相場の潮目を変えるのは?政治・経済の重要イベント

 毎年、このコラムでは年初めに1年間の重要イベントの日程を取り上げています。1年間の中長期相場シナリオを予測するためには押さえておきたい必須項目です。今週のコラムは保存版として活用してください。

 1年間とは1月から12月のサイクルです。為替市場の主戦場は欧米市場であるため、相場シナリオを考える際には欧米中心の海外投資家と同じサイクルで考える必要があります。ただし、ドル/円の場合は、日本の企業決算は3月決算が多いため、年度の終わりである3月や年度初めの4月に決算に関わる需給要因が加わることに留意しておく必要があります。

 重要イベントとは、相場に瞬間的に影響を与えたり、中長期的に相場の先行きを方向付けるイベントのことです。選挙や国際会議を中心とした政治イベントや経済イベントがあります。政治・経済イベントの日程を押さえながら、そのリスク度合いや影響度を考慮して相場シナリオを考えていく必要があります。

 例えば経済イベントで特に重視するのが、為替相場を中長期的に大きく左右する中央銀行の金融政策会議や、その金融政策を左右する経済成長率(GDP[国内総生産])や CPI (消費者物価指数)、そして米雇用統計です。

 これらの政治・経済日程は、年末年始に新聞や雑誌に特集を組まれることが多いため、注意してみておく必要があります。また経済イベントの日程は、各国政府の管轄部署のウェブサイトや中央銀行のウェブサイトから確認することができます。

 

【政治】2019年の重要日程

 まずは、今年の政治イベントを下表にまとめました。

2019年の重要政治日程

日程 イベント
1月 米中貿易協議開始
日米貿易協議開始
3月  1日 米中協議交渉期限
29日 英国がEU離脱(EU時間30日午前0時)
4月 1日 新元号を決定・公表
7日 統一地方選挙
30日 天皇陛下の退位
5月 1日 皇太子さまの即位
23日 欧州議会選挙(26日まで)
6月 28日 G20(20カ国・地域)首脳会議(大阪、29日まで)
7月 参議院選挙
8月 24日 G7(7カ国・地域)首脳会議(仏ビアリッツ、26日まで)
10月 1日 日本の消費税10%に引き上げ予定

 政治イベントは、2016年のブレグジット(英国のEU[欧州連合]離脱)の国民投票や、米国大統領選挙の時のように、その結果によって瞬時に相場に影響を与える場合や、2018年後半からの米中の追加関税引き上げ合戦によって、ジワジワと経済に影響が及んでくる場合などがあります。しかも、短期にせよ長期にせよ相場への影響が大きくなる場合があり、経済環境も無視して影響を与える場合もあるため、政治イベントは最重要注目項目です。

政治イベントの注目点は?

 今年の注目点を解説します。

1:米中貿易協議

 最大の注目は3月1日が交渉期限となる米中貿易協議です。昨年後半からの株価急落や経済への悪影響を考慮して米中とも市場を静めるために何らかの妥協点を探るのか、あるいは通商交渉に名を借りた覇権争いであるため、両国とも一歩も引かないのかどうか注目です。
特にトランプ米大統領は来年の大統領選挙の再選を目指しているため、選挙に有利に働くような大きな果実が得られなければ、強気の姿勢を貫く可能性もありそうです。また、交渉期限までの間も両国からのけん制球がひんぱんに投げられることが予想されるため目が離せません。

2:日米通商協議

 日米の通商協議も1月から始まります。米中貿易協議がうまくいかない場合、米国内のアピールを目的に日本に対して強硬姿勢に出てくる可能性があります。また、為替水準への言及や為替条項に対して触れてきた場合、円高に働く可能性もあり、注目しておく必要があります。

3:ブレグジット(英国のEU離脱)

 いよいよ3月29日がやってきます。英国がEUを離脱するのかどうか注目です。その前にEU離脱合意案が英国議会で承認されなければなりません。採決日は1月15日前後と言われていますが、再延期の可能性もあるようです。15日前後はポンドが大荒れし、ポンド/円にドル/円も上下に振らされる可能性があるため、注意が必要です。

4:消費増税

 10月に予定されている日本の消費増税実施は、政治的に判断されるため政治イベントとしてとらえます。対策が取られているとはいえ、実施されれば「駆け込み需要増→反動減→消費萎縮で景気後退」と従来のパターンで消費は萎縮し、景気後退が予想されます。さらに、もし世界景気後退が鮮明になっているにもかかわらず、経済環境を考慮せず増税実施が政治的に判断された場合、日本の景気は相当影響を受けるかもしれません。

5:欧州の政局リスク

 欧州の政局リスクは2019年も要注意です。イタリアの財政問題、ドイツの政局混乱、フランスの政局不安定、ポピュリズムの再台頭と、問題山積みですが、今のところは大きな問題とはなっていません。しかし、5月の欧州議会選挙で極右やポピュリズム政党の台頭が目立つ結果になれば、欧州全体の政局は、反EUや移民排斥で一気に揺れるかもしれません。欧州政局リスクは今年も目が離せません。

