先週のドル/円の動きから節目を探る

 先週19日(木)に113.18円の高値をつけたドル/円は、今週月曜日までの3日間で2円40銭強の円高となりました。

 19日(木)のニューヨーク市場では好調な米経済指標を受けて、ドル/円が113円台に乗せました(高値113.18円)。しかし、その後トランプ米大統領がツィッターで、「金利が上昇しているのはうれしくない」「人民元が下落してドルが上昇するのは米国にとって不利」と発言したことから、急速にドル売りが強まり、112.05円まで急落しました。この日の値幅は1円13銭でした。

 前日のツイートに続き、再びFRB(米連邦準備制度理事会)の利上げ批判や、「中国やEU(欧州連合)は自国通貨を操作している」と為替操作への不満を発したトランプ大統領。さらに、日銀が長期金利誘導目標の柔軟化を検討との報道があったことで翌20日(金)は、ドル売りが一段と強まり、111.38円まで円高となりました。この日のドル/円の高値は112.62円、安値は111.38円となり、一日の値幅は1円24銭となりました。

 そして今週月曜日の東京市場で110.75円まで売り込まれたことから、この3日間で2円43銭の円高となりました(高値113.18円-安値110.75円)。

 細かいドル/円の数字を並べていますが、大きな値動きのときには細かく描写することにしています。なぜなら、今後、これらのポイントが相場の上げ下げの中で節目になる可能性もあるからです。海外勢を含めた多くのマーケット参加者は「113.18円 → 112.05円 → 112.62円 → 111.38円 → 110.75円」、これらのポイントを意識していることが予想され、これらのポイントの前後で、ドルの買い注文や売り注文が集中する可能性があるため節目になりやすいと言えます。

 

トランプ大統領の為替ツイートを振り返る

 先々週、1週間かけて円安となった値幅は2円50銭でした(110.30円 → 112.80円)。この値幅とほぼ同じ値幅がトランプ大統領のぼやき(ツイッター)で吹っ飛びました、しかも3日間で。

 トランプ大統領はプーチン露大統領との会談後、その説明が二転三転したため支持率が下がりました。その問題から国民の目をそらすために、新たな問題を矢継ぎ早につぶやいたのかもしれません。「ぼやき」のように聞こえるこれらの発言の一部を原文で確かめますと、

“China, the European Union and others have been manipulating their currencies and interest rates lower, while the U.S. is raising rates while the dollars gets stronger and stronger with each passing day.”

“The United States should not be penalized because we are doing so well. Tightening now hurts all that we have done.”

 このように、中国とEUが為替操作をしている一方で、米国は利上げをし、ドルはどんどん強くなっていると不満を露わにしています。そして利上げは我々の(経済)成果を台無しにすると厳しく批判しています。

 しかし、為替操作やドル高への不満は、今に始まったばかりではなくこれまでも発言していることに留意しておく必要があります。例えば、大統領就任早々の昨年1月には、トランプ大統領はドル高についてこういう発言をしています。 

 2017年1月17日付の「ウォール・ストリート・ジャーナル」紙が掲載したインタビューで「我々の通貨(ドル)は強すぎる。米企業は(中国勢と)競争できない」。

 また、同日の電子版では、「ドルを押し下げる」「強いドルを持つことは有利な面もあるが、多くの不利な点も抱える」とドル高をけん制しています。

 為替操作については、同じく昨年1月31日に「他国は資金供給(money supply)と通貨切り下げで有利な立場にある。中国や日本は何年も市場で通貨安誘導を繰り広げ、米国がばかをみている」と、中国と同列で日本の為替政策を強く批判しています。

 今回のつぶやきでは、日本が名指しにされていないからと、安心するのは時期尚早です。原文でみると、中国とEUだけでなく、「others」と他の国も対象にしていることが分かります(”China, the European Union and others”)。日本は直接的には名指しされていませんが、過去の発言で触れていることから、日本が含まれている可能性が十分推測できます。

 IMM(シカゴ・マーカンタイル取引所の国際通貨先物市場)通貨先物の円ショートは、7月17日までの週で5万8,650枚に増加しており、今年3月以来の高水準となっていました。110円台から113円台まで先導したこの投機的な円ショートは、この数日の円高でこなされた感があります。

 しかし、今週27日(金)は米国4~6月期のGDP(国内総生産)発表が控えており、かつ4%超と強気の見方が大勢であるため、円ショートはまだ残っているもようです。

 アトランタ地区連銀の18日時点の4~6月期GDP予想は4.5%と強気の数字です。

 しかし、4%超の強い数字が出ても、節目である戻り高値の112.62円を超えなければ、先週の113円台は当面の高値になるとみて、円ショートポジションを手仕舞いしてくるかもしれません(円高圧力)。

 トランプ大統領のツィッター発言は、まだ「ジャブ」であり、ロシア問題で支持率が低迷し、貿易摩擦によって国民の不満が高まってくれば、夏場にかけて強めのパンチを繰り出し、通貨安批判を一層強めるかもしれません。そのときは日本にも言及する可能性があり、警戒する必要がありそうです。