米中“一時休戦”も金融政策に変化なし、緩やかな緩和策を継続へ
中国人民銀行が米中首脳会談(12月1日)に向けて人民元相場の安定を目指した影響で、国内インターバンク市場の流動性は先週、ややひっ迫傾向に振れた。国債利回りは景気減速と市場の一段の緩和期待を背景にほぼ横ばいで推移した。BOCIは人民銀行が今後も流動性を一定水準に維持し、市中銀行の緩やかな融資拡大を促すとの見方だ。米中が“一時休戦”に合意した後も金融政策の方向性に変化はなく、一段の景気減速を防ぐための段階的な緩和が続くと予想。19年には2-3回の預金準備率の引き上げが行われるとみている(基準金利は維持)。
為替市場では先週、ドルインデックス(ユーロや円など主要6カ国・地域の通貨に対する米ドルの総合的な価値を指数化したもの)が大きく振れる展開となった。トランプ・習会談を控えた慎重ムードやパウエル米連邦準備理事会(FRB)議長のハト派発言が背景。11月の連邦公開市場委員会(FOMC)では12月の利上げ見通しが示されたものの、市場は同議長発言をハト派への転換のシグナルと受け止め、この先の利上げ観測が後退した。BOCIは市場センチメントの改善やFRBによる最近のハト派姿勢を受け、ドルインデックスが今後下げる可能性を指摘している。
人民元為替相場はG20首脳会議(11月30日開幕)前の段階でほぼ横ばいに推移した。BOCIは同会議の後には短期的に不確実性が後退し、リスクオフ姿勢も和らぐとの見方。12月には米利上げが見込まれるが、人民元の対米ドル相場は短期的に横ばいを維持する可能性が高いとした。ただ、中期的には再び元安圧力が高まると予想。理由として国内経済減速や米中の経済ファンダメンタルズの格差、金融政策の方向性の違いを挙げた。
米中貿易戦争の“一時休戦”後も、BOCIは中国の緩和気味の穏健金融政策は基本的に変わらないとの見方。今後も預金準備率の追加引き下げといった緩和策を通じ、金融機関に緩やかな融資拡大を促すとみている。また、一段の減税の実施や政府支出の増額により、財政赤字が拡大する可能性を見込む。一方、米中摩擦の緩和に向け、中国は米国製品の輸入拡大に動く見込み。同時に、米国側への協調姿勢を示すため、短期的な元相場の安定化(元安阻止)を目指す可能性が高い。ただ、摩擦解消に向けた米中の合意は容易ではなく、中国は90日間の休戦期間中、厳しい対米交渉を迫られる見通し。中国にとって特に難題となるのは、自由経済、開放型経済へのシフトに向けた改革を進めているという点で、米国からの信頼を再度勝ち取ること。また、BOCIは中期的に、中国側が◇市場化改革、◇国有企業が寡占するビジネス分野の開放、◇自由・開放型の経済社会へのシフト――などを進める必要があるとの認識。こうした変化の過程で米国と共通利益を追求することにより、中国は国内経済の高度化を進めると同時に、中国を「既存秩序への脅威」とみる米国側の認識を変えることが可能になるとしている。
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