1月13日の日曜日、「投信ブロガーが選ぶ!Fund of the Year 2018」の表彰式が開催されました。2007年に第1回大会が開催されて以降、年々盛り上がりを見せていて、昨今は一般の投資家からも注目されています。つみたてNISAも始まった2018年。果たして今回はどんなファンドがランク入りしたのでしょうか。イベントの様子と発表内容もふまえてお伝えします。

 

投信ブロガー投票の注目イベント

「投信ブロガーが選ぶ!Fund of the Year」は、トウシルの「人気投資ブロガー特集」にも登場したrennyさんが中心となっているイベントです。投資信託のアワードはいくつかありますが、自らの投資術や投資への考え方を発信している投信ブロガーだけが投票の権利が与えられているのはこのイベントだけです。

 金融機関にもメディアにも属していない個人投資家が「自分たちにとって本当にいいファンドとは?」という視点で選んでいることから多方面で注目を集めています。ちなみに第1回目の投票者は20人ほどでしたが、以来年々増え、今回は過去最高の241名(有効投票)の投票数でした。

 

投資家アンケート:リーマンショックは再来する?

 今回のイベントは3部構成で行われました。まず1部では実行委員長を務めるrennyさんと投信ブロガーのセロンさんの司会で、事前に行ったリーマンショック」と「つみたてNISA」に関するアンケート結果が発表されました。

 リーマンショックからちょうど10年になることから行われたアンケートで目を引いたのが、「リーマンショック級の金融危機が再び来ると思うか」という質問に対する回答です。なんと97%の人が「来ると思う」と回答。しかも「いつ頃来ると思うか」という問いに対しては、全体の約6割が「いつきてもおかしくない」と答えています。

 なかには「数年以内に来る」という回答も見られました。投信ブロガーの方々にとっても金融危機は切実な問題であり、普段から暴落に対する備えを心掛けているのかもしれません。

ほぼ全員が一般NISAかつみたてNISAを利用

 次いで昨年1月にスタートした「つみたてNISA」を利用しているかどうかを聞いたアンケートの集計が発表です。結果は「利用している」が52%で、「利用していない」が48%。ただし、全体の半数しか「NISA」を利用していないというわけではありません。

 つみたてNISAを「利用していない」人の内訳を見ると、もともと一般NISAを利用していて、つみたてNISAがスタートしてからも、つみたてNISAに切り替えず、一般NISAを利用し続けている人が全体の46%を占めます(NISAは「一般」か「つみたて」、どちらかひとつしか利用できません)。

 つまり、つみたてNISAを利用していない人の大半は一般NISAを利用しているわけで、どちらも利用していない人は全体の2%に過ぎないという結果になりました。投信ブロガーの方々にとってもNISAは無視できない存在になっているようです。

 

投票者の熱いコメントで盛り上がる

 第2部では、ファイナンシャル・プランナーのカン・チュンドさん(しんようFPオフィス代表)とファイナンシャル・ジャーナリストの竹川美奈子さんが登場しました。投票を行った人たちのコメント(投票理由)の発表です。投資をして思いいれのあるファンド、手数料を下げることなどで意義を感じているファンドなど熱く語るコメントが数多くありました。

 加えて司会の2人のユーモアを交えたやりとりが絶妙で、150人を超える観衆で埋まった場内は大きな盛り上がりを見せました。

 

Fund of the Year 2018 トップ10

 会場が盛り上がったところで、いよいよ第3部「結果発表と表彰式」です。まずは10位から6位が発表され、その後、5位から順番にファンド名が読み上げられ、表彰式が実施されました。結果は下の通りです。

 
1位 eMAXIS Slim先進国株式インデックス 三菱UFJ国際投信 177ポイント
2位 <購入・換金手数料なし>ニッセイ外国株式インデックスファンド ニッセイアセットマネジメント 127ポイント
3位 eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー) 三菱UFJ国際投信 103ポイント
4位 楽天・全米株式インデックス・ファンド(愛称:楽天・バンガード・ファンド〈全米株式〉 楽天投信投資顧問 86ポイント
5位 eMAXIS Slimバランス(8資産均等型) 三菱UFJ国際投信 68ポイント
6位 セゾン・バンガード・グローバルバランスファンド セゾン投信 67ポイント
7位 バンガード・トータル・ワールド・ストックETF(VT) ザ・バンガード・グループ・インク 57ポイント
8位 eMAXIS Slim全米株式(S&P500) 三菱UFJ国際投信 49ポイント
9位 楽天・全世界株式インデックス・ファンド(愛称:楽天・バンガード・ファンド〈全世界株式〉 楽天投信投資顧問 46ポイント
10位 eMAXIS Slim全世界株式(除く日本) 三菱UFJ国際投信 34ポイント

