前回「米国の金融政策が世界各国の経済に多大な影響を与える」ことをお伝えしました(米国の金融政策)。今回は、米国の政策でどんな事態を引き起こされたのかを見ていきます。

米国の政策金利が株式市場を動かす

 初めに、米国の政策金利と株式市場の動きを見てみましょう。以下は、米国の政策金利と先進国株価指数の動きを表したグラフです。

グラフ1:米国政策金利と先進国株価指数の推移

 グラフの赤色の楕円で囲った期間が米国が政策金利を引き上げた期間です。階段状になっているのは、段階的に政策金利を引き上げる“利上げ”を行ったからです。

 米国が政策金利を引き上げるのは、米国の景気が良くなり過ぎて、世の中にお金が出回り過ぎた状態を改善することが目的です。金回りが良すぎると、不動産等の資産価格が上がり過ぎてバブルの状態になるため、政策金利を引き上げて調整をします。

 ただ、金回りが悪くなることは、株式市場にはマイナスです。しかも米国の政策金利の動きは、米国だけでなく世界各国の金利に影響しますので、世界中で金回りが悪くなり、世界各国の株式市場にダメージを与えます。グラフの青色の四角で囲った期間の株式市場が下落しているのは、米国の政策金利が引き上げられた影響が表れたものです。

 

米国の金融政策により経済危機が勃発

 グラフ1は、先進国の株式市場が米国の政策金利の動きからどのような影響を受けたかを見たものですが、次は実体経済についても見てみます。(グラフ2)

グラフ2:米国政策金利と経済危機の発生

 グラフ2は、米国の政策金利の動きと経済危機の発生を表したものです。米国がどんどん政策金利を引き上げていた結果、次々と経済危機が発生していることが分かります。

 それぞれの経済危機は、発生時期が異なるほか、発生原因は国内の要因による部分もあるため、すべて同じではありません。しかし、大元の原因として、米国の利上げにより世界中の金利が高くなり、その結果、世の中の金回りが悪くなっていたことがあります。いつでも危機が発生する状態になっていたところに、何かのきっかけで一気に燃え上がったわけです。

 メキシコ通貨危機(1994年~)、アジア通貨危機(1997年~)、ロシア危機(1998年~)は、米国以外での発生で、いわゆる経済基盤がぜい弱な新興国で起きた経済危機です。一方、ITバブル崩壊(2000年~)、サブプライムショック(2007年~)、リーマンショック(2008年~)は、米国内で発生し、その影響が世界中に広がった経済危機です。1990年代の危機は、新興国中心で先進国への影響は限定的でしたが、2000年代の危機は、発生源が世界経済の中心である米国であったため、世界中に凄まじい負の影響をもたらしました。

 このように、米国の金融政策の過去は、世界中で経済危機を作ってきた歴史でもあります。

2019年米国の金融政策を踏まえた投資戦略

 2018年年末から米国の中央銀行であるFRB(米連邦準備制度理事会)が政策金利の引き上げを止めるかもしれないとの見方が広がっています。米国経済が堅調で加熱し過ぎないようにするために、「金回りを悪くしようと金利を引き上げてきたものを、いったん止める」ということです。

 ただ筆者は長期で見れば、それは大きな問題ではないと考えています。なぜなら、米国景気は、景気サイクルから見れば、すでにほぼピークを付けたことは間違いなく、これから先の米国政策金利の上昇は大して上がらないか、あるいはもう上がらない可能性が高いと思われるからです。

 つまり言い換えるなら、米国は金回りを悪くする金融引き締めを行ってきましたが、もうその政策はそろそろ終わりと筆者は見ているわけです。

 

 ここで、もう一度グラフ2を見て下さい。米国の利上げが終わる局面の前後で、毎回大きな経済危機が発生しています。そして2000年代の経済危機は、米国発で世界的な規模のものばかりです。もしこのパターンが踏襲されるとすると、米国景気の減速ないし後退が見えたときがポイントで、そのあたりで、米国発の世界的な規模の危機が発生することになります。

 あくまでも過去パターンが繰り返される想定での話ですので、実際にその通りになるかは分かりません。ただ先行きが不透明なことは確かであり、投資をするのであれば、長期積立投資による時間をかけた投資をお勧めします。