難しい相場環境が続く日本株。そんな中にわかに盛り上がっているのが「日本株二番底」論。果たしてそれを鵜呑みにしても本当に大丈夫なのでしょうか?

 

日経平均株価が二番底!

 株式投資の世界では、人や立場によって、さまざまな意見・見解を述べています。ここ最近多く目につくのが、「日経平均株価が二番底形成」というものです。

 二番底は、株価が底を打った後に反発してから再度下落したものの前回の底(「一番底」といいます)を割り込まずにとどまる状況です。
 したがって、底打ちの可能性が高く、かつ株を安く買うことができるという状態です。

 日経平均株価をみると、確かに10月26日に2万971円93銭の安値をつけてから反発し、11月8日には2万2,583円43銭をつけました。その後再度下落に転じますが、11月21日に2万1,243円38銭まで下がった後は反発しています。

 したがって、本コラム執筆現在(11月25日)、10月26日が一番底、11月21日が二番底ということになります。

 さらにもう少し時間軸を伸ばしてみると、今年3月26日には日経平均株価が2万347円49銭でしたから、3月26日と10月26日とで一番底、二番底を形成しているともいえます。

 

私たちが投資しているのは「日経平均株価」なのか?

 日経平均株価をみる限りでは、確かに二番底を形成しているようにみえます。しかし私たちが投資しているのは日経平均株価だけではありません。

 日経平均株価は、採用されている225銘柄の平均値にすぎません。私たちが投資対象としている個別銘柄の動きは日経平均株価と必ずしも同じではありません。
 株価の値動きが日経平均株価に似通っている銘柄もあれば、明らかに強い銘柄、明らかに弱い銘柄もあります。

 ですから、日経平均株価が二番底形成といわれても、あまり役には立たないというのが正直なところです。

 逆に、最もやってはいけないのが、「日経平均株価が二番底形成」という言葉をもとに、二番底形成とはなっていない、株価が下落を続けている個別銘柄に新規投資してしまうことです。
 あくまでも見るべきは日経平均株価の動きではなく、投資しようとしている個別銘柄の動きであることに十分注意してください。

筆者が常に見ているものとは

 筆者が日本株の状況を判断する際の参考とするために毎日見ているものがあります。それは「年初来高値更新銘柄数」と「年初来安値更新銘柄数」です。

 これをみると、今年の年初来高値更新銘柄は多くても150銘柄前後で、10月以降は10銘柄ほどしかありません。

 対して、年初来安値更新銘柄は10月26日には774に達しました。11月21日も302銘柄ありました。もう少しさかのぼると、7月5日には542、8月16日には436の銘柄が年初来安値を更新していました。

 これをみると、少なくとも日本株が3月に一番底、10月に二番底をつけているとは到底言えません。3月に一番底をつけているのであれば、7月、8月、10月、11月と立て続けに年初来安値更新銘柄が続出することなど考えられないからです。

 また、11月21日に302銘柄が安値更新しているということは、10月26日および11月21日にそれぞれ一番底、二番底をつけたという見解とも矛盾します。二番底をつけた日に安値を割り込む銘柄が300以上も生じるとは考えにくいからです。

 

無理に安いところを狙う必要は全くない

 確かに個別銘柄の中には、二番底形成の形となっているものもあります。でも、二番底形成のように見える株価の動きであっても、それが本当に二番底だったかどうかは後になってみないと分かりません。

 二番底と想定した株価、もしくは一番底が二番底に近いのであれば一番底の株価を割り込んだら売却するなどの対処をしっかりとすべきです。これを怠ると、多額の含み損をかかえた塩漬け株が生じてしまう恐れがあります。

 筆者も、銘柄によっては二番底と思われる株価近辺で新規買いをすることもあります。ただ、二番底をつけるとき、通常株価はまだ下降トレンドにあります。そのため、結局そこから株価は底割れしてしまうケースも少なくありません。

 したがって、個別銘柄が二番底形成の形となったとしても、少なくとも投資可能資金の大部分を投資するような全力投球をする局面ではなく、打診買い程度にとどめておくことが無難です。

 今年のように相場環境が良くないときは、何とかして挽回しようと無理をしがちですが、その結果返り討ちにあってしまっては元も子もありません。
 多くの個別銘柄が上昇トレンドになるような、利益が得やすい状況を待ってから強気に転じる方が良いと思います。