1月7日~11日 原油マーケットレビュー

 前週のNY原油相場は大幅反発。昨年末からの戻りが続いた。主要産油国による生産削減により市場が均衡に向かうとの楽観や、米中通商協議への進展期待から買いが優勢となっている。また、株式相場が戻り歩調にあることで、リスク選好度の改善も原油買いを後押しした。心理的な節目である50ドルを回復、約1ヶ月ぶりの高値水準へと値位置を切り上げている。

 今月から石油輸出国機構(OPEC)加盟国およびロシアなど非加盟国による日量120万バレルの協調減産が実施されるなか、12月のOPEC産油量が減少したと伝わった。また、サウジアラビアの12月の原油輸出量が減少したうえ、同国エネルギー相は減産や輸出減少について言及した。さらにロシアのエネルギー相からも、さらなる減産を模索している可能性についてのコメントがあり、これら産油国が需給バランス改善に向けて積極姿勢にあることが示された。市場はこれを好感した。

 米中通商協議への進展期待も底堅さにつながった。7日から始まった米中次官級協議に歩み寄りがあったと伝わり、貿易摩擦を巡る警戒感が後退している。石油の消費大国の景況感が改善するとの楽観から、エネルギー需要の減退観測が薄れた。また、これを受けて株式相場がクリスマス前後の安値以降、急速に値を戻していることで、リスク選好ムードが高まったことも原油買いを促した。

 目新しい材料を欠いてはいるものの、これら2つ側面が下支えとなり、昨年末の長期下落に対する反動から短期的な戻りを期待した買いが断続的に出てきている。また、年をまたいだことで、投機筋が再び買い姿勢に転じた可能性もある。米政府機関の一部閉鎖の影響でポジション動向の発表は見送られているため詳細は不明だが、株安に連動しながらかなりの買いポジションが解消されており、ここ最近の株価戻りに歩調を合わせて再び買い持ちを強めている公算が大きい。昨年末、彼らの手仕舞い売りが下げ幅拡大につながった可能性が高いだけに、ファンド動向には注意したいところ。

 テクニカル面の改善もサポート要因となった。昨年10月以降の下落トレンドにおけるダウントレンドラインをアップブレイクしたことで、買いに弾みがついた。短期的には、長期低迷相場後に緩やかなカーブのなべ底相場を形成、揉み合いの期間は短いが買いシグナルと捉えることができる。これらチャート要因からも相場は押し上げられた。

 これらのことから基調は上向きであると判断できよう。ただし、米国の在庫動向に不安な点がある。米国の原油在庫は直近減少傾向にあるが、税金対策関連での取り崩しの可能性が高く、今週の統計以降は再び積み増しに転じる可能性がある。また、石油製品在庫が軒並み予想以上の増加となっており、前年同期を上回る水準と緩和感が意識されやすい。上昇基調に転じたとはいえ、在庫動向次第で上値が重くなるようだと、戻り一巡と見る向きが増え、調整安を余儀なくされることも想定される。米中協議に関しても楽観視されているが不安も多く、市場のムードが変化しやすい状況にある点は念頭に入れておく必要がある。

 

今週の予想

  • WTI    中立 48.00-53.00ドル
  • BRENT    中立 56.50-61.50ドル