下がったときのことを考え始めるには、今が好機

 2018年末以降、さえない相場が続いています。日経平均株価が1,000円下がるクリスマスプレゼントが届いたかと思えば、大発会も400円下げて始まり、厳しいお年玉となりました。その後反発はするも、上昇幅は毎日小さめで、ちょっと前に漂っていた「バブル後最高値更新!」という勢いは感じられません。

 私は普通の会社員が行う個人投資において、相場読みはあまり必要ではないと考えています。そのため将来のマーケット予測については興味がありませんが、皆さんは悲観的な株価見通しの記事やレポートが日々増えてきたと感じているのではないでしょうか。

 これから先また反発して、日経平均が2万2,000円を目指すかもしれません。あるいはガックリと2万円を割り込んでしばらく戻ってこない時期がやってくるかもしれません。

 こういったあいまいな時期は「下がったときどうするか」を考えるよいチャンスだと思います。ここしばらくの間はおおむね右肩上がりが続いていたので、あまり下がったときのことを考える機会がなかったからです。

 例えば「日経平均が1万8,000円になったとき」「日経平均が1万5,000円を割ったとき」、あなたは取引をどうするか方針は決まっているでしょうか。

 なんとなく取引を始めたばかりの投資初心者ほど、あらかじめ頭の中でそうしたシミュレーションを考えておくことが、「そのとき」がやってきたときに慌てずにすみますし、投資を続けるためにも役立ちます。今回は特に「長期投資」を考えるスタンスを中心に話してみたいと思います。

長期投資というのはどれくらい考えるべきか。それは5年で足りるか

 インデックスファンドの積立投資を行う人と、短期的な売買を行ってきた人とのあいだではちょっとスタンスが異なると思いますので、ここではつみたてNISA(ニーサ:小額投資非課税制度)やiDeCo(イデコ:個人型確定拠出年金)をまだ始めたばかりの投資家、またあまり投資経験のない投資家を想定してみたいと思います。

「長期投資が重要だ」ということはiDeCoの入門書やつみたてNISAの案内で目にしていると思います。また、企業型DC(確定拠出年金)を実施している会社でも社内研修として投資教育が行われますが「長期・分散投資の重要性」は常に聞かされているはずです。

 一方で、「長期」の部分を具体的にはどれくらいのスパン(期間)で考えていたでしょうか。

 例えば、あなたが5年を考えていたとします。一般NISAは5年が投資のひとつの区切りですから、それほどおかしいイメージではありません。またデイトレーダーなどを横目に、長期投資を想定するには十分すぎる「長期」かもしれません。

 しかし5年というのは下がったマーケットが回復するのに必ずしも十分ではない、ということは理解しておくべきだと思います。

 例として挙げると、リーマン・ショック前後を振り返ってみましょう。2007年6月、日経平均は1万8,000円台を試す展開となっていました。これがサブプライム・ローン問題やリーマン・ショック(2018年8月)を受け、2008年10月には7,000円を割り込む展開まで動きます。

 リーマン・ショックが動き出す前の2008年8月末の日経平均が1万3,072円ですが、ここを回復したのが2013年4月です。日本は3.11(東日本大震災)という大災害もありましたが、回復に約5年を費やしたことになります。ちなみに1万8,000円台の復活には2015年2月までかかり、7年半というところでしょうか。

 5年というのはそれほど悪くないスパンですが、気持ちとしてはもうちょっと考えておくくらいがいいと思います。

10年以上、むしろ大きく下がっている時期に積立投資を続けてみよう

 個人投資家にとって「もうけた経験」「損した経験」を早めに、できれば少額でしておくことが重要ですが、もうひとつ経験値として欲しいのは「下がったけど持ち続けてプラスに戻った」という経験です。

 積立投資や長期投資は、理念としては正しくてもなかなか実行する勇気が持てないかもしれません。かくいう私もITバブル直前のピークで買った投資信託の値下がり時には、含み損が消えるまで持ち続けることができませんでした。

 それでも3~4年はがんばってみたのですが、元本に戻りきらないところで手放してしまいました。その後に基準価額が回復したことを知り、手放さなければ良かったと再確認しました。

 この経験は、リーマン・ショック時、値下がりをまったく気にせず積立投資を続ける原動力となりました。実際、私のiDeCo口座はリーマン・ショックやサブプライム・ローン問題の頃を乗り越えていますが、どんなに下がっていても投資信託の購入を継続しました。おかげさまで、年率換算利回りは今でも5%以上をキープしていますが、株価が下がっているときに積立投資を続けていればこその成功体験なのです。

 皆さんもぜひ、このあとの株価が下がろうとも、積立投資を継続し、「含み損を抱えたけれど、回復まで粘った」という経験を今回してみてほしいと思います。

下がっているときこそ「売らない」「積立を続ける」ことで投資と向き合ってみよう

 あなたがもし、経済はいつか回復すると信じられるのなら、5年ではなく10年スパン積立投資を信じて継続してみてください(経済の回復を信じられない人はそもそも投資するべきではないので、さっさと手じまいして証券口座は閉じてしまうことをお勧めします)。

 といっても、あなたが毎月一定額を、所定の日付で、iDeCo、つみたてNISA、積立投資信託などを設定しているのであれば、特に何もしなくても大丈夫です。何も変更せずにそのまま積立投資を続けてみてください。

「今は安全資産に逃げて、株価が下がり切って、回復が感じられるようになったら投資を再スタートしよう」と考えると、おそらく損切りした株価水準より高いところでリスタートすることになります。人は臆病だから判断は遅めになりますし、面倒な手間がかかることは先送りしてしまうものだからです。

 それなら何もしないほうがよかったことになります。また、回復までの数年間、安値で買い増すチャンスも逃したことになります。何もしないことは結果として「マイナスで売らない」ことと「投資を続ける」ことを、ただ続けていくことにつながります。

 結論は、しっかり考えた上で「何もせずそのまま」です。考えに考えて頭が整理され、続けることに自信を持つことができたら、ドッシリかまえておきましょう。

 きっと10年後あるいは20年後には笑って、過去の含み益を眺められる日がきますよ!