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「有事の円買い」と言われるように、株価の急落など市場のリスク許容度が低下する局面では、安全資産とされる円が買われやすく、為替は『円高・米ドル安』に振れやすくなります。ところが、10月の世界的な株価下落時には日米の株価が月初の高値から一時約10%前後下落したのに対し、為替の変動は2%程度の円高にとどまり、極端な『円高・米ドル安』とはなりませんでした。これは一体なぜなのでしょうか?
【ポイント1】「円安」ではなく「米ドル高」
強い米ドルに資金が集中
10月の株価下落時に「円高」が進行しなかった理由として、足もとの為替水準が「米ドル高」要因によってもたらされており、株価下落の原因となった貿易摩擦の影響による世界経済の減速懸念によっても、その「米ドル高」要因が解消されなかったことが考えられます。
米国の7-9月期の実質GDPが前期比年率+3.5%成長となるなど、経済は好調を維持しています。米連邦準備制度理事会(FRB)は緩やかな利上げを行っており、この12月にも利上げが行われる見通しです。また、2019年も中立水準とされる3%程度まで緩やかに利上げを行うと見られているほか、長期金利は既に3%台まで上昇しており、米ドルには資金が集まりやすい状態となっています。貿易摩擦の影響は今後米国にも及ぶと見られますが、今後も米経済は堅調に推移するとの見方が大勢です。
【ポイント2】日米実質金利差は拡大
ファンダメンタルズから見ても『円高・米ドル安』になりにくい
一方、日米間の重要な為替変動要因である日米の実質金利差も、
1米ドル=110円前後の水準を示唆しています。FRBが緩やかな利上げを行う一方、日銀は金融緩和政策を維持してきたことから、日米の実質金利差は1%を上回る水準に拡大しています。過去のデータによると、実質金利差が1%を上回ると1米ドル=100円を超える「円高」になったことがほとんどなく、この面でも株価の下落が『円高・米ドル安』に結びつかなかった要因だったと考えられます。
【今後の展開】徐々に「米ドル高」要因は弱まるも、ドル円相場は当面レンジ推移となろう
FRBによる利上げは来年の6月でいったん終了すると予想されるほか、米国経済は来年以降、緩やかな減速に向かうと考えられます。そのため、「米ドル高」要因は徐々に弱まると見られます。また、日米間のファンダメンタルズの関係に当面変化はないと見られることから、日米の実質金利差は現状程度の水準が続くと見られます。このように、マーケットに大きな変動要因がない限り、ドル円相場は現在の110円を中心としたレンジでの推移になると予想されます。
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