※投票者一人に付き5ポイント。ポイントを1つから5つまでの投資信託に振り分けて投票を行う

 

アクティブファンドはトップ10圏外に

 このランキングを見ると、トップ10すべてがインデックスファンドとなりました。投信ブロガーにはインデックスファンド派が多いこともあり、これまでもインデックスファントが優位に立っていましたが、それでもレオス・キャピタルワークスの「ひふみ投信」や鎌倉投信の「結い2101」など、例年1本か2本はアクティブファンドが名を連ねていました。

 しかし、今回アクティブファンドはトップ10から姿を消しました。また、これはここ数年の傾向ですが、日経平均株価やTOPIX(東証株価指数)など日本株のインデックスファンドはトップ10に入らず。1位、2位は先進国株式インデックスファンドで、3位以下も世界株式や米国株式のインデックスファンドが多く並びました。

1位~5位の運用会社のみなさま

トップ5の投票者・受賞者のコメント

 トップ5のファンドに寄せられたコメントと受賞した運用会社の受賞スピーチをご紹介します。

【1位】大躍進!eMAXIS Slim先進国株式インデックス

 三菱UFJ国際投信のeMAXIS Slimシリーズの1本で、前年度の13位から一気に頂点へと駆け上がりました。2位の「<購入・換金手数料なし>ニッセイ外国株式インデックスファンド」同様、MSCIコクサイインデックスに連動する投資成果を目指して運用するインデックスファンドですが、信託報酬の大幅引き下げを断行したことと運用実績の良さが高く評価されたようです。

[投票者のコメント]
・先進国株式クラスで信託報酬0.1177%(税込)は驚異的です。数年前では考えられない圧倒的な低コストで、この1年で最も個人投資家に貢献したファンドだと思います。
・なんといっても安定性です。そしてコストも最安であり、他社ファンドが値下げすれば直ちに対抗値下げに動くフットワークの軽さも魅力です。
・大多数のインデックス投資家のコア部分である先進国株式クラスに投資できる、最も低コストのファンドだから配点を高くして投票しました。
・長期資産形成に最適解のファンドだと信じています。
・自身が一番投資しているファンドだからです!!

 [受賞コメント]
「eMAXISシリーズを新規設定して以来、多くの方々にご支持をいただきましたが、これまで1位には届きませんでした。今回は初めて1位に選んでいただき、たいへん光栄に思います。

 私たちは業界に先駆けてブロガーミーティングを実施するなど、常に投資家の方々の声に耳を傾け、商品開発に取り組んできました。今後も皆様の信頼を裏切ることのないよう努力を続けて参りますので、よろしくお願いいたします」

 

 【2位】5年連続トップ2の人気ファンド
<購入・換金手数料なし>ニッセイ外国株式インデックスファンド

 ここ数年、個人投資家から高い人気を誇るインデックスファンドで、2014年度から3年連続1位を獲得、2017年度も2位に選出されました。今回1位への返り咲きこそなりませんでしたが、人気におごることなく低コストを追求し続けている点などが幅広い支持を集めました。

[投票者のコメント]
・安定の運用成績と信託報酬率の低さが魅力。外国(米国)株式に興味はあるものの、個別株を買うほどには勇気(と勉強)が足りない。そんな私にちょうどいいのがこのファンドです。
・初めて買ったファンドの1つ。その時からずっとトップ争いを続けているので、乗り換えを検討しなくて良い。
・外国株投信はこれ一本で勝負するという、他社には無い強い意志を感じる。継続的な運用実績に対して評価したい。末長く運用が続くことを望みます。
・5年前にNISAで100万円全額ぶちこみ、きちんと値上がりしたのでロールオーバーしました。信託報酬も着実に下げていますし、長期投資家にふさわしいファンドです。

 [受賞コメント]
「2013年に販売を開始して以来、純資産残高が増えるに従い、信託報酬の引き下げを図ってきました。昨年も夏に残高が1,000億円を突破したとき引き下げを行いましたが、今後はほかの観点からもコストを追求していく所存です。

 実際、すでに監査法人様に監査報酬の引き下げを了承していただきましたし、組み入れ銘柄の売買手数料の引き下げにも取り組んでいます。皆様のご期待にこたえられよう鋭意努力して参ります」

【3位】昨年10月デビューの新顔 eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー) 

 1位に続いてeMAXIS Slimシリーズがランクイン。こちらはMSCIオール・カントリー・ワールド・インデックスに連動する投資成果を目指すインデックスファンドです。昨年10月に設定されたばかりのニューフェイスですが、いきなり3位に食い込みました。

