過去3カ月の推移と今回の予想値

 

 1月4日、米国の12月雇用統計が発表されます。2019年最初の重要な経済指標であり、この日から新年をスタートする東京市場にとっては、ドルの方向を占う意味においてもおおいに注目されます。

 まずは、予想データをチェックする前に、現状を確認するために前回の雇用統計の結果を振り返りたいと思います。

 

11月雇用統計のレビュー

 11月の雇用統計は、非農業部門雇用数が、事前予想の+20万人に対して+15.5万人にとどまり、また前々回の10月分については+25.0万人から+23.7万人へ下方修正されました。

 平均労働賃金は前月比で0.2%上昇しましたが、予想の0.3%上昇には届かず。10月分も+0.2%から+0.1%に下方修正。前年比は予想と変わらず3.1%でした。

 11月の失業率は過去最低水準の3.7%(正確には3.671%)を維持したものの、その他は予想を下回るなど、全体としてはやや強さに欠けたという印象でした。

12月雇用統計の予想

 今回発表される12月の雇用統計は、前回からのリバウンドを期待できそうです。失業率は3.7%と変わらずですが、非農業部門雇用者数は18.0万人の増加を見込み、平均労働賃金は前月比+0.3%に上昇する予想。前年比については+3.0%にやや低下ですが、ベース効果を考えると悪いわけではありません。マーケットが予想する米雇用統計は堅調であるといえ、その意味で現在の米経済に対する不安は行き過ぎともいえます。

 

雇用者が増えなくなったら問題?

 とはいえ、雇用者がこれまでのようなペースで増加する時代は過ぎたのかもしれません。雇用者数が伸びないとすれば、それはなぜか? 米国経済の減速を示す兆候なのか、あるいは働きたい人の全てが仕事に就くことができる実質的な完全雇用の状態になったのか、ということが議論となってくるでしょう。

 前者ならば、米国経済が大きなターニングポイントに差し掛かったということです。もし後者ならば、企業が人材を取り合うことになって、賃金が今後上昇していくだろうと考えらえます。

 半世紀ぶりの低さといわれる失業率のなかで、今回の予想が示すように労働賃金が緩やかながらも上昇していくのであれば、米国経済に対する悲観よりも、FRB(米連邦準備制度理事会)が待ち望んでいたインフレ率の上昇期待の方が大きいといえます。

 とはいえ、雇用者増ペースの減速とインフレ上昇では、どちらのスピードが速いかということも考える必要があります。この点は、2019年の米経済を考える上での重要なポイントになるでしょう。

 

12月雇用統計のポイントは?

 2018年のマーケットは、年末になって悲観一色に覆われています。新年最初の重要イベントの米雇用統計が良ければ、相場のムードが変わるきっかけになるかもしれません。

 FRBが利上げを中止するような悪材料が見当たらないことを確認できる、言い方をかえると、これまで通り緩やかな利上げ正当化するような強い結果になれば、マーケットにとって大きな安心感となるでしょう。

 とはいえ、現在織り込んでいる以上の利上げ期待があるかというとそれもまた疑問で、その意味では中期的に見てドルはピークを迎えつつあると考えます。