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『ベージュブック』は、米国に12ある地区連邦準備銀行(地区連銀)が、管轄地域の経済状況をまとめた「地区連銀経済報告」のことで、表紙のベージュ色が名前の由来です。『ベージュブック』は、年に8回開催される連邦公開市場委員会(FOMC)の2週間前の水曜日に公表され、金融政策の判断材料として用いられます。今回は景気拡大が続くものの、前回12月からはペースダウンしている様子が窺われる内容でした。

 

【ポイント1】経済活動は「緩やかなペース」で拡大

徐々に不透明感が漂う内容

 1月16日に公表された最新の『ベージュブック』は、「全米12の地区連銀からの報告によれば、1月上旬にかけ経済活動は大半の地区で拡大」と総括しました。昨年12月5日に公表された前回報告と、ほぼ同じ評価です。地区別では、8地区が「緩やか」、ないし「緩慢」なペースで拡大、僅かな成長にとどまったのが2地区、ほぼ横這い、および鈍化がそれぞれ1地区でした。

 将来の見通しは総じて前向きでしたが、金融市場における大幅な価格の変動、短期金利の上昇、エネルギー価格の下落、激化する貿易摩擦、高まる政治的緊張等を背景に、不透明感も漂ってきたようです。

 

【ポイント2】個人消費は緩やかに拡大、クリスマス商戦も順調だったもよう

労働需給は逼迫、企業の投入コストは上昇だが、価格への転嫁はまちまち

 個人消費は、緩やかに増加しました。幾つかの地区からは、クリスマス商戦の客足は前年を上回ったとの報告がありました。自動車販売は、横這いだったようです。

 製造業の活動は大半の地区で拡大しましたが、ペースは鈍化しました。特に自動車、エネルギー・セクターの軟化が顕著でした。

 商銀の融資量は「緩やか」に増加、非金融サービスは大部分の地区が「緩慢」ないし「緩やか」な成長と評価しましたが、複数の地区から「成長鈍化」との報告がありました。

 住宅販売は、ほぼ横這いでした。幾つかの地区は、その理由として、住宅価格の上昇と在庫不足を指摘しました。

 労働市場については、全ての地区から需給が逼迫し、人員の採用が困難になっているとの報告がありました。物価は、大半の地区で緩やかに上昇しました。企業の投入コストは上昇したものの、販売価格への転嫁は「まちまち」の状況と述べています。

 

【今後の展開】次回FOMCは現状維持の見通し

 今回の『ベージュブック』からは、賃金、物価が大幅に上昇している様子は窺えません。1月29日、30日に開催される予定の次回FOMCでは、現状維持の決定が下される見通しです。

 金融市場の安定性の点では、米連邦準備制度理事会(FRB)が、バランスシートの縮小を一旦停止する等のハト派的なコメントを出すか否かに注目が集まります。