四分の一が終了した第4四半期決算発表シーズン
2019年1月現在、米国は2018年第4四半期決算の発表シーズンを迎えています。これまでに米国を代表する株価指数であるS&P500指数に採用されている大型株のうち、約4分の1が決算発表を終えました。
今回の戦績なのですが、「EPS(一株当たり利益)はボチボチ、売上高は悪い」と要約することができるでしょう。 EPSの事前予想を上回った企業は71%でした。これは過去5年の平均と一致しています。売上高で事前予想を上回った企業は59%でした。これは過去5年の平均より少し下回りました。
特に過去1年で見れば70%を超える企業が、売上高で事前予想を上回っていたため、ここへきて急速に各社の売上高のパフォーマンスが悪化していることを感じさせます。
懸念点
経営者が決算カンファレンスコール(決算報告電話会議)で指摘する懸念点としては、米中貿易戦争とそれに絡む中国経済のスローダウンを指摘するケースが多いと思われます。それに加えて暫定予算交渉の難航から12月22日以降、米国連邦政府機関一部閉鎖が起きていることを懸念する声も聞かれました。
米国の、連邦政府機関一部閉鎖に関しては1月25日にトランプ大統領が暫定予算に賛成の態度を表明し、議会が速やかにそれを可決しました。これにより2月15日まで連邦政府機関が通常業務を行えるメドが立ちました。しかし2月15日以降は再び予算交渉をやり直さなければなりません。
どんどん下がっている今年のコンセンサス予想
これまでに発表された決算がいまひとつ冴えないことに加え、連邦政府機関一部閉鎖問題などの政治リスクから、アナリストの2019年S&P500指数EPSコンセンサスはこのところ下がり気味です。
去年の1月から2月にかけては上のコンセンサス予想が、するすると上昇していたのと好対照に、現在はコンセンサスがするすると下落しているのです。この違いには注意を払う必要があると思いますし、これは当然、株式市場にとっては好ましくない展開です。
セクター概観
銀行セクター
これまでに決算発表を済ませた企業を見ると、銀行セクターは、個人や中小企業を相手にした商業銀行部門が好調だったものの、証券業務を行う投資銀行部門は、債券トレーディングが低調で各社苦戦しました。とりわけ買いたくなるような銘柄はありませんでした。
半導体セクター
半導体セクターではテキサス・インスツルメンツ、インテル、ザイリンクスなどが決算を済ませていますが、ザイリンクスだけが良い内容でした。
▼テキサス・インスツルメンツ
第4四半期決算はEPSが予想1.24ドルに対し1.27ドル、売上高が予想37.5億ドルに対し37.2億ドル、売上高成長率は前年同期比-0.9%でした。
第3四半期から見られ始めた需要の減退は第4四半期も続き、特にスマホ向け半導体が弱い結果に。卸業者は米中貿易戦争で在庫を取ることに対し用心深くなっており、自動車向け半導体、工業向け半導体も需要が減退しました。
▼インテル
第4四半期決算はEPSが予想1.22ドルに対し1.28ドル、売上高が予想190.2億ドルに対し186.6億ドル、売上高成長率は前年同期比+9.4%でした。
CCG(PCセントリック・ビジネス)売上高は+10%の98億ドル、DCG(データ・セントリック・ビジネス)売上高は+9%、IoTG(インターネット・オブ・シングス・グループ)売上高は-7%でした。
第1四半期のEPSは、予想1.01ドルに対し新ガイダンスでは87セントが提示されました。売上高は、予想173.8億ドルに対し新ガイダンス160億ドルが提示されました。これらはとても弱い数字です。
▼ザイリンクス
インテルに対して、ザイリンクスは素晴らしい決算でした。同社はFPGA(フィールド・プログラマブル・ゲートアレイ)と呼ばれる半導体を作っています。同社の第3四半期(12月期)決算は、EPSが予想86セントに対し92セント、売上高が予想7.7億ドルに対し8億ドル、売上高成長率は前年比+33.6%でした。
データセンターならびにTME(テスト計測&エミュレーション)ビジネスが前年比+14%成長しました。 加えてコミュニケーション部門が+41%成長しました。これは5G向け需要によります。
インテルのPSG部門(=旧アルテラ・コーポレーション)からマーケットシェアを奪っていると思われます。 第4四半期に関しては予想83セントに対し新ガイダンス92~99セントが、売上高予想7.76億ドルに対し新ガイダンス8.15億~8.35億ドルが提示されました。
消費安定セクター
▼プロクター&ギャンブル
今期も前期に引き続き良い決算を出し、強い印象を残しました。第2四半期(12月期)決算はEPSが予想1.21ドルに対し1.25ドル、ドル売上高が予想171.6億ドルに対し174.4 億ドル、売上高成長率は前年同期比+0.2%でした。 オルガニックな売上高成長率は+4.0%でした。うちボリュームが+2%、価格が1%、ミックスの改善が+1%でした。
ミックスの改善に関しては前期に続きプレミアムのスキンケア製品「SK-Ⅱ」が力強く成長したことが寄与しました。
▼ジョンソン&ジョンソン
一方、ジョンソン&ジョンソンは第4四半期決算こそEPSが予想1.95ドルに対し1.97ドル、売上高が予想202.7億ドルに対し203.9億ドル、売上高成長率は前年同期比+1.0%と何とか予想をクリアしたものの、ベビー・パウダーの安全性に対し疑問が投げかけられ、決算カンファレンスコールで経営陣が苦しい説明を強いられる場面がありました。
ソフトウエアセクター
▼アトラシアン
ソフトウエアセクターの中では、アトラシアンの決算の素晴らしさが目を引きました。第2四半期(12月期)決算はEPSが予想21セントに対し25セント、売上高が予想2.88億ドルに対し2.99億ドル、売上高成長率は前年同期比+40.6%でした。
営業キャッシュフローは1.3億ドルでした。設備投資額は780万ドルでした。フリー・キャッシュフローは前年同期比+81%の1.226億ドルでした。フリー・キャッシュフロー・マージンは41%でした。 課金顧客数は13.9万件でした。期中6,551件の顧客を追加しました。
なおこの数字にはオプスジーニーの1,396顧客が含まれています。 第3四半期EPSは予想18セントに対し新ガイダンス18セントが、売上高は予想3億ドルに対し新ガイダンス3.03億~3.05億ドルが提示されました。
2019年度のEPSは予想78セントに対し新ガイダンス81~82セントが、売上高は予想11.8億ドルに対し新ガイダンス11.95億~11.99億ドルが提示されました。
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