景気減速や金融市況の下降リスクは限定的、政策的な追い風を予想

 BOCIは景気刺激策などの政策余力や「改革」深化の余地を理由に、中国経済と金融市況の下降サイクルは緩やかになるとみている。また、中小企業向け融資の比重拡大や大手企業の債務返済能力の高さなどから、銀行の金利決定力や資産の質に関しても先行きを楽観。現在株価が過度の悲観見通しを反映しているとし、今後の政策動向が投資心理の好転につながる可能性を指摘。セクター全体の先行きに強気見通しを継続した。

 中国経済は18年4-6月期から減速期を迎え、19年も継続する見通しだが、BOCIは景気対策や改革深化が減速を緩和すると予想。一方、金融サイクルは17年がピークだったが、その後の社会融資総量(TSF:実体経済の流動性を示す中国独自の指標)の急速な減速局面は終わったと指摘。政府当局は金融市場の失速を回避するために打てる弾をまだ十分に持っており、下降サイクルを適度に調整するだけの余力があるとしている。

 BOCIはまた、中国の経済成長や融資伸び率の小幅の減速や、社会融資(銀行融資以外)の緩やかな減速、中堅銀行のインターバンクビジネスの縮小圧力の軽減を予想。19年の融資規模全体の伸びについては小幅の減速を見込んでいる。

 一方、景気減速を背景とした企業の融資需要の後退は、銀行の金利決定力にマイナス影響を及ぼす見込み。ただ、BOCIは新規融資の平均金利が19年に目立って低下する可能性は低いとみる。銀行融資全体に占める民営企業・中小企業向け、個人向けのウエートが上昇しているのがその一因。業界全体のNIM(純金利マージン)については、19年に小幅の下げを見込む。銀行の形態別では「株式制商業銀行」(国有4大商銀などに続く全国規模の株式制銀行)のNIMが相対的に高水準となる見通しという。

 18年4-6月からの経済成長の減速を受け、BOCIは19年上期以降、銀行資産の劣化リスクが健在化する可能性があるとした。大手企業の債務返済能力が高水準にあることなどから、銀行業界全体の資産の劣化リスクは制御可能なレベルにとどまるとみるが、零細企業や個人向け(住宅ローン以外)融資のウエートが大きい小規模銀行に関しては、信用リスクが相対的に高いと指摘。前回の業況下降局面に比べ、株式制商業銀行の中でも個別の明暗がより鮮明になるとみている。また、19年には引当前業務純益(業務純益は一般企業の営業利益に相当)の伸びが減速する半面、増益率はやや加速し、業界平均ROE(株主資本利益率)は前年比横ばいで推移するとの見方。大手行と小型行との利益成長率やROEの格差が縮小する半面、小型銀行の中での格差が広がるとみている。

 BOCIはセクター全体に対して強気見通しを継続し、個別では招商銀行(03968)をトップピックとした。資産劣化リスクの低さや高ROEなどが理由。ほかに中国工商銀行(01398)、中国農業銀行(01288)、中国民生銀行(01988)、中国光大銀行(06818)の株価の先行きに対して強気見通しを継続している。