今日のポイント

●自動車・金融・資源株には、それぞれ固有の不安材料がある。ただし、配当利回りが高く、株価が割安な銘柄が多いので一定比率を保有したい。金融株が一番、魅力的と考える。

●日本の自動車産業には3つの不安がある。①EV拡大が逆風となること、②保護貿易のターゲットになりやすいこと、③北米自動車販売が減少していることが、懸念される。

自動車株・金融株・資源株が「三大割安株」

私がつねづねお話ししている「三大割安株」とは、自動車・金融・資源株のことです。以下の通り、この3セクターは、PER(株価収益率)、PBR(株価純資産倍率)、配当利回りなどの株価指標で見て割安な銘柄が多いが、不人気で株価の上値は重くなっています。

三大割安株の株価バリュエーション:2017年8月1日時点

コード 銘柄名 種別 株価:円 配当利回り PER:倍 PBR:倍
8306 三菱UFJ FG 金融株 715.4 2.5% 10 0.62
8316 三井住友FG 金融株 4,293.0 3.7% 10 0.61
8411 みずほFG 金融株 195.3 3.8% 9 0.57
8766 東京海上HLDG 金融株 4,735.0 3.4% 13 1.00
8591 オリックス 金融株 1,810.5 3.0% 8 0.91
8058 三菱商事 資源関連株 2,439.0 3.3% 9 0.78
8031 三井物産 資源関連株 1,629.0 3.7% 9 0.76
5020 JXTG HLDG 資源関連株 491.5 3.7% 8 0.98
5711 三菱マテリアル 資源関連株 3,675.0 2.2% 17 0.77
5713 住友金属鉱山 資源関連株 1,677.5 2.1% 15 0.96
7203 トヨタ自動車 自動車関連 6,300.0 3.3% 12 1.06
7267 本田技研工業 自動車関連 3,127.0 3.1% 11 0.77
7201 日産自動車 自動車関連 1,098.0 4.8% 8 0.87
7270 SUBARU 自動車関連 4,016.0 3.6% 11 2.11
5108 ブリヂストン 自動車関連 4,697.0 3.0% 13 1.60

上の表を見ると、三大割安株には、予想配当利回りが高く、PERとPBRが低いものが多数あります。つまり、株価指標で見て割安な銘柄が多いということ。それでも、それぞれ固有の不安材料があることで人気がなく、株価の上値が重くなっています。

個別銘柄の投資判断をするとき、私は株価の割安度と成長性を天秤にかけます。どんなに成長性が低く株式市場で人気がなくても、株価が割安なら「買い」と判断することがあります。一方、どんなに成長性が高く、株式市場で人気が高くても、株価が割高なら「売り」と判断します。

上記の表にあげた三大割安株は、成長性があまり見込めないものの、株価が十分に割安になっているので、保有してみておもしろい銘柄だと考えています。ただし、それぞれ固有の不安材料があるので、それを考慮して、あまりたくさん保有すべきではないと思います。

三大割安株の中では金融株が魅力的、資源・自動車関連は要注意

私は、三大割安株の中では、金融株の投資魅力がもっとも高いと考えています。私には25年間の日本株ファンドマネージャー経験がありますが、もし今も運用していれば、金融株の組入比率は、やや高めとしたいと思います。

金融セクター全般に、金利低下が悪材料となっています。長期金利がゼロまで下がったことで、金融機関の利ザヤがなくなる不安が広がり、株価低迷が続いてきました。ただし、3メガ銀行、大手損保は、海外で利益を拡大するなど、安定的に高収益を稼ぐ力がついてきていると判断しています。安定的に収益を稼ぐ力があることがわかれば、株価は見直されると考えています。

一方、資源関連株は要注意です。世界的な資源の供給過剰は、簡単には解消しそうにありません。資源ビジネスの利益は、長期的に低迷すると考えています。ただし、資源関連ビジネスの比率が高かった総合商社などで、近年は、非資源事業の利益拡大が顕著です。非資源事業での収益力の拡大を評価し、大手商社などは一部、保有してみていいと思います。

問題は、自動車株です。不安材料が多岐にわたり、現時点で積極的に保有したいとは考えていません。それでも、配当利回りが高く、PERやPBRも低いものが多いので、一定比率は保有したいと思います。

 

日本の自動車産業が抱える3つの不安

次世代エコカーの本命がEV(電気自動車)になりつつある

日本が得意とするハイブリッド車ではなく、EVを次世代車の本命に据える国が、世界中に広がっています。EV中心の時代になると、日本が強みを持つ、内燃機関を製造するための産業インフラが不要になります。

●自動車産業は、保護貿易や貿易戦争でターゲットとなりやすい

2012年中国で、大規模な対日デモが起こりました。日本製品排斥運動が広がる中、もっとも深刻な被害を受けたのが日本車でした。同じ日本製品でも、家庭で使う日用品は、あまり被害を受けませんでした。自動車は目立つのでターゲットとなりやすいと言えます。保護主義を強めるトランプ大統領も、自動車産業をターゲットとしています。

近年、企業の不正に対して、世界中で重い課徴金をかける動きが広がっています。中でも、自動車産業や金融産業への課徴金は、どんどん大きくなってきています。自動車産業に対しては、ちょっとした不具合や検査不正が明らかになるだけでも、巨額の制裁金が課される傾向があります。

世界のあらゆる地域で、地政学リスクが拡大していますが、世界中に工場を持って経営している日本の自動車メーカーは、カントリー・リスクの高まりに対しても弱いと言えます。

北米で自動車販売が減少してきている

日本の自動車メーカーにとって稼ぎ頭となっている北米で、自動車販売が減少に転じていることが、収益面で不安材料となっています。

自動車株より、ブリヂストンのほうが魅力的と判断

日本の自動車産業は、さまざまな不安を抱えています。それでも日本車はドイツ車と並び世界でトップクラスの競争力があるのは事実です。また、自動車株には、配当利回りが高く、株価指標で見て割安な銘柄が多数あります。したがって、自動車関連株に一定比率の投資は維持したいと思います。

私は、自動車株よりも、タイヤで世界首位のブリヂストンの方が、投資魅力が高いと考えています。ブリヂストンは、世界中でビジネス展開していますが、特に米国で高いブランド力を持ち、高い収益を上げています。米国での現地生産比率が高く、また、アメリカのビッグ3にも納入していますので、保護貿易のターゲットとなりにくいと考えられます。

営業利益率を比較すると、ブリヂストンはトヨタよりも高くなっています。今期の会社予想ベースで見ると、ブリヂストンの12.5%に対し、トヨタ自動車は5.8%です。ブリヂストンの方がトヨタより収益基盤が堅いといえます。

ブリヂストンは景気変動によって増減する新車タイヤではなく、安定的に増加が見込まれる更新タイヤが主要な収益源となっています。したがって、自動車メーカーよりも収益がディフェンシブ(景気変動の影響を受けにくい)と考えられます。