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 米国で11月6日に行われた中間選挙では、上院は共和党、下院は民主党が勝利しました。このように、上下院で多数派を占める政党が異なる状況を『ねじれ議会』と言います。ただし、米国議会では『ねじれ議会』は珍しくなく、また今回の選挙結果は想定の範囲内と考えられるため、今のところ市場の変動要因とはなっていません。『ねじれ議会』となったことで、今後のトランプ政権の運営はどうなっていくのでしょうか?

 

【ポイント1】『ねじれ議会』でも大統領の政策が覆るわけではない

大統領は今後も通商政策や外交・安全保障政策で存在感を示すだろう

 今回の『ねじれ議会』では、下院の過半数を民主党が占めることから、トランプ大統領は下院民主党との調整が必要となります。ただし、仮に議会が大統領の政策を否定するような法案を可決したとしても、大統領は拒否権を発動できます。また、民主党に駆け引きを持ちかけることで、ある程度の法案成立は可能と考えられます。

 一方、通商政策や外交・安全保障政策は大統領の専権事項で、議会との調整は概ね必要ありません。一般的な見方では、トランプ大統領は今後もこれらに力を入れ、自身の存在感をアピールしていくと考えられます。ただし、追加関税の影響が出てきている点には注意が必要です。

 

【ポイント2】強硬な通商政策の行方は?

追加関税の影響などが出てきている

 トランプ大統領になって以降、米国は堅調な経済成長が続いています。しかし、トランプ大統領の強硬な通商政策が世界経済の減速懸念を招き、その影響は米国の経済成長や景況感、金融市場などに表れつつあります。このため、一段と関税を強化することは難しいと思われます。例えば、対中政策においては、2,670億ドルの対中輸入への追加関税の選択肢は残しつつも、焦点はこれまでの貿易赤字から、ITや知的財産分野へとシフトしていくのではないかと考えられます。

 

【今後の展開】党内及び民主党との新たなバランス関係の構築がポイント

 共和党は、下院では敗退し、上院では勝利したことで、党内の発言権が下院から上院にシフトすると見られます。これまでトランプ大統領の関税政策の後ろ盾となってきた下院共和党の保守派議員を失うかたちとなり、関税政策を強化していくことは難しくなると考えられます。さらに、次回2020年の選挙では上院共和党の改選議席が増え、それが集中するのが農業州やエネルギー産業が盛んな州であることから、関税強化に伴って予想される報復により経済的ダメージを受けることに、トランプ大統領は配慮せざるを得ないと予想されます。

 議会は当面の課題として、予算の成立に取り組むことになります。例年9月末までに次年度の歳出法案を成立させなくてはなりませんが、現時点では予算の一部しか成立していません。予算が成立しない場合、政府閉鎖のリスクがあり、これを避けるためには12月7日までに臨時予算を成立させる必要があります。まずはトランプ大統領が拘っている移民政策について、民主党とどのように折り合いをつけるのかが重要なポイントとなりそうです。