8月の為替相場振り返り
8月は、米国とトルコの経済制裁合戦が拡大し、トルコリラの急落から一時金融市場が不安定になりました。
この一連の動きに「トルコショック」という名が付きましたが、結局、「ショック」というほどまでの危機には至らず、8月は大過なく終わりました。8月のドル/円の値幅は2円37銭(高値112.15円、安値109.78円)と、それなりにはありましたが、8月後半は動意に乏しく、連日111円台でのクローズが続き、8月最終日も111.11円で終わりました。
ちょうど月間の高値、安値の半分[(112.15円+109.78円)÷2=110.965円]が約111円なので、今のところ111円近辺が居心地のよい水準かもしれません。
米国株は活況でしたが、ドル/円は金利低下もあり、円安の勢いはなく、結局、ドル/円は方向感を見出せないまま、8月は終えました。
政治イベント続く9月
9月はどのような動きになるのでしょうか。昨年も同じような時期にこのコラムに書きましたが、9月はプラザ世代としては、「通貨大乱の月」と身構えてしまう月です。
「プラザ世代」とは、1985年9月のプラザ合意を経験した世代のことです。ニューヨークのプラザホテルで開催されたG5(日・米・英・独・仏)によるドル高是正の合意によって、1ドル=240円だったドル/円は1日で20円の円高となり、1年後には150円になりました。
毎年9月に必ず何かが起こるわけではないのですが、プラザ合意後も、1992年のポンド危機、2001年の米国同時テロ、2008年のリーマンショックと、金融為替史上に残る歴史的な大事件は9月に起こりました。
今年の9月はどうでしょうか。
米国が引き起こす貿易戦争や新興国リスクへの懸念は払拭されておらず、依然くすぶっている状況です。その他にも下表の通り政治イベントが多く、引き続き警戒しながら注目していく必要がありそうです。
2018年9月の重要イベント
重要イベントに対するマーケットの判断を先読み
まず、9月5日には米国とカナダとのNAFTA再協議が始まります。合意に達すればマーケットにはプラス材料ですが、決裂すればマイナス材料となります。
そして翌6日は、対中関税第3弾2,000億ドルに関する産業界からの意見募集の終了日です。
米通信社は、トランプ米大統領は意見募集終了後、速やかに関税発動を検討すると報じています。発動されると、11月の米中首脳会談を前に、再び米中の報復合戦がエスカレートし、マーケットにはマイナス材料となります。
次に9月9日の北朝鮮建国70周年記念日には軍事パレードが予定されています。これは2月に行われたものよりも大規模との見方があります。もし、ICBM(大陸間弾道ミサイル)を見せびらかすような大規模なパレードが展開された場合、米朝交渉に影響を与える可能性があるため、警戒する必要があります。
さらに9月13日には、トルコ中銀の金融政策決定会合があります。リラ安は止まっておらず、8月のCPI(消費者物価指数)は前年比17.9%の上昇と、7月(+15.85%)よりも悪化しています。トルコ中銀は7月の会合では、エルドアン大統領の圧力もあり、政策金利を据え置きました。
もし、今回利上げをしなければ、マーケットは失望し、通貨も株もさらに急落してしまいます。
仮に利上げをしても、利上げ幅が十分でなければマーケットは失望してしまうでしょう。5%以上の大幅な利上げが不可欠とみられているようですが、エルドアン大統領が果たしてこれを受け入れるかは不透明です。
このような環境の中で9月25~26日には、FOMCが開催されます。
利上げの見方が大勢ですが、注目は12月利上げを示唆するかどうかです。もし、タカ派的な場合、新興国リスクが一段と高まるきっかけになるかもしれません。
通商会議前のトランプ大統領の円安批判を警戒
9月20日の自民党総裁選で安倍晋三首相が再選されれば、25日前後に予定されている日米首脳会談に臨みます。
その前には第2回日米FFR(通商協議)と第3回日米経済対話の開催が予定されています。これらの会談前に、円安批判などのジャブ攻撃が出れば円高に反応するため、これらの会談前から警戒する必要があります。
NAFTA協議がうまくいかず、トルコとの米国人牧師の解放交渉も進展せず、中国とも報復合戦がエスカレートしていた場合、トランプ大統領は中間選挙前の点数稼ぎとして、今まで強硬に出なかった日本に対して一歩踏み込んでくるかもしれません。
このように9月は貿易戦争、新興国リスク、北朝鮮問題と政治リスクが高まる可能性があるイベントが続きますが、8月のように何かが起こるものの、大事には至らなかったように9月も無難に通過できるものでしょうか。
重要イベントを考えると、やはり9月は身構えて臨んだ方がよさそうです。
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