アップル・ショック

 アップルが2019年1月2日引け後、利益警告しました。それによると第1四半期(12月期)の売上高ガイダンスは840億ドルへ引き下げられます。ちなみに旧ガイダンスは890億~930億ドル、コンセンサスは913.7億ドルでした。

 売上不振の原因はiPhoneが売れていないことによります。中国のアップル店舗への来店客が減り、売上が著しく減速したのです。米中貿易戦争が影を落としていると考えられます。

 さらに米国市場では、通信会社がハンドセットに対する補助金を相次いで減額したため、高価なiPhoneが売れにくくなっています。

 これが「アップル・ショック」の概要です。米国株式市場は1月3日、急落を演じました。

 

先週金曜日のNFPが強く、市場は回復

 その翌日、1月4日(金)はNFP(非農業部門雇用者数)が31.2万人と強かったため、NY市場は一転して急騰しました。

 

討論会でのパウエル議長の発言にも好感

 同じく1月4日にアトランタで開催された討論会でジェローム・パウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長、ベン・バーナンキ、ジャネット・イエレン前FRB議長らが聴衆を前に意見交換しました。

 そこでの重要なポイントは2点あります。

 まずジェローム・パウエル議長は「トランプ米大統領から辞任を迫られたら、辞任しますか?」という質問に対し、ハッキリ「NO」と言いました。大統領からの圧力に屈しないという意思表示は、市場参加者から好感されました。

 加えて3人は、折からインフレ期待が低いので慌てて利上げしなくても「辛抱強く(patient)」経済指標を追いかけ、ムダなアクションは起こす必要はない、という意見を共有しました。

 実は「辛抱強く」という言い回しは先のFOMC(米連邦公開市場委員会)の記者会見でも使われており、新しい表現ではありません。

 しかし今回の討論会では「FRBは当座、何もしなくていい。そして何かしなければいけなくなったときは臨機応変にアクションを起こす」ということが以前よりハッキリと聞く者に伝わりました。

 これを市場は勝手に「利上げ打ち止め」と解釈し、金曜日のNY市場は+3%以上の大幅高となりました。

 ただ、長い好景気の最後の方でNFPの数字が急に伸びることは過去にも何度も見られたことであり、これ自体は経済が末永く拡大することの保証にはなりません。

 またパウエル議長のコメントも、丹念に見れば先のFOMCの時と同じことしか言ってないのです。だからこれを「利上げ打ち止め」と解釈したのは市場の「お手つき」だと思います。

投資家は用心深いスタンスを崩すべきでない

 投資家は用心深いスタンスを崩すべきでないと思います。なぜなら、1月中旬から始まる決算発表シーズンにて、波乱が予想されるからです。

 まずS&P500株価指数採用銘柄のEPS(一株当たり利益)のコンセンサスはこのところズルズルと下がっています。

 


 上のチャートで去年の1月頃をみると、予想がグイグイ上昇していた点が目立ちます。あのときは税制改革法案が成立した直後で好景気による業績の上昇に加え、積極的な自社株買戻しに対する期待がありました。

 しかし今は、米中貿易戦争で景気の先行きに陰りが見えているばかりでなく、去年のような高水準の自社株買戻しは期待できないのです。

マーケットが乱高下しているうちはダメ

株式投資で儲かるのは、高まった市場のボラティリティーが知らない間に漸減するような局面だと言われています。

 

  その点、ボラティリティー指数は、いまだ高い水準にあり、鎮静化したとは言えません。アップル・ショックのように決算に絡んだネガティブ・サプライズが今後増えるリスクが控えています。

 

「強気のわな」に注意

 弱気相場では、1月4日の立ち会いのように急にマーケットが元気づき「もう大丈夫だ!」と思わせる局面が出ます。しかししばらくするとその熱狂が冷め、再びグズグズした相場に戻ってしまうケースが多いです。そうやって「飛び乗ってはやられる」ことを繰り返すうちに、投資家はだんだん体力を消耗してしまうのです。
 このような現象は「強気のわな(Bull trap)」と呼ばれます。「強気のわな」にひっかからないよう、お気をつけください!