過去3ヵ月の推移と今回の予想値
9月雇用統計のレビュー
先月5日に発表された9月米雇用統計では、NFP(非農業部門雇用者数)が予想を大きく下回る+13.4万人の増加にとどまりました。雇用者が伸び悩んだのは、米国本土をこの時期襲ったハリケーン「フローレンス」の影響によるもの。過去2カ月分の雇用者数については上方修正されていますので、全体としてはそれほど悪い結果ではありませんでした。
ただし、平均労働賃金は前月比+0.3%と緩やかな伸びにとどまりました。その前の月の8月には+0.4%まで伸びて、ついに本格的な賃上げ時代がやってきたと市場関係者が喜んだのですが、こちらも+0.3%に下方修正されています。
10月雇用統計の予想は?
そこで今回10月の雇用統計はというと、NFPは+19.0万人増加の予想。前回の雇用鈍化は一過性で、再び雇用者数が盛り返す見込みです。
一方で平均労働賃金は前月比+0.2%の予想で、こちらは伸び悩みが続きそう。前年比が+3.2%と大幅アップしたように見えますが、これは昨年対象月のデータが特に低かったというテクニカルな理由によるもの。構造的変化が起きたわけではないので、若干割り引いて見る必要があります。
とはいえ、失業率が1969年12月以来、実に48年ぶりの低水準となる3.7%まで低下する状況下で労働者不足は深刻で、労働賃金が早晩上昇することは必然といえます。実際、雇用者繋ぎ止めのために一時金(ボーナス)支給を検討している米企業も増えているようです。
雇用統計強ければマーケットは安心。貿易戦争拡大の不安も
10月の雇用統計はおおむね強い予想となっています。雇用が伸び、平均労働賃金の上昇は緩やかということはすなわち、米経済は拡大する中でFRB(米連邦準備制度理事会)は利上げを焦らないという状況なので、株式市場にとっても「優しい」といえます。
とはいえ、グリーンスパン元FRB議長は、最近のインタビューで「現在の労働市場は、これまで私が見てきたなかで、最も逼迫(ひっぱく)した状態にある」と指摘しています。FRBは計画通り12月に今年4度目となる利上げを実施することはほぼ確実視されています。
米労働市場が力強いことは別の意味で心配もあります。トランプ大統領が貿易戦争を中止する理由がなくなる、ということです。雇用統計が良いほど貿易戦争が拡大するリスクもあります。
この2週間、マーケットは世界同時株安に見舞われ、落ち着きのない状態が続いています。米国経済がすでに減速し始めたのではないか、という見方さえ出ています。今回の雇用統計が予想通り強く、不安を打ち消してくれるならば、短期的にはドルが大幅上昇するという期待があります。
しかし、中期的には、貿易戦争の拡大そして米長期金利の上昇するなかで、マーケットが資産バブルの弾ける方向へと進んでいくのは避けられないのかもしれません。
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