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『IR』とは、英語のIntegrated Resortの頭文字を取ったもので、日本語では 「統合型リゾート」と言われます。カジノや国際会議場・展示施設、ホテル、娯楽施設、ショッピングモールなどが一体となった複合型観光・商業施設のことです。日本では、先月『IR』実施法が成立し、2020年代前半の開業が見込まれています。今回は、シンガポールを例に『IR』を具体的に見ていきます。

 

【ポイント1】2005年にカジノ解禁、2010年に2カ所の『IR』が開業

いずれも非常に規模が大きく、沢山の観光客を収容できる複合型観光・商業施設

 シンガポールでは2005年にカジノが合法化され、2010年に「リゾート・ワールド・セントーサ」と「マリーナ・ベイ・サンズ」の2カ所の『IR』が開業しました。

「リゾート・ワールド・セントーサ」は先日米朝会談が行われたリゾート地のセントーサ島にあり、展示会や会議が行えるコンベンション・センター、水族館、ユニバーサル・スタジオ・シンガポール、複数のホテルなどが併設されています。一方、「マリーナ・ベイ・サンズ」はビジネスの中心に近いマリーナ・ベイに面し、まるで空に浮かんでいるような船型のプールが屋上にあるホテルや、展示場・会議場、美術館・博物館、劇場、ショッピングモールなどが併設されています。いずれも非常に規模が大きく、沢山の観光客を収容することができます。

 

【ポイント2】巨大な民間投資と観光客の大幅増加などの経済効果

開発費用は2カ所で約1兆円、観光客は約8割増

 各施設の開発費用は、「リゾート・ワールド・セントーサ」は約60億米ドル、「マリーナ・ベイ・サンズ」は約56億米ドルでした。これは2010年当時の1米ドル=87円で換算すると、約1兆円にものぼるもので、巨大な民間投資となりました。

 シンガポールでは、経済情勢などの影響もありますが、国全体の観光客数は『IR』開業前の2009年の約968万人から2017年には約1,742万人と、約8割も増加しました。これにより観光収入が増大したほか、多くの雇用も創出されました。

 

【今後の展開】日本では、日本の観光の魅力をアピールする『IR』が期待される

 これから日本で始まる『IR』開発では、日本の伝統や文化、芸術を活かした公演などによる観光の魅力を増進する施設が含まれると見られます。カジノだけではなく、多くの魅力的な施設により観光客の来訪・滞在を促すことが期待されており、シンガポールの幅広い観光客層にアピールする『IR』は一つの参考となりそうです。

※個別の施設に言及していますが、これらを推奨するものではありません。