6:北朝鮮リスク、中東リスク

 北朝鮮リスクや中東リスクは、今のところ注目されていませんが、これらの地域の動向は常に注視する必要があります。4月9日にはイスラエル総選挙が行われます。まだ話題に上っていませんが、選挙結果によっては中東への影響が懸念されます。また、原油が40ドルを切るなど、さらに下落した場合は、中東諸国の結束が乱れるかもしれません。

 

【経済】2019年の重要日程

 為替相場の経済変動要因として最も大きな要因は金融政策です。特にFRB(米連邦準備制度理事会)の金融政策です。昨年12月の株価急落とドル安は、12月のFOMC(米連邦公開市場委員会)の後から一段と深くなりました。市場が期待していたほどハト派ではなかったため市場は失望しました。そして年始になっても下落が続いたため、FRBのパウエル議長は一転、討論会で柔軟な姿勢を示しました。

 この変心を受けて株は反発し、一時104円台を付けたドル/円も108円台に戻しています。しかし、パウエル議長は米景気後退や中国経済減速の懸念に対する安定剤を口先で処方しただけであり、強い経済指標が続かない限り、安心感だけでは相場反発は限られたものになりそうです。

 先週発表された米雇用統計は好調でしたが、このような状況が続くことが必要です。利上げペースを左右する景気の強さ(=GDP)や、物価動向、米国失業率(米国雇用統計は、毎月第1金曜日に前月分が発表)に注目していく必要があります。

 果たして今年の利上げペースが柔軟に決定されていくのかどうか、これらの重要経済指標を注目していく必要があります。

注目のFRB会見で、利上げ回数はどうなる?

 下表に日米欧の金融政策会議の開催日、GDPや物価の公表日をまとめました。

 FRBは今年からFOMC後の記者会見を毎回行ないます。これまでは3カ月ごとの記者会見でしたが、今年からは年8回と回数を倍増させ、パウエル議長は市場と対話することになります。

 まず1月のFOMC後の記者会見でパウエル議長はどのような対話をしてくるのでしょうか。ハト派寄りになりましたが、その後の株反発や好調な米雇用統計を受けて、少しタカ派寄りに振れるのでしょうか。

 利上げをするのならば年前半がチャンスかもしれません。政治イベントが集中する3月のFOMCは注目です。米中貿易協議が決裂すれば、利上げはかなり困難な局面になるかもしれないからです。3月のタイミングで利上げできなければ、ひょっとしたら年内の利上げは難しくなるかもしれません。

日米欧中央銀行の金融政策会議開催日

2019年 日銀金融政策決定会合 FOMC(米連邦公開市場委員会) ECB(欧州中央銀行)理事会 金融イベント
1月 22~23日 29~30日 24日  
2月 FRB議長半期議会証言
3月 14~15日 19~20日 7日  
4月 24~25日※ 30日~5月1日 10日  
5月  
6月  19~20日 18~19日  6日  
7月  29~30日 30~31日    
8月  
9月  18~19日 17~18日 12日  
10月 30~31日 29~30日 24日 ECBドラギ総裁任期満了(31日)
11月  
12月  18~19日 10~11日 12日  
注1:※は日銀「展望レポート」公表(1、4、7、10月)より
注2:FOMCは火~水曜日開催、ECB理事会は木曜日開催(2019年の4月は水曜日開催)
注3:FOMC、ECBとも3、6、9、12月に経済見通しを公表
注4:会議終了後の総裁の記者会見は日米欧とも毎回実施(FRBは従来の3、6、9、12月会見を2019年から毎回実施に変更)
注5:青字は日米欧の理事会が集中している日程。相場変動が大きくなる可能性があり注意を要する

 

各経済指標の発表スケジュール

日米欧GDP速報値の発表日

期間 日本 米国 ユーロ圏
2018年10~12月期 2月14日 1月30日 1月31日
2019年1~3月期 5月中旬 4月26日 4月30日
2019年4~6月期 8月中旬 7月26日 7月31日
2019年7~9月期 11月中旬 10月30日 10月31日

 

日米欧CPI(消費者物価指数)の発表日

2019年 日本 米国 ユーロ圏
1月 18日(12月分) 11日(12月分) 4日(12月分)
2月 22日(1月分) 13日(1月分) 1日(1月分)
3月 22日(2月分) 12日(2月分) 1日(2月分)
4月 10日(3月分) 1日(3月分)
5月 10日(4月分) 3日(4月分)
6月 12日(5月分) 4日(5月分)
28日(6月分)
7月 11日(6月分) 31日(7月分)
8月 13日(7月分) 30日(8月分)
9月 12日(8月分)
10月 10日(9月分) 1日(9月分)
31日(10月分)
11月 13日(10月分)  29日(11月分)
12月 11日(11月分)
※3月分以降の公表日は1月下旬以降に発表予定

 これらのスケジュールは2019年の相場シナリオを考える上で、とても重要です。このコラムを保存版として、今後も活用してください。