皆さま、明けましておめでとうございます。2019年相場が始まりましたが、お陰様で当連載も5年目に突入しました。引き続き本年もよろしくお願いいたします。

 干支にちなんだ相場格言では「亥年は固まる」とされており、底堅い展開に期待したいところではありますが、新年の幕開けとなる大発会(1月4日)の日経平均は下落で始まり、この日の終値は1万9,561円でした。昨年末の大納会終値(2万14円)比で453円安と、比較的下げ幅が大きかったほか、昨年末になんとか維持した節目の2万円台もあっさり下回ってしまった格好です。

 ただ、その後の日経平均の先物取引市場では、米国株市場が大きく上昇したこともあり、大証では2万100円、CMEが2万80円と2万円台を回復しているため、今週の国内株市場は上昇スタートが見込まれます。

「大発会が1月4日じゃなければ日経平均は2万円台を割ることはなかったのではないか?」という声も聞こえてきそうですが、いつもの通り、日足チャートで足元の状況から確認していきます。

■(図1)日経平均(日足)の動き(2019年1月4日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 

 とは言っても、先週の取引日は大発会の1日だけでした。そして、この日のローソク足の形を見ると、下ヒゲの長い陰線となっています。

 さらに細かい値動きを追っていくと、寄り付きは「窓」空けの1万9,655円といきなり2万円台割れのスタートでした。その後も下落の勢いは止まらず、1万9,241円の安値をつける場面があったものの、引けにかけては下げ幅を縮小し、1万9,561円の終値を迎えました。大納会終値からの騰落で見ると、寄り付きは359円安、そして773円安まで下げ幅を拡大したのち、320円押し戻した453円安で終えた格好ですので、割と値動きがダイナミックだったと言えます。

 ここでのポイントとして、「下落したとはいえ、昨年安値(1万8,948円)を目指す勢いにつながらなかったこと」、そして「下げ幅を縮小させたきっかけがあったこと」が挙げられるかと思います。

 そこで、下の図2で日経平均の日中の値動きを示したTickチャートを見ると、大発会の日経平均は午前10時半ぐらいから下げ幅を縮小する動きに転じていることが分かります。

■(図2)日経平均のTickチャート(2018年12月28日と2019年1月4日取引分)

出所:MARKETSPEEDを元に筆者作成

 ちょうどこの時間から中国株(上海)市場の取引が始まるのですが、この日の上海総合指数は始まりこそ下落だったものの、すぐに上昇に転じて大きく値を伸ばし、終値では2%を超える上昇となりました。中国株の動きが日本株の下落の勢いを弱めるのにかなり寄与したと考えられます。

 この日の中国株が大きく上昇した理由ですが、中国商務省が「米中次官級の貿易協議を近く開催する予定」と発表したことや、李克強首相が景気を支えるために、一段の金融緩和の実施を示唆する発言をしたことなどが挙げられます(その後、中国人民銀行が実際に預金準備率の引き下げを発表しています)。

 そもそも、大発会の日経平均(日本株)が下落スタートだったのは、昨年末に発表された中国の経済指標(製造業PMI[購買担当者指数])が、景況感の判断の分かれ目となる50を下回ったことや、米アップルが中国での不振を理由に売上高見通しを下方修正するなど、年末年始にかけて経済指標や企業業績に対する見方が悪化し、前日までの米中両国の株式市場が軟調だったためです。

 また、前回のレポートでは、「昨年末に見せた株価急落は、米国を中心とする世界景気のピークアウトや企業業績の鈍化をはじめ、懸念材料(米中関係・欧州情勢・米政権運営など)の先行き不透明感を先取りした動きと思われ、実際の企業業績や景況感が先取りしたほど悪くなければ株価は上昇していく」と指摘しました。

 いわば、2019年の相場は昨年末に見せた不安の「先取り下落」の答え合わせをして行こうと思っていた矢先に、冴えない材料が飛び込んで来てしまったわけです。実際に、下の図3で上海総合指数の動きを見ると、足元の株価水準が直近安値(10月19日の2,449p)水準まで下落しており、株価の底割れを避けるために中国当局が相次いで行動を起こした可能性があります。

■(図3)上海総合指数(日足)の動き(2019年1月4日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 

 ちなみに、上海総合指数のローソク足は1月4日の取引で大きな陽線が出現し、前日のローソク足を包み込む「抱き線(つつみ線)」の形になっていますが、ここ直近の値動きをさかのぼると、下落トレンドをひっくり返すことはできないものの、抱き線が出現した後にしばらく戻りを試す場面を見せています。

 さらに、日中株式市場が取引を終了した後の米国株市場でも、パウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長が金融政策の正常化を急がない旨の発言をしたことが買いを誘い、大きく株価が上昇しました。そのため、日本株の反発も大きいものになるかもしれません。

 そこで最後に日経平均の週足チャートも確認します。

■(図4)日経平均(週足)の動き(2019年1月4日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 

 中長期の日経平均は、移動平均線(13週、26週、52週)の向きが下を向いていることや、ダブルトップの「ネックライン」を下抜けたことなどの状況から、上昇トレンドが終わって下落トレンドへと舵を切りつつあり、足元の株価は下方向への意識が強い印象です。

 そこで、直近の高値同士と安値同士を結んで描いた「チャネルライン」のような形が目先の値動きの範囲として想定されます。また、実は何気にサポートとして機能している200週移動平均線が意識される可能性があります。

 従って、株価は好悪材料に翻弄される格好で値動きが荒っぽくなる状況がしばらく続きそうですが、「慌てず、騒がず、うろたえず」の心の余裕が試される相場局面なのかもしれません。