10月8日~12日 原油マーケットレビュー

 前週のNY原油相場は下落。ベアな需給要因から売りも出たが、世界同時株安により投資家心理が冷え込み、リスク回避の流れから売りが膨らんだ。WTI期近11月限は一時70.51ドルまで値を崩し、期近ベースとしては9月21日以来の安値を付ける場面も見られた。

 需給ファンダメンタルズは弱気な材料が散見された。株価急落となる週後半まで、市場の注目要因は米国の対イラン制裁再発動による影響。10月に入り、イランからの原油輸出量が日量100万バレルを下回っているとの報が入った。トランプ米大統領がイラン核合意離脱を表明する前の4月の輸出量は同250万バレルほど。米国がイラン産原油の禁輸を各国に求め、9月の輸出量は同190万バレルへと減少、今月に入ってからはさらに減っているという。しかし、イラン産原油の輸入を減らしている一部の国に対し、米国は制裁の適用除外を検討しているとの報もある。また、インドは制裁発動後となる11月分の購入発注を明らかにしている。4割弱を輸入に依存せざるを得ないインドだが、供給が足りない場合にはサウジアラビアがインド向け輸出を増やすと公言しており、見込まれているイラン産原油供給の減少分に関しては、他の産油国の増産で十分補完可能との見方が強い。何より米国がイランに対する姿勢を緩めている可能性があることは、原油相場にとって売り材料となった。

 また、米国の原油在庫が予想以上の積み増しとなったことも嫌気された。この週に発表された週間石油統計で、原油在庫は600万バレルほど積み上がったことが確認された。前週の統計でも800万バレル近く増えており、需給逼迫への警戒感が後退した。足元の在庫増が示されたうえ、米エネルギー情報局(EIA)や石油輸出国機構(OPEC)の月報では、今年および来年の世界石油需要見通しが下方修正され、かつ供給見通しは上方修正と、弱気な見通しが示されたことも圧迫要因となった。ハリケーン「マイケル」襲来により原油供給に支障が出ることが懸念される場面もあったが、石油関連施設が林立する地帯からは逸れたため、一時的な買いにとどまった。

 これら需給面から下向きのバイアスが掛かるなか、米国の株式市場の急落をきっかけに、アジア、欧州市場の株式市場が軒並み下落し、世界同時株安が引き起こされたことで、原油相場は急速に値を冷やす展開となった。米中貿易摩擦への懸念に加え、米長期金利が上昇したことで、米経済の失速への懸念が株価急落の切欠。これに対してトランプ米大統領は米連邦準備理事会(FRB)を激しく非難している。これまで長期に亘り上昇続けてきたトランプ相場だけに、FRBへの批判は連日に及んだ。この米株式市場の暴落を皮切りにリスク資産から安全資産への資金シフトが加速し、リスク資産の一角とされる原油相場からも投機マネーが流出、手仕舞い売りに拍車を掛けた。

 需給要因からは弱含みで推移する可能性が高いが、投機マネーの流れはトランプ米大統領次第の感は否めず不透明感が残る。イラン制裁に関してもトランプ米大統領絡みの材料であり、株式市場も原油相場もトランプ米大統領次第といったところ。株価が一段安となり、連れ安して節目の70ドルを割り込むと、投げ相場となる可能性がある点は念頭に入れておくべきだろう。

 

今週の予想

  • WTI    やや弱め 68.00-74.00ドル
  • BRENT    やや弱め 77.00-83.00ドル