8月3日、2014年12月の第3次安倍政権発足から3度目となる内閣改造が発表された。新閣僚の顔ぶれはこれまでと同様、首相に近く信頼の厚いメンバーで固められた。また、主要ポストは残留が決まり、麻生財務大臣、世耕経済産業大臣、菅官房長官は続投となった。新内閣は10月をめどに女性、子育て世帯、高齢者への支援を軸とした5兆円規模の補正予算案を提示すると予想される。

加藤勝信氏がGPIFを監督する厚生労働大臣に抜擢

市場と政策の方向性を占ううえで最も注目されるのは、加藤勝信氏が一億総活躍担当大臣からGPIF(年金積立金管理運用独立法人)を監督する厚生労働大臣に抜擢されたことである。加藤大臣は安倍首相が最も信頼する側近の一人で、厚労省は構造改革ならびにマクロバランスの面で重要な新政策を打ち出すと期待される官庁である。

具体的には、従来以上に積極的な労働市場・給付金制度の改革によって女性と若者のフルタイム労働に対する意欲を促進する可能性が出てきた。児童手当の増額や教育費負担の削減、さらには「第三の雇用形態」の推進(フルタイム雇用契約の柔軟性向上)などが考えられる。女性や子育て世帯の可処分所得拡大を焦点とする補正予算案が初秋には提出されると筆者は予想している。

構造的に、前厚労相はGPIFの株式自主運用の解禁に否定的で、現在、株式の保有ポジションはすべて外部の運用会社に委託されている。新たに就任した加藤厚労相がGPIFの自主運用を認めるか否かは注目されるだろう。GPIFの立場からすると、 株式の自主運用は企業にコーポレート・ガバナンスならびにESG(環境・社会・ガバナンス)アカウンタビリティの向上を促すうえで追い風となりうる。加えて、加藤厚労相は給付金の算出と配分を最適化するためにITインフラの整備とビッグデータ分析の使用をこれまでより積極的に推し進めるとみられる。言い換えれば、IT関連予算の増額要請が見込まれるということである。 

つまるところ、安倍首相が直面している課題はここに来て急落している支持率の回復である。

 

10月をめどに5兆円規模の補正予算案が提出されると予想

新閣僚の指名は正しい道筋に向けた第一歩とみられるものの、今後は具体的な新政策がカギとなろう。女性や子育て世帯へのサポート、教育無償化、さらには高齢者介護向けの公的支援拡充が新政策の柱となると予想され、その実現に向けて10月をめどに5兆円規模の補正予算案が提出されると筆者はみている。

金融政策に対する内閣改造の影響はほとんどないだろう。2018年3月に任期満了となる黒田日銀総裁の後任人事について検討が始まるのは早くても来年初め以降とみられる。

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