日本株が大幅下落しています。25日の東京株式市場の前場、日経平均株価は1,018円安の1万9147.45円で引けています。年初来安値を大きく下回り、1万9,000万円割れ目前の水準。3連休中の米国株の大幅安を受け、リスク回避の売りが強まっています。

 この株安の理由は大きく4つあると考えています。

  1. 米国のねじれ議会への懸念と予算編成への不安感
  2. 米国の利上げが続くことへの不安感
  3. 米中貿易戦争に端を発する世界景気の悪化懸念
  4. 日本企業の業績下方修正が増えることへの不安

 1つ目は、米国の暫定予算案が合意されず、政府一部機関の閉鎖し、政権運営への不安感が浮上したこと。

 米国は11月の中間選挙で下院を野党民主党に奪取されたため、「ねじれ国会」となりました。トランプ大統領は、減税や公共投資の強化で景気浮揚を狙いたいところでしょうが、議会の紛糾は必至。来年3月に上限を迎える米国債の発行上限の引き上げは難航し、議会の一部機能が停止し、予算編成は困難なものとなることが予想され、これがマーケットの不安材料になりそうです。

 2つ目は、12月に金利を引き上げたFRB(米連邦準備制度理事会)が来年さらに2回の利上げを示唆していることです。経済と金融政策への不透明感が強まっていることです。

 米国の利上げに関しては、景気にブレーキがかかり始めていると市場参加者が考えているにもかかわらず、12月にFRB(米連邦準備制度理事会)が利上げを実施し、FOMC(米連邦公開市場委員会)のメンバーは、2019年にさらに2回に利上げを予想しています。

 マーケットは、来年の利上げはゼロもしくは1回と見込んでいますが、パウエルFRB議長はまだ米国経済にそれほど悲観的になっておらず、その発言が「タカ派」的と捉えられています。

 利上げは、景気がよいときに物価が上がり過ぎないために、市場からお金を吸い上げる目的で行うものですが、景気が鈍化しているタイミングで行えば、悪化を加速させてしまうという懸念があります。
 米経済第一主義のトランプ大統領が、FRBを強く非難する理由はここにあります。

 ここからFRBが利上げ停止を示唆すれば、米国株は落ち着くでしょう。ただし、そうなるとドル安(円高)が進みやすくなり、日本株にとってはマイナス材料となります。

 3つ目の理由は、世界景気悪化に対する懸念です。

 株価は、おおむね景気の半年から1年を先回りして動く傾向にあります。わたしは世界景気は2019年は悪化、2020年に回復すると考えています。日経平均は、今年10月に高値をつけてから下落してしますが、これは2019年の景気悪化を先んじて織り込んできた結果と考えています。

 今、多くの人は「景気はいいのに株が下がっている」と感じていますが、来年になると「景気が悪いので株が下がった」と感じる人が増えるでしょう。その兆しがいろいろなところに出てきました。

 その世界景気の重しになっているのは、米中貿易戦争です。

 米中の貿易摩擦は以下のような流れで、世界経済に影響します。

  1. 中国に設備投資をしようとしていた企業が、その投資を凍結する。
  2. 貿易戦争からハイテク戦争に移行し、AI、IoT関連企業の業績が減速

 4つの目の理由は、日本企業の業績にも悪化の兆しが出始めていることです。

 日本企業の業績で言うと、3月決算企業の9月中間決算は、上方修正する企業のほうが、下方修正する企業よりも多い状況でした。しかし、ここから下方修正が優勢になると見ています。東証1部企業の今期連結純利益は、市場予想では小幅増益ですが、楽天証券では5%前後の減益になると考えています。

 その背景としては、

  • 中国の設備投資の急ブレーキで関連企業の業績悪化
  • 米中ハイテク戦争の影響で、ハイテク関連企業の業績悪化
  • 資源価格急落による素材市況関連企業の業績悪化。鉄鋼、非鉄、化学、石油精製関連など

 などがあります。

 

 ここから来年1月から3月にかけては、日本株については上値の重い展開が予想されます。ただし、先にお話したように、2020年に世界景気は回復すると考えており、2019年の4-6月に株価は底打ちしていくシナリオを想定しています。

 世界景気が回復すると考える理由は以下の4つです。

  • 米中貿易戦争は、ここからさらにエスカレートするが、来年中のどこかで落としどころを見つけ、収束すると予測
  • 原油価格急落は短期的には企業業績にはマイナスだが、2020年には資源安メリットが業績を押し上げると予測
  • 日本の消費増税は景気対策が打たれることで景気後退を回避。2020年の東京オリンピックに向けて景気は盛り返すと予想
  • 世界景気は、社会のネット化はその速度を弱めることはなく、AI・IoT・ロボット関連を中心に回復を見せると考えています。

 ここから悲観論が増えてきますが、私は平成の30年で構造改革を成し遂げた日本株の魅力は高く、ここはよい買い場と判断しています。