インドは主要新興国で最も高い経済成長を示している
インドのGDP(国内総生産)は2014~2018年までの5年間で、平均して年率7.4%で成長してきました。これは主な新興国の中で最も高い数字です。
直近の経済のパフォーマンスを見ると2018年3月で〆た会計年度のGDP成長率は6.7%でした。
GDP成長率が少し落ち込んだ理由は、2016年11月に抜き打ちで実施された「高額紙幣流通廃止措置」による一時的な経済の混乱と、2017年7月に発表された「GST(物品サービス税)の導入」という二つの大きな改革で実業界に混乱が生じたためです。
しかし現在、インド実業界は新しい環境にすっかり順応し、経済の勢いは戻っています。つまり一連の改革による成長の低下は一過性のものでした。
インドの改革の評価
前述の高額紙幣流通廃止措置、ならびにGSTの導入ですが、「まったく空振りに終わった」という評価が一部にされているようですが、私はそうは思いません。なぜなら高額紙幣流通廃止により、インド国民が紙幣を退蔵せず、ちゃんと銀行に預金することにつながったからです。これは、個人の所得の捕捉がしやすくなることを意味します。またクレジットカードなどの電子マネーへの移行も、地下経済の撲滅をさらに加速させます。
一方、GSTの導入は州ごとでバラバラだった税率を一本化し、非効率を取り除きました。
これらのことを合せて考えた場合、インドの徴税ベースはゆっくりと拡大してゆくものと思われます。
財政収支はゆっくり改善へ
海外投資家が新興国に投資する場合、一つのポイントとして、その国の財政収支に注目します。インドの財政収支は悪いですが、今後、これを改善してゆくにあたって、地下経済を駆逐し、徴税ベースをしっかり拡充することは、投資家のコンフィデンス(信頼)を獲得する上でとても重要です。
物価は過去17年で最低
一方、2018年度のインフレ率は、過去17年で最低の3.6%でした。
インドの中央銀行であるインド準備銀行は、インフレのターゲットを4%プラスマイナス2%に置いています。来年以降も、大体そのレンジの範囲内に収まるものと予想されています。
インドの人口は13.2億人とたいへん多いですが、一人当たりのGDPは1,942ドルと貧しいです。貧困比率は国民の21.2%(定義=1日1.9ドル以下で暮らしている)と高いので、物価の上昇は庶民に大変堪えます。その意味では、物価をしっかりコントロールできているということは立派な成果と言えます。
経常収支は赤字だが我慢できる範囲内
経常収支は原油価格の上昇により、原油輸入代金が増えた関係で-1.9%でした。
外貨準備高は4,245億ドルで、これはインドの輸入の8カ月分でした。これは十分だと思います
まとめ
インド政府は、「徴税ベースの拡大」という、大変困難なチャレンジに正面から取り組んでいます。その成果はじわじわと現れ始めています。財政収支や経常収支にはまだまだ改善すべき点がありますが、着実に問題に取り組んでいるという点では、インドほど頑張っている国はないと思います。
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