<今日のキーワード>
「マーケット・キーワード」では、弊社のアジア株式運用者が運用業務を通して気付いたり、感じたことを“運用者の視点”として定期的にお届けしています。急速かつダイナミックに変革が進む、中国・アジア地域の経済やマーケットの“今”を、独自の視点でお伝えできれば幸いです。今回は、2018年の中国経済やその環境を振り返るとともに、中国建国70年を迎える中国株の『2019年の注目点』を見ていきます。
【ポイント1】2018年の景気・市場へ大きな影響を与えた米中貿易摩擦問題
2018年は、世界的にも、中国にとっても、トランプ米大統領抜きに語ることのできない1年でした。なかでも、2018年で最も影響があったのは、米中貿易摩擦問題でした。これは、単なる貿易不均衡の問題にとどまらず、ハイテク分野での覇権争いに発展し、4月には中国の通信機器メーカー大手のZTEが米国企業と取引停止となりました。さらに12月には、同業のファーウェイの副会長兼最高財務責任者(CFO)が米国の意向を受けてカナダで拘束されるなど、ハイテク分野での米中の対立が激化しました。
【ポイント2】米中交渉の行方は、当初の楽観的な見通しから変化
中国の株式市場をみると、年初こそ世界的な株高と歩調を合わせて上昇したものの、2月以降は一転して下落基調となりました。中国政府がデレバレッジ(債務圧縮)や不動産市場の引き締め政策を継続する中、景気の先行き不安が徐々に高まり、そこに米中貿易摩擦問題が追い打ちをかけました。
米中貿易摩擦問題に関しては、当初の強硬な姿勢はトランプ大統領得意の交渉術であり、加えて交渉が決裂しても誰の得にもならないことから、両国間での合意は難しくないとの見方が大勢でした。しかし、7月以降、実際に関税引き上げの応酬が始まると楽観論は一気に後退し、米国が制裁を発表すると、中国が報復するという構図が定着しました。
【今後の展開】2019年は柔軟な政策対応により景気の腰折れリスクは限定的
『2019年の注目点』は、まずは米中協議の行方と景気への影響です。株式市場も当面は米中協議の進展に左右される展開になると考えられます。一方、中国経済への下押し圧力に対しては、減税やインフラ投資の拡大、銀行の預金準備率の引き下げなど財政・金融政策による対応強化が続いています。2019年は中国建国70年の節目にあたり、今後も必要に応じて柔軟な政策対応が見込まれることから、景気が腰折れするリスクは限定的と見ています。株式市場関連では、バリュエーション面での割安感に注目しています。また需給面では、世界的に主要株価指数の1つと考えられている米MSCI新興国指数の本土A株の組み入れ比率引き上げが春に見込まれ、海外から本土A株市場への資金流入が増えると期待されます。米国の利上げサイクルが終盤に近づくにつれて、中国株など新興国市場に投資資金が回帰する可能性も高まりそうです。
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