年11月に株主優待制度を拡充して年1回から年2回になりました。その後、一瞬値下がりしたのですが、指値の値段に届かず買えませんでした。引き続き値下がりを待っています。

 KDDI(9433)はいいですね。配当が高く、3,000円相当のカタログギフトがもらえます。私はギフトの中から冷凍の「広島お好み焼き」を選びました。カッパクリエイト(7421)はコロワイドグループで使えるポイントが3,000ポイント(年間6,000ポイント、1ポイント=1円)もらえます。使い勝手のいい優待ですね。

 河西工業(7256)はNISA(ニーサ:少額投資非課税制度)枠を使い860円の指値で買いました。1,000円相当のクオカードがもらえます。ヤマダ電機(9831)は1,000円ごとに500円使える優待割引券が年間3,000円分もらえます。ここは電気製品だけじゃなくて日用品も売っているので、ボックスティッシュを買っています。

――なんだか楽しくなってきました。桐谷さんのおすすめ銘柄は何ですか?

記憶している優待も多い桐谷さん。

 日本商業開発(3252)オリックス(8591)です。日本商業開発は飲食店で使えるジェフグルメカードが300株(300株以上が優待の対象)で6枚(年間12枚、1枚500円相当)もらえます。ジェフグルメカードは使い勝手がいいんですよ。1枚1,000円相当の株主優待券が使える店で食事をして代金が3,600円だったとしますね。

 普通なら優待券3枚と現金600円か、4枚使っておつりなしですが、ジェフグルメカードなら現金の分を支払えて、おつりももらえますよ。オリックスは「ふるさと優待」という全国各地のカタログギフトがもらえます。3年以上保有するとギフト内容がランクアップするのもうれしいですね。

他にもが注目している銘柄は下記です。

桐谷さん厳選!2月の優待銘柄

コード 銘柄名 株価(2月14日終値) 優待品の一例(3月)
7818 トランザクション 691円 100株以上で3,000円相当の自社製品
3548 バロックジャパンリミテッド 898円 100株以上でクーポン(2,000円相当)
7811 中本パックス 1,645円 100株以上で1,000円相当のクオカード
8008 ヨンドシーHLDG 2,142円 100株以上で2,000円相当の優待券または自社グループ商品
9945 プレナス 1,808円 100株以上で500円×5枚の買物優待券
5018 MORESCO 1,597円 100株以上で2,000円相当の兵庫県物産品
9778 3,920円 100株以上で5,000円相当の優待品
2927 AFC―HDアムスライフ 720円 100株以上で優待割引券(30%割引) ×3枚
500株以上で10,000円相当の自社グループ引換券
2668 タビオ 1,152円 100株以上で株主優待券500円×3枚
3050 DCM HLDG 1,108円 100株以上で自社ブランド商品(日用品)
7545 西松屋チェーン 885円 100株以上で1,000円相当の買物カードなど
8251 パルコ 1,087円 100株以上で株主優待クレジットカードと優待券など

桐谷さん厳選!3月の優待銘柄

コード 銘柄名 株価(2月14日終値) 優待品の一例(3月)
8613 丸三証券 795円 100株以上で1,000円相当ののり詰合せ
8714 池田泉州HLDG 299円 2,000株以上で2,000円相当のカタログまたは株主優待定期預金金利アップクーポン※200株以上もあり
8119 三栄コーポレーション 3,220円 100株以上で2,000ポイント
8473 SBI HLDG 2,214円 100株以上で1万3,018円相当の自社子会社商品(サプリメント)引換券1枚
8897 タカラレーベン 353円 100株以上で1kgのおこめ券
7593 VT HLDG 411円 100株以上で優待券1冊
9769 学究社 1,334円 100株以上で1,000円相当のクオカード
6210 東洋機械金属 597円 500株以上で1,000円相当のオリジナルカタログギフト
8601 大和証券グループ本社 544円 1,000株以上で2,000円相当の名産品またはダイワのポイントまたは会社四季報
5659 日本精線 3,310円 100株以上で2,000円相当のクオカード

 判断基準は、高い物は買わず、チャートを見て、利回りのよいものを見ています。

最近の優待事情

――最近人気の優待品は何ですか。

 クオカードが人気ですね。消費者向けの製品をつくるメーカーならPRを兼ねて自社製品の詰め合わせを贈ればいいのですが、そうでない会社はクオカードを選ぶことが多くなっています。理由は投資家に喜ばれるから。コンビニ、ドラッグストア、ファミレス、書店など使える店が多いので、いろいろな商品に替えることができます。現金に近い使い方ができて、現金よりもかさばらないところがいいのです。

――桐谷さんは売買に必ず指値を使うそうですね。指値の基準はどう決めているのですか

 年初来安値にこだわっているわけではありませんが、かなり辛く(買う銘柄はかなり安い水準、売る銘柄はかなり高い水準)設定しています。
※指値…希望する売買価格(買いの場合は上限価格、売りの場合は下限価格)を指定して発注する方法。

 

――それで約定するのですか。

 英国がEU(欧州連合)離脱を決めたときは20何銘柄が一気に約定しました。トランプさんが大統領に選ばれたときもそう。辛く入れていても、何かとんでもないことが起こると約定していきます。平穏な相場の時は、指値の水準に届かなくても、安い高いと判断できる水準なら注文を出します。私は以前、デイトレーダーのようなハラハラドキドキの売買をしていて1億円くらいの損失を出したので、今は優待銘柄を買ってのんびり優待生活を楽しんでいます。
※約定…株式取引などの売買が成立すること

 私にも経験があるのですが、デイトレードでもうけたりすると自分は上手い、天才ではないかと思いがちです。でもそれは錯覚で、バブル相場やアベノミクス相場に乗れただけ。いずれ相場から振り落とされると覚悟しておくべきです。

――優待銘柄も分散投資をすべきですか。

 優待銘柄投資も株式投資のうちですから、分散投資はしたほうがいいですね。一つの業種に偏ってしまうと、業種全体に波及するような悪材料が出たときに、全銘柄が値下がりしてしまいます。業種を分散しておけば値下がり分を他の業種の値上がり分でカバーできるかもしれません。

 でも私はこうも考えています。魅力のある優待品を用意している企業の場合、株価が値下がりして配当優待利回りが上がると、必ず買う人が出てくる。だから値下がりは一時的なもので終わる。そのためにも優待内容をきちんと調べる必要がありますね。

――銘柄を買うときは、株式評論家の意見を参考にしていますか。

 しませんね。日経平均が3万円になると豪語していた評論家がいましたが、まだ近い水準にも達していない。もし本当に3万円になるような相場が来るなら、優待株を買うより値上がりする株を買った方がいいし、確実に値下がりすることが分かっているのなら優待株を売った方がいいです。

 私は評論家の予想は外れるものと思っているし、明日の株式相場は誰にも分からないので、私は優待株を買って、優待人生を楽しんでいるのです