世界中が注目する米中間選挙がついに!        

 このコラムを読まれている頃には米中間選挙の結果が判明しているかもしれません。

 4年前の中間選挙では、結果が判明したのは日本時間で翌日の午後1時頃。今回は7日の昼過ぎ(日本時間)ということになります。

 選挙前、分析会社による最新情勢では、上院が共和党、下院が民主党の勝利となっていましたが、猛迫している共和党が下院でも巻き返しているのでしょうか。

 トランプ米大統領は各州の遊説に先立ち、4日、ホワイトハウスで記者団に対し、「私は主に上院選に力を入れてきた。上院選はうまくいくだろう」と発言。一方、下院選については「うまくいくと思うが、数が多すぎて、すべての議員のところを遊説することができない」とし、下院選の結果が自分自身への審判にはならないと主張しています。大統領自ら上院=共和党、下院=民主党の勝利で仕方ないと防衛線を張っているようです。

 前回の記事で触れましたが最新情勢の予想通り、上院=共和党、下院=民主党の結果となった場合は、不透明要因がなくなったことから、選挙年のパターン通り株高、ドル高と予想されますが、そのドル高はどの程度進むかが注目点です。

 上下院とも共和党勝利となった場合、マーケットにとってはポジティブサプライズであるため、ドル高が一層進むと予想されます。減税第2弾への期待が高まり、株高、ドル高はもっと進む流れです。

 また、上下院とも民主党勝利となった場合はネガティブサプライズであり、ドル安がかなり進むのでしょうか。人事権も法案も通らず、トランプ政権の運営に支障をきたすとの思惑や、減税第2弾も遠のくとの失望から株安、ドル安が予想されます。

 それぞれのシナリオの場合、どの程度のドル高、あるいはドル安が進むと見ておけばよいのでしょうか。その目安を、ドル/円を例に、考えてみたいと思います。

 

選挙後のドル/円の動きを予想

 ドル/円の動きを予想する際に、大きな枠組みとして5円レンジで予想するという考え方があります。

 例えば、トランプ大統領誕生時の動きをトレースします。2016年11月、トランプ氏の勝利によってトランプリスクが嫌気され、最初の反応は開票当日の105円から101円台前半に下落。しかし、その後は減税やインフラ投資の期待で、12月には118円台まで上昇しました。

 ところが、115~120円のレンジには滞留せずに年が変わり、トランプ大統領が就任すると、先行期待の剥落(はくらく)からドル/円は115円以下に押さえられました。

 その結果、2017年を通してほとんどの期間を110~115円のレンジで推移しました。

 この流れを5円レンジで見ると、ドル/円はトランプ大統領の誕生によってそれまでの100~105円のレンジから一気にレンジが10円上の方向にずれて、110~115円に移行したことになります。

 

トランプ大統領誕生ほどの衝撃はなし。5円レンジのずれ程度か

 今年2018年はどうでしょうか。年前半に105~110円の時期がありましたが、夏場以降は110~115円のレンジで動いている状況となっています。

 それでは今回の中間選挙では、結果によってこのレンジが5円、あるいは10円上下に動くようなことが起きるのでしょうか。

 実は今回の中間選挙では、若者の投票率が50年ぶりの高さになるのではないかと言われているぐらい、相当な盛り上がりをみせているため、過去の中間選挙と比較しても意味がないかもしれません。

 このため中間選挙は、現職大統領の信任投票と言われている点から考えると、比較するなら2年前の大統領選挙が適当かもしれません。つまり、トランプ大統領誕生のようなサプライズと期待が起これば、ドル/円のレンジが10円ずれることがあるのかどうかということになります。

 しかし、中間選挙で上下院共和党勝利、あるいは上下院民主党勝利のようなサプライズが起こっても、トランプ大統領誕生のような衝撃度はないかもしれません。そうだとすれば、10円レンジがずれるのは難しく、多くて5円レンジのずれではないでしょうか。ドル高の場合は、110~115円から115~120円の方向へ、ドル安の場合は110~115円から105~110円の方向へレンジが移行するというシナリオが想定されます。

 そして次に想定されたレンジの中で、ドル/円の重要ポイントの攻防を見ていきます。

 ドル高の場合、115~120円のレンジへ移行するためには、まずは今年一度も超えていない115円の壁を乗り超える必要があります。そして、115円の壁を超えた後は、昨年115円以下に押さえられた後の戻り高値である、115.55円が最初の目安となりそうです。これを超えれば、大統領誕生後の高値118.66円がターゲットとなります。

 しかし、この水準を目指すためには、追加減税の規模が相当大きく、成長率を一段と加速させ、FRB(米連邦準備制度理事会)の利上げペースが年3~4回と衰えないことが必要となりそうです。

 ドル安の場合はどうでしょうか。まずは110円の壁、その次は何度となく跳ね返されている108円の壁があります。ここで跳ね返されれば、再び110~115円のレンジに戻されるかもしれません。108円の壁を超えれば、105円を目指す可能性が高まってきそうです。105円を割れると、今年の安値104.56円があります。しかし、その水準に顔合わせするためには、米景気減速による利上げペースの鈍化などの要因が加わってこないと難しいかもしれません。

 このように、選挙結果後のドル高やドル安の勢いからレンジを想定し、そのレンジの中で重要ポイントをブレイクできるかどうかを検討してください。

 そして忘れてならないのは、共和党が勝っても、民主党が勝っても「中国リスク」は残るということです。