いよいよ2018年最後の重要イベントが今週あります。18-19日に開催されるFOMC(連邦公開市場委員会)の結果に世界中が注目しています。日本時間の20日午前4時にFOMCの声明文が発表されます。その後午前4時半からパウエルFRB(連邦準備制度理事会)議長の記者会見が始まります。

 11月の終わりにパウエル議長が講演会で、政策金利は中立水準を「下回っている」と指摘したことから、マーケットは一気にハト派期待が高まり、米長期金利は下がり、ドルは売られました。無理もありません。パウエル議長は10月初めには「なお距離がある」と発言していたからです。2ヶ月弱の間に修正したこのギャップが、マーケット参加者の見方を前のめりにさせました。今回のFOMCでの利上げ決定は織り込まれましたが、来年の利上げシナリオは9月時点の年3回から、2回、いや、1回以下との見方にまで後退しました。12月の利上げはないかもしれないとの見方まで出てきました。いずれにしろ、マーケットはかなり前のめりになっており、かなりのハト派寄りを期待しているため、FOMCの声明文発表後は、思いもよらない動きをするかもしれません。

 例えば、来年の利上げシナリオが2回になった場合、これまでの3回から2回となるため、本来なら利上げペースの鈍化からドル売り材料となるのですが、既にハト派期待が高く、1回以下との期待が大きいため、1回ではなく2回であったという失望感から、発表直後の反応はドル売りにならないかもしれません。もし、事前にドルを売り過ぎていたら、失望からドルを買い戻す動きになるかもしれません。その後、マーケットは冷静になり、9月時点と比べればFRBの政策が修正されたとの認識から徐々にドル売りになるかもしれません。あくまでひとつのシナリオですが、事前の期待が大き過ぎるとこのようなシナリオも想定されるため注意が必要です。

 従来どおり3回の利上げシナリオとなった場合はどのような反応になるでしょうか。やはり、ハト派期待への失望感からドルが買い戻されるシナリオが想定されます。しかし、その場合、11月終わりの発言(「(中立水準を)下回っている」)との整合性を持たせるために、FOMC後の記者会見でハト派ニュアンスを醸し出すかもしれません。例えば、「今後の金融政策の正常化は経済データ次第」と発言すれば、ドル買いが一転し、ドル売りになるかもしれないため注意が必要です。

FOMC公表の経済見通し、特にGDP見通しも重要な予測であるため注目しておく必要あり

 FOMCで公表されるのは金利見通しと経済見通しがあります。来年、再来年の金利見通しによって、利上げ回数が何回かを予想しているのですが、経済見通し、特にGDP(成長率)見通しも重要な予測であるため注目しておく必要があります。と言いますのは、来年に入っても引き続き利上げ回数が焦点になってきますが、その利上げ回数は物価や経済成長のスピード(成長率)によって回数が変わってくるからです。特に、近年のように物価の伸びが鈍い経済環境では成長率に注目する必要があります。景気が鈍化すれば、物価に影響を与える賃金の伸びも鈍化してくる可能性があるからです。従って来年の経済がどのようなスピードで成長していくかが重要ポイントなります。つまり、今年よりも経済成長が拡大するのかどうか、今年と同じような成長にとどまるのか、あるいは年末に向けて成長が減速していくのかどうかを見ていく必要があります。来年に入って経済成長が減速していくのであれば、減速のスピードによって利上げペースが変わってくる可能性があります。

 例えば、下表のように9月時点のFRBの経済成長率の見通しは2018年が3.1%に対し、2019年は2.5%との見通しとなっています。この減速見通しが、利上げ回数を2018年の4回に対して、2019年は3回の見通しにさせていると思われます。足元の米国GDPは2018年7-9月期で年率3.5%と好調ですが、2019年に入って実際の成長率が2.5%よりも減速していくのであれば、当然、利上げ回数も減ってくるのではないかと市場の期待が高まってきます。パウエル議長が講演や記者会見で景気後退を示唆すれば、利上げペースが鈍化するとの期待は更に高まります。

 このように今週のFOMCで公表される金利見通しと同時に経済見通しにも注目しておく必要があります。下表に前回9月時点のFRBのGDP見通しと直近四半期の米国GDPの実績、合わせて直近のIMF(国際通貨基金)やOECD(経済協力開発機構)などの国際機関の見通しも掲載しました。FRBの見通しは貿易戦争の影響を加味していませんが、IMFやOECDはリスクシナリオとしての影響をGDPへの押し下げ幅(%)として示しています。今回、FRBが経済見通しの中で米中貿易戦争の影響を加味するのかどうかも注目点です。

米国GDP見通し(%)
  予測時点 2018 2019 2020 米中
貿易戦争の
影響
GDP IMF 2018/10 2.9 2.5 1.8 最大▲1.0%
OECD 2018/11 2.9 2.7 2.1 21年までに
最大▲1.1%
FRB 2018/9 3.1 2.5 2.0
実績 2018/7~9 3.5