9月3日~7日 原油マーケットレビュー

 前週のNY原油相場は反落。ハリケーンリスクを背景に一時買いが先行、WTI期近10月限は一時71.40ドルまで上昇する場面もあったが、その懸念も後退、売り優勢の展開となった。7月中旬の戻り高値水準である71ドル半ばを上抜けずに反落したことで、失望売りも誘われたとみられる。再びドル高が進む可能性も否めず、またチャート上では中期の移動平均線(20日線、25日線)を下回っており、弱気なセンチメントに支配される可能性が高い。

 レーバーデーに伴う3連休明けのNY市場は、ハリケーンリスクが意識され買いが先行した。熱帯暴風雨「ゴードン」がハリケーンへと発達し、4日夜にも石油関連施設の集積地帯があるメキシコ湾岸に上陸するとの予報を受け、供給減少への懸念が強まった。一部石油会社は従業員の避難を始め、生産停止状態になるなど、原油・ガス生産や石油精製の停滞が懸念された。リビアの非常事態宣言も合わせて買い材料視され、WTI 10月限は71.40ドルまで一時値を上げた。しかし、翌営業日には一転してハリケーンリスクが後退、売り優勢へと転じた。ハリケーンに発達することが予報されていたが、予報に反して勢力を弱め、かつ石油関連施設の林立する地域を逸れた。避難により一時生産を停止していた施設も再稼働、操業に特段目立った変化がないことが明らかとなり、前日の上昇に対する反動も重なり、利食い売りが集中し、節目の70ドルを割り込んだ。

 7月中旬の戻り高値水準を上抜けずに打たれたことで、市場のセンチメントは急速に弱気に傾いた。そのため、米国の原油在庫が予想以上に減少したが、市場はこれに大きな関心を示さず、石油製品在庫の増加に反応し値位置を切り下げる動きとなった。ドル高への懸念も重石に。英国の欧州連合(EU)離脱期待からユーロ買いが先行する場面もあったが、米国関連の通商問題を背景に、世界的な貿易に関する緊張から安全資産としてのドル需要の高まりが意識された。ドル建てで取引される原油に対する投資妙味が低下した格好。

 今週は需給要因、外為要因ともに弱気が誘われるだろう。米国の在庫統計で原油在庫は予想以上の減少となったが、生産量が横ばいのなか、リファイナリーへの投入量はやや増えたとはいえ、輸入が増えて輸出が減っている。これだけでみると、在庫減少幅が前々週のそれを上回ったことはイレギュラーと判断せざるを得ない。数値として表面化していない輸送中などの原油が存在している可能性が高く、今週の統計では帳尻合わせから在庫が増える可能性も。また、週末に発表された8月の米雇用統計の内容が概ね良好だったこともあり、9月の利上げが確実視されるなか、12月にもう一度利上げとなる可能性もあり、さらにドル高が進むとの見方もある。

 なお、チャート面においては、直近の戻りの起点となった8月16日安値64.43ドルから9月4日の戻り高値71.40ドルまでの上昇に対する半値押しにあたる67.90ドルを割り込んだ。直近安値67ドルはほぼ0.618押しの67.09ドルに面合わせした格好。67ドルを明確に下放れると、特段のサポートが見当たらないこともあり、節目の65ドルを視野に入れた展開となるだろう。

 
 

今週の予想

  • WTI    やや弱め   65.00-70.00ドル
  • BRENT    やや弱め 73.00-78.00ドル