9月10日~14日 原油マーケットレビュー

 前週のNY原油相場は往って来い。ハリケーンリスクの高まりや米国の原油在庫が予想以上の減少となったことを好感、WTI期近10月限は70ドルを上回る場面もあったが、ハリケーン被害への懸念が後退したことで、再び同水準を割り込んでいる。一時71.26ドルまで上昇したが、4日高値71.40ドルを上抜くには至っておらず、短期的にはダブルトップ形成からチャート要因が悪化している点には注意が必要である。

 ハリケーン「フローレンス」はカテゴリー4(5段階で上から2番目に強い)に発達し、米東部ノースカロライナ州付近へ上陸することが見込まれた。同地域に石油精製施設は少ないが、多くの住民が避難したことで、燃料油需要が一時的に高まるとの見方が広がった。また、米南部と米北東部とを結ぶコロニアルパイプラインが操業停止に追い込まれる可能性があるため、これもマーケットは買い材料視した。上げムードが強まるなか、米国の原油在庫が予想以上の取り崩しとなったことが明らかとなり、需給引き締まりへの警戒から71.26ドルまで上昇した。

 しかし、週後半にかけて、ハリケーンによる被害はさほどないのではとの見方が広がったことで、急速に上げ幅を縮小する展開へと転じた。沿岸地域は相応の被害を受ける可能性はあるものの、上陸時のカテゴリーは2と予報段階に比べ勢力を弱めており、過度の懸念は後退した格好。また、パイプラインへの被害もほとんどないとの観測が強まった。コロニアルパイプラインのガソリンなど石油製品の輸送能力は日量300万バレル以上あるため、同パイプラインが被害を受けると、米国の石油製品需給バランスが崩れる可能性が高い。しかし、沿岸地域ではなく内陸部を走っており、ハリケーンも上陸後に勢力を一段と弱める見通しであることから、輸送への支障は出ない可能性が高い。昨年同時期に、ハリケーンの影響で一時操業停止となった経緯があるだけに、過剰に反応したが、その反動もあり売り圧力が強まるに至った。

 米国の原油在庫の取り崩しに関しても、次週以降継続するかは懐疑的にならざるを得ない。この週の統計では、生産減、輸入減と供給量が減り、稼働上昇、輸出増と需要面は増えたため、在庫減少幅は前の週を上回った。しかし、ドライブシーズンが終了したガソリンの在庫は積み上がっており、前年同期の水準をも上回っている。冬季の暖房油需要に備えてディスティレート生産量は増える可能性はあるが、高稼働状態が続くことには疑問である。また、輸入量が直近水準からすると低く、一方の輸出量は高め。ハリケーンによる天候不順で洋上待機などの影響はでるかもしれないが、直近の傾向からすると、輸入は増え、輸出は減る可能性は否めない。これらを勘案すると、在庫は増えても不思議ではない。

 ただし、天候要因には特に注意を払わざるを得ない。大西洋上に発生しているハリケーンなど熱帯低気圧は複数あるが、これらは米国の石油需給に直接影響を及ぼす可能性が低い進路が予報されている。しかし、メキシコ湾内には新たに熱帯低気圧に発達する可能性のある「卵」が発生しており、状況次第では需給バランスを崩す可能性も。引き続き天候要因には警戒が必要である。

 

今週の予想

  • WTI    中立 65.00-70.00ドル
  • BRENT    中立 75.00-80.00ドル