9月17~21日 原油マーケットレビュー

 前週のNY原油相場は上昇。中東の地政学的リスクや米国の原油在庫の減少などを手掛かりに、買い優勢の展開となった。WTI期近10月限は一時71.81ドルまで上昇し、期近ベースとしては7月11日以来の高値を付ける場面もあった。

 前々週対比で値を上げたが、上昇トレンドを形成するだけの材料に乏しく、直近に形成している揉み合いの域を脱したとは判断し難い。レンジ上限付近まで上昇したとはいえ、さらに相場を押し上げる新たな材料は見当たらない。7月に付けた高値にはまだ3ドル以上の開きがある。一気に75ドルに達せず、72-74ドル程度で上げ足鈍ると、むしろ買われ過ぎ感が意識され、利益確定の売りが出やすい状況にあると考えられる。

 シリア軍によるロシア軍機撃墜の報を受け、一時的に地政学的リスクが浮上したが、これを手掛かりに買い上がる動きは見られなかった。また、米国の原油在庫が減少したことで、発表直後には買いが先行して値を上げるも、先行きの需給引き締まりが意識されるほどには至っていない。原油生産量が前の週から増加、またリグ稼働数も増えているため、生産増加傾向は続く可能性が高いとみる向きが多い。現行の価格水準からすると、良好なマージンを背景に採算面からの生産増加は必至だろう。この週の統計では、輸出量が増えたことで在庫は減少したが、米国産原油輸出のインフラが完全とは言えず、今週の統計では輸出量が減る可能性も否めない。予想外の在庫積み増しというシナリオも念頭に入れておくべきだろう。

 また、トランプ米大統領の発言も上値抑制要因。中東の産油国は原油価格を吊り上げているとし、市場を独占するOPECは価格を引き下げる必要があるとのツイートを投稿した。サウジアラビアのファリハ・エネルギー鉱物資源相が、ブレント80ドル以上を容認するかの姿勢を示したこともあり、それを批判したツイートだが、同大統領は5月および6月にも原油価格上昇を抑えるよう要求している。イラン産原油の輸入停止を各国に求めるなど矛盾する点もあるが、原油価格の上昇は回避したい構えであることが改めて鮮明となった。OPECらは週末の会合で増産見送りを決定したが、原油価格上昇を容認しない同大統領の動向には注意が必要である。

 さらに米中両国の貿易摩擦激化への懸念も燻っている。当初の市場予想ほど深刻な状態には陥らないとの見方が広がり、週後半にリスク選好の動きが強まった。これにより、安全資産としてのドル買い需要が後退、米株式市場も高値を更新した。ドル安、株高は原油相場にとっても好材料となるが、通商問題を巡る懸念は払拭された訳ではない。むしろ両国の姿勢からは、泥沼化がさらに進行する可能性も孕んでいる。景気抑制、強いては石油需要の鈍化が懸念される状況に変化はない。

 これらの状況を勘案すると、値を戻しているとはいえ買い安心感は乏しいと判断せざるを得ない。むしろ心理的な節目となる70ドルを割り込むと、失望感から短期的に下げ足を速める可能性がある点には注意が必要である。

 

今週の予想

  • WTI    中立 68.00-73.00ドル
  • BRENT    中立 77.00-82.00ドル