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『米雇用統計』は、米労働省が毎月発表する、雇用関連の経済指標です。『米雇用統計』は、米連邦準備制度理事会(FRB)の金融政策の決定に大きな影響を与えるため、金融市場は、その発表で大きく変動することが多く、最も注目される材料の1つです。2018年12月の『米雇用統計』は市場予想を大幅に上回ったうえ、パウエルFRB議長が金融政策を柔軟に見直す考えを示したため、米国株式市場が急反発しました。

 

【ポイント1】雇用者数は予想を上回る31.2万人増

基調としては20万人をやや上回るペースで増加

 2018年12月の非農業部門雇用者数は、前月比31.2万人増となり、ブルームバーグ集計による市場予想の同18.4万人増を大幅に上回りました。また、11月(同17.6万人増)からも増加しました。

 非農業部門雇用者数は、9月以降、天候要因で下押しされていたとみられますが、暖冬も相まって一気に回復したと考えられます。3カ月移動平均、6カ月移動平均をとると、それぞれ25.4万人増、22.2万人増となり、基調としては20万人をやや上回る増加ペースを維持しています。米国の雇用の基調は引き続きしっかりしているといえるでしょう。

 

【ポイント2】失業率は前月から悪化 

緩やかに伸びる賃金上昇率

 失業率は3.9%と前月から0.2%上昇しました。ただし、労働力人口(労働供給)と就業者数(労働需要)が共に伸びているため特に悪い内容とはいえません。

 賃金は前年同月比3.2%増と3カ月連続で3%台の伸びとなりました。賃金上昇率は高まっていますが、依然として緩やかでインフレの急加速は見込まれていません。

 

【今後の展開】米株市場では利上げ警戒感が後退し、景気や業績が焦点に

『米雇用統計』発表後、パウエルFRB議長は、世界的な株安などを受けて「金融政策を柔軟に見直す」と述べ、利上げの一時停止やバランス・シートの縮小ペースを調整する考えを示しました。一段の引き締めを警戒する市場の動揺を抑えにかかったとみられます。

『米雇用統計』とパウエルFRB議長の発言を受けて、4日の米国株式市場は大幅に反発しました。米利上げへの警戒感が後退し、景気の腰折れ回避の見方が強まったことが背景です。金融政策への不信感が払しょくされたことで、今後の米国株式市場は、景気や業績の動向が焦点になっていくとみられます。こうしたなか、7日から始まる米中貿易交渉が注目されます。