<今日のキーワード>
人民元の対米ドルレートは、米中貿易摩擦の激化から4月以降下落基調が続いてきましたが、1ドル=『7.0』元に近づいてきた局面で、中国当局から元安抑止策が打ち出されました。8月半ばに一時6.9元台まで売られた人民元は、その後やや反発し、足元では6.8元台で推移しています。中国政府は、更なる元安を望まない水準として『7.0』元を意識しているとみられます。
【ポイント1】元安に歯止めをかける中国当局
人民元の対米ドルレートは米中貿易摩擦の激化で4月以降下落基調が続き、8月15日には6.9元台まで下げました。これを受け、中国人民銀行は8月24日、人民元の基準レート算出にあたり、コントロールの余地を持たせるための「反循環的要素」を再導入したと発表しました。過去の実績では、この仕組みの導入後は元高となっており、『7.0』元を前に、元安に歯止めをかける意思表示をしたと考えられます。中国人民銀行は、人民元が再び下落する局面においては、下落ペースを緩やかにするよう対米ドル基準レートの設定を行う措置を通じて、元安の動きを牽制し、必要であれば、元買い介入も行うと見込まれます。
【ポイント2】中国居住者も『7.0』元を意識
一方、4月から急速に元安が進行したなかで、中国居住者の外貨預金残高は減少しました。2016年の元安局面では、外貨預金残高が増加して、それが元安を加速させる要因となっていましたが、今回は様相が異なります。多くの中国人は、中国当局の元安歯止め策で『7.0』元を前に元安が跳ね返された2016年当時の記憶を鮮明に覚えています。今回は、『7.0』元に近づく過程でドルの利食い売りを行い、外貨預金残高を減らしたと推測されます。
【今後の展開】中国政府の防衛ライン『7.0』元の壁は厚い
中国政府が人民元下落の歯止めに本格的に動き出していることで、対米ドル相場は6.8元台でもみ合う展開となっています。中国の李克強首相は9月19日の講演で、「人民元の下落は害のほうが大きい」と述べ、人民元の一段安を望まない考えを示しました。過度の元安進行は、中国からの資本流出につながり、中国経済に悪影響を及ぼすためです。中国の首相が人民元の水準に言及するのは異例であり、『7.0』元を意識しているとみられます。
中国居住者の外貨預金残高の動きから判断すると、人民元からの資本逃避は起こっていない模様です。中国居住者は過去の経験から政府の意向には逆らわないと考えられます。このため人民元レートの『7.0』元の壁は厚く、人民元の一段安の可能性は小さいとみられます。
本コンテンツは情報の提供を目的としており、投資その他の行動を勧誘する目的で、作成したものではありません。銘柄の選択、売買価格等の投資の最終決定は、お客様ご自身でご判断いただきますようお願いいたします。本コンテンツの情報は、弊社が信頼できると判断した情報源から入手したものですが、その情報源の確実性を保証したものではありません。本コンテンツの記載内容に関するご質問・ご照会等には一切お答え致しかねますので予めご了承お願い致します。また、本コンテンツの記載内容は、予告なしに変更することがあります。