8月20日~24日原油マーケットレビュー 

 前週のNY原油相場は反発。ドル安や米国の原油在庫の減少、対イラン制裁に伴うイランからの輸出減少懸念などを背景に買いが優勢となった。WTIは納会により中心限月が10月限へと限月交代したが、10月限は納会落ちした9月限にサヤ寄せする格好となっている。

 ドル安を背景にドル建てで取引される原油に割安感が意識され、外為市場の動きから買いが入った。トルコリラ危機への不安感は依然として燻っているものの、米中通商交渉の進展期待から安全資産としてのドル買い需要が後退、中国人民元や南ア・ランドの下げが止まった。米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨公表前に、パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長が利上げ方針について否定的な見解を示したこともドル売りにつながった。また、米中通商交渉の進展期待は債券や株式市場にも影響し、投資家のリスク選好度が強まり、米国債利回りが上昇、米株価も6ヶ月半ぶりの高値へと上昇するなど、リスクオン相場となったことも原油相場にとってはプラス材料となった。

 足元の需給状況、先行きの需給見通しからも買いが入った。米エネルギー情報局(EIA)が発表した週間石油統計で、原油在庫は事前予想(150万バレル減)を大幅に上回る600万バレル近くの減少となった。生産量は増え輸出量は減少したが、リファイナリーの稼働は依然として高水準にある。このような状況下、前週に大幅な回復を示した原油輸入量が再び大きく落ち込み、これが影響して在庫取り崩しが進んだ格好。また、米国の制裁によりイラン産原油が11月以降不足するとの見通しも下値を支えた。今月上旬、制裁の第1弾が再度発効しており、11月には原油を伴う取引などを対象とした制裁第2弾が11月5日から実現される予定。米政府は10月から2ヶ月間、戦略石油備蓄(SPR)を1100万バレル放出する方針を明らかにしたが、イラン産原油輸出の減少分を下回る見通しであり、需給は引き締まるとの見方が広がった。

 これらを背景にWTI期近10月限は一時68ドル台へと上昇したが、不安要素も依然として多く、上値の重さは否めない。この週は一時ドル安が進行したが、米中両国の追加輸入関税が23日に発動、週後半には次官級の通商協議に進展が期待できないとの見方が広がり、ドルは買い戻された。パウエルFRB議長の発言を受けドルが再度売られる場面もあったが、貿易摩擦への懸念が残っており、ドル買いが再度強まる可能性がある。ドル高および貿易摩擦悪化への懸念は、原油相場にとってはどちらも弱気な要因。また、米国の原油在庫の動向に関しても不安要素がある。リファイナリーの稼働は高いものの、さらなる上昇は見込み難く、リファイナリーへの投入量は増えるよりは減る可能性の方が高く、その余力(増減幅)も減る方が大きいと判断できる。油価が大きく下げない限り、生産は高止まりないしは増加の公算大。この週の統計では輸出入がともに減少したため、次週はその反動から増える可能性がある。これまでの増減の変動幅を勘案すると、輸入増が輸出増を上回る可能性が高い。そのため、次週統計では、原油在庫は予想外の増加となるリスクを孕んでいる。再度下振れリスクが高まっている点には注意したい。

 

今週の予想

  • WTI    やや弱め 66.00-70.00ドル
  • BRENT    やや弱め 71.00-77.00ドル