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 かつて『総合重工』各社は中長期的な視点を重視したため、事業再編には積極的ではありませんでした。ただここにきて、収益性や効率性の重視に転じたため事業構造の再構築(選択と集中)を進め始めました。こうした取り組みの結果、『総合重工』各社の収益の中心は、船や土木機械などでなく、航空機や自動車部品などに移ってきています。今後も事業構造の再構築などによる収益力の底上げが進んでいくかが注目されます。

 

【ポイント1】懸案であった造船事業を大幅に縮小

工場完全閉鎖など抜本的な対応に踏みきる

『総合重工』各社はかつての主力事業ながら、厳しい環境が続いた造船事業について、分社化や他社との提携などにより、存続を模索してきましたが、ここにきて抜本的な対応に踏みきりました。IHIが造船の拠点である愛知工場を完全閉鎖しました。30万トン級の大型造船所での完全閉鎖は日本で初めてとなります。旧三井造船の造船事業を引き継いだ三井E&S造船は千葉工場での商船建造を停止、事実上商船建造から撤退します。同様に三菱重工業が長崎工場での建造を半減し、橋梁など土木構造物などにシフトします。

 

【ポイント2】造船以外でも選択と集中が進む

取組みの効果が顕在化

『総合重工』各社は自社内に各種事業を抱えた自前主義と決別して、非中核事業の分社化や縮小と中核事業への集中を進めましたが、その成果がみられるようになりました。

 三菱重工業は、火力設備事業やフォークリフトでは国内企業、洋上風力事業では海外企業と統合して、分社化しました。大幅に遅れたMRJ(三菱リージョナルジェット)の開発体制を、外部人材を活用する体制にシフトしました。こうした効果などもあって、4-6月期の連結経常利益は前年同期の3倍以上となりました。

 IHIは中核事業の航空機関連で、航空自衛隊の次期戦闘機への採用を想定した最先端エンジン「XF9」を防衛装備庁に納入しました。性能は「世界最強の米空軍の「F22」のエンジンに匹敵する」といわれ、同社の素材技術などが採用につながりました。

 

【今後の展開】踏み込んだ事業の再構築よる競争力強化に期待

『総合重工』各社は長期にわたり事業構造の再構築を進めた結果、一定の効果も出始めてきました。ただ海外のシーメンス、GEとは企業規模、時価総額で大きな開きがあり、両社は事業の再構築のスピードを一段と上げています。今後も踏み込んだ事業の再構築を進め、競争力強化が進むことが期待されます。

※個別銘柄に言及していますが、当該銘柄を推奨するものではありません。