[投票者のコメント]
・手軽に世界に投資ができる1本、迷ったらとりあえず「つみたてNISA」に入れておきたいファンド。
・待ちに待った待望の商品。世界最高の投資商品だと思います。
・日系の運用会社でもバンガード系に対抗できうるファンドがようやく来たかという思いです。今後に期待しています。
・投信ブロガーとの対話を積み重ね、提供に踏み切った点を評価します。2018年に話題を集めたファンドでもあると思います。

 [受賞コメント]
「販売を開始して間もないにもかかわらず、投資信託に精通した投信ブロガーの皆様にご評価いただき、たいへん励みになります。ただ、私は営業担当ですので、第3位に満足するのでなく、もっと欲張らないといけないと考えております。ですので来年もぜひともよろしくお願いいたします」

【4位】米国市場に投資する代表的な1本
楽天・全米株式インデックス・ファンド(愛称:楽天・バンガード・ファンド〈全米株式〉)

 世界最大の投資ファンド、米国バンガード社が運用する「バンガード・トータル・ストック・マーケットETF (VTI)」に100%投資するインデックスファンドです。安定成長を続ける米国市場を投資対象とする代表的な1本で、つみたてNISAやiDeCoの銘柄としても高い人気を誇ります。

 前年度3位から1つ順位を落としましたが、今回も安定した得票を獲得しました。

[投票者のコメント]
・米国ETFでしか買えなかったVTIを低コストで日本円のまま購入できるのはとても嬉しいです。大型株だけでなく、小型株も含めてアメリカ市場に丸ごと投資できるところが魅力的です。
・米国株式ならコレでしょ!
・円建てでVTIに投資可能であり、経費率も低い。こちらもつみたてNISAやiDeCoで利
用したい投資信託のひとつ。
・一部の米国株マニアしか知らなかったVTIを多くのインデックス投資家に知らしめることのできた当ファンドの功績は大きいと思います。

 [受賞コメント]
「昨年に続き、この場に立つことができ、本当に良かったと心より思っております。昨今の投資信託全体の資金の流入を見ると、インデックスファンドへの支持が一層広がり、大きな変わり目が来ているように思われます。そんななかで、この楽天バンガードシリーズについてもさらなるご支持を得られるように努力して参ります。近日中に専用のウェブサイトを開設いたしますので、ぜひともご覧になっていただきたく思います」

【5位】幅広く分散投資できる人気商品 eMAXIS Slimバランス(8資産均等型)

 今回はバランス型ファンドが2本トップ10入りしました。その1つ、eMAXIS Slimバランス(8資産均等型)は、その名の通り、国内株式・債券、先進国株式・債券、新興国株式・債券、国内リート、先進国リートの8つの資産に分散投資できます。1本でバランスの取れた投資ができる人気ファンドです。

[投票者のコメント]
・これ一つで国内・海外、株式・債券・リートとあちこちに分散投資できる手堅い1本。花でいうならカスミソウ。他の投資信託と組み合わせるときに、底支えしてくれるファンド。
・2018年はさまざまな情勢や情報によって相場が荒れる年でしたが、そのなかでこの8資産均等型は可もなく不可もなくといった基準価格を保っていたため、その名に違わぬバランスとしての威厳を輝かせておりました。
・1. 美しいから、2. 楽だから、3. リスクとリターンのバランスがとれているから、そして、4. 超低コストだから
・全部盛り!

[受賞コメント]
「2018年はつみたてNISAが始まり、多くの資金がインデックスファンドに流入したり、米国株式の人気が高まるなど、さまざまな新しい動きが起こった1年でした。そのなかで、eMAXIS Slimシリーズの最もベーシックな商品であるeMAXIS Slimバランス(8資産均等型)が高い評価をいただき、たいへんうれしく思います。今後も皆様に『あったらいいな』と思える商品を提供できるよう日々取り組んで参りたいと思います」

※投票者のコメントは公式Webサイトより引用

<編集後記>イベントに参加して…

 ブロガーさんが選ぶ「ファンドアワード」。投票コメントでは、「初心者に投資をすすめるのなら」「低コストの意味」など世間によりよい投資商品で投資を広げたいと利益度外視で動くブロガーさんの熱くも暖かい気持ちを感じることができました。また、受賞した運用会社からは、「手数料を安くしていこう」などと声があり、個人投資家の想いを運用会社に伝えることのできる貴重なアワードだと感じました。来年はつみたてNISA2年目でもあり、相場は動きそうな年。どんな結果になるのか今から楽しみです。

ートウシル編集チームー

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