10月15日~19日 原油マーケットレビュー

 前週のNY原油相場は続落。週前半はサウジアラビアを巡る地政学的リスクの高まりから値を伸ばしたが、週後半は需給引き締まり観測の後退や株安の影響から一転して反落、売り圧力が強まった。WTI期近11月限は一時68.47ドルまで値位置を切り下げ、9月中旬以来の安値を付ける場面も見られた。

 地政学的リスクを背景に週前半は続伸した。サウジ政府に批判的な記者の失踪を巡り、サウジと米国との関係悪化の可能性が浮上した。サウジ政府よる殺害疑惑もあり、状況次第では関係強化に努めてきた米国が処罰を加える可能性も。これに対してサウジ側は、経済制裁などの措置があった場合には対抗措置もあり得ると強気姿勢を示した。中東におけるイランの影響力を抑止し続けるためにも、米政権はサウジ批判を強めたくないところ。また、サウジとの関係が悪化することで、原油高を嫌う米国の増産要請を退け、原油高、強いてはインフレ、金利上昇、株安といった負の連鎖を招きかねない。米国市民の原油高への不満が政権批判にもつながる可能性があるため、米政権側はこの問題を収束させたいのが実状だろう。複数のメディアは、サウジ政府が記者を尋問中に手違いで死亡させたと事故死での結論で幕引きを図るのではと報じたが、不透明な状況に変わりはなく、中東の緊張が高まるとの警戒から原油は買われた。しかし、サウジのエネルギー相が原油供給不足に陥らないようにすると確約したと、石油輸出国機構(OPEC)事務局長は明らかにしており、同報を背景に買い上がる動きは限定された。

 週央以降は一転して売られる展開となった。米エネルギー情報局(EIA)が発表した週間石油統計で、原油在庫は市場予想以上の大幅な積み増しとなった。4週連続で増加、ここ1ヶ月弱の間に2000万バレルを超える積み増しとなっている。在庫水準は6月下旬以来の高いレベルにあり、需給引き締まりへの見方が急速に和らいだ。EIAの掘削報告では、米国の生産量は11月に過去最高を更新するとの見通しが示されており、供給量は増える可能性がある。一方、エネルギー価格の高騰による消費抑制が懸念され、需給は緩和方向へと進むとの見方が強まった。需給ファンダメンタルズ面から売りが入ったほか、投機マネーの市場流出により下げ足に拍車が掛かった。前々週の世界同時株安が収束したかに思われたが、米連邦公開市場員会(FOMC)議事要旨を受けて利上げ継続見通しが強まった。タカ派見通しから国債利回りが上昇し、ドルが買われる動きに。一方株式市場は、前の週の急落のトリガーとなった金利上昇懸念が再燃したことで売りが先行する展開に。ドルや金への逃避需要が高まっており、方やリスク資産の一角とされる原油は資金撤退により売られる格好となった。節目の70ドルを割り込んだことにより、ストップロスオーダーの売りも巻き込んだとみられ、下げ幅を拡大した。

 イラン産原油禁輸措置に関して、市場はある程度織り込んだ感があり、これを手掛かりとした動きは乏しくなるだろう。米国の原油在庫の動向と投機マネーの流れに注目した値動きとなりそうである。原油在庫に関しては、輸入量、輸出量の増減が主たる在庫変動要因となっているが、ここ最近の水準からすると、在庫は積み増し傾向が続く公算が大きい。引き続き下振れリスクの高い状況が続く見通し。9月上旬の押しが入った68ドル水準を明確に下放れると、短期的に下げ足を速める可能性が高い。同水準を下抜かずに株価が持ち直すと、戻り歩調を強めやすい点には注意が必要である。

 

今週の予想

  • WTI    やや弱め 66.00-71.00ドル
  • BRENT    やや弱め 77.00-82.00ドル