9月前半のビットコイン/日本円(BTC/JPY)マーケット概況

 8月下旬から9月上旬のビットコイン/日本円相場は、じり高基調が続いていた中、9月5日、ゴールドマン・サックスのトレーディングデスク白紙発表をきっかけに、8月下旬からの上昇分を一気に消す展開となりました。

 それでは、具体的な流れを振り返ってみましょう。CFTC(米商品先物取引委員会)は、8月21日(火)時点のCBOE(シカゴ・オプション取引所)のビットコイン先物の取引データを公開しました。発表資料によると、8月15~21日の1週間における機関投資家のショート(売りポジション)が3,468枚と、前週比210枚減となる一方で、ロング(買いポジション)は2,160枚と前週比56枚増となりました。依然としてショート優位ではあるものの、弱気派の減少の表れ、との見方から買いの勢いが強まり、8月25日には75万円を回復しました。

 また、8月28日(火)には米国のテザー社が5,000万ドル(約55億円)相当のUSDT(仮想通貨テザー)を、仮想通貨取引所ビットフィネックスに送金したことが確認されると、テザーを利用した買いがビットコインに向かうとの思惑から、80万円に迫る上昇をみせました。テザーとは、米ドル(USD)や日本円(JPY)等の法定通貨とほぼ連動した価値を持つ仮想通貨です。USDT(USD Tether)は1テザー=1米ドルとなるよう価格固定された仮想通貨で、ビットコイン取引の過半数がテザー建てで取引されています(9月7日(金)時点、クリプトコンペアより)。

 テザーがビットフィネックスなどの仮想通貨取引所に大量送金された直後に、ビットコイン相場がしばしば急変することから、テザーが価格操作に利用されているのではないかと6月に米国・テキサス大学の研究チームが発表していたという背景があります。

 さらに、9月1日(米国時間31日)16時には、CME(シカゴ・マーカンタイル取引所)のビットコイン先物がSQ(SQ=Special Quotationの略。先物・オプション取引で決済最終日までに決済されなかったポジションを清算するための指数)を迎えたものの、同じくビットコイン先物を扱うCBOEのSQの際とは異なり、これに先駆けた仕掛け的な売買は起こりませんでした。ただ、SQを無事に通過したことが安心感につながったのか、9月1日以降は上昇ピッチを強め、80万円台を回復しました。

 8月下旬にかけてじりじりと値を上げる展開が続きましたが、金融大手のゴールドマン・サックスが仮想通貨トレーディングデスクの設置計画を白紙に戻した、との報道が9月5日(水)に伝わると80万円を割り込み、8月中旬の水準である70万円台までのスピード調整をみせました。ただ、この一件のみでは下げ過ぎとの見方もあり、これに乗じた大口の売りを指摘する声もあります。足元では摘発された闇サイト「シルクロード」のものと見られるウォレットに動きが見られており、約11万枚ものビットコインが売りに回った可能性もあるようです。

■ビットコインの日足チャート

出所:フィスコ作成

BTC/JPYとの相関係数(8月23日~9月6日)

・ドル/円 △0.53 (▲0.43)
・日経平均 △0.37 (▲0.05)
・金/ドル ▲0.49 (▲0.20)
・米10年債 △0.63 (▲0.73)
・NYダウ △0.37 (△0.49)

※フィスコ仮想通貨取引所のBTC/JPYの終値ベース
※1~0.7は強い相関あり、0.7~0. 4はやや相関あり、0.4~0.2は弱い相関あり
※カッコ内は前回(8月9日~8月23日)のもの