前々回、前回と配当利回りを用いた銘柄選びのポイントをお伝えしました。配当金についてはほかにも重要な論点がありますので、ここで一気にご紹介したいと思います。
アレコレ(1)~「記念配当」「特別配当」に注意
配当利回りランキングの上位銘柄の多くは、業績が不安定だったり、配当性向が高いといった、配当金が将来減額される可能性が高い何らかのリスクが存在しているということは前回お話ししたとおりです。
でも、中には業績が好調だったり、配当性向がそれほど高くないにもかかわらず配当利回りが高い銘柄があります。その場合、「記念配当」「特別配当」が支払われているケースが大半です。
「記念配当」とは、会社設立50周年記念とか、新工場完成記念など、なんらかのイベントを記念して上乗せされる配当です。
「特別配当」とは、多額の利益が出た年などに、特別に通常より増額される一時的な配当のことをいいます。
いずれの配当も、一時的なもので、翌年以降になると通常の配当に戻ることが大部分です。
そのため、記念配当や特別配当により配当利回りが高くなっている場合は、記念配当や特別配当による上乗せ分を除いた通常の配当金を用いて実質的な配当利回りを出すようにしてください。
配当利回りランキングの上位銘柄をそのまま投資対象にするのではなく、その背景をしっかり調べたうえで検討するようにしましょう。
アレコレ(2)配当利回りが低い銘柄は「割高」?
配当利回りが高すぎる場合は何らかのリスクが存在しているものの、一般的に考えて配当利回りが高い方が、株価は割安といえます。
では逆に、配当利回りが低い場合は、株価は割高と考えてよいのでしょうか?
この質問に対する筆者の答えは、「インカムとキャピタル、どちらの利益を重視しているかによるが、通常はNO」です。
配当利回りが低い銘柄というのは、単に「配当金があまりもらえない」だけです。配当利回りが低くとも、業績が好調で、将来の業績向上も期待できる銘柄であれば、株価の大きな上昇によりキャピタルゲインが期待できます。
配当利回りというインカムゲインを重視している個人投資家の方であっても、キャピタルゲインの可能性も常に頭に入れて銘柄選びをしてもらいたいと筆者は思っています。インカムゲインを追求するあまり、キャピタルゲインを得る機会を自ら閉ざしてしまっては勿体ないです。
配当利回りが低くても、将来業績が大きく伸びたり、配当金が増額される可能性があるならば、キャピタルゲインの観点からも、インカムゲインの観点からも、それは決して割高ではないというのが筆者の結論です。
アレコレ(3)~配当金を出さない会社は「良くない会社」なのか?
また、たくさんの配当金を出す会社が良い会社で、配当金を出さない会社は良くない会社かといえば、それも正しい考え方とはいえません。
なぜなら、あまり配当金を出し過ぎると、会社は将来の投資に必要な資金を確保することができなくなってしまうからです。
会社にとって利益の使い道は、もちろん株主に配当金として還元することもありますが、それと同様に、将来の利益の種まきのために行う投資に対しても必要となります。
成長性が高い会社は、利益をたくさん獲得していても配当金を一切出さないケースも多々あります。それは、株主への配当よりも、会社をより成長させるための投資を優先しているからです。こうした会社は配当利回りではゼロ評価となり、高利回りランキングにも絶対に上位にランクインしませんが、キャピタルゲインの可能性からいえば、十分に投資対象になり得ます。
アレコレ(4)~配当金を出すようになったら成長性鈍化に要注意?
逆に、それまで配当金を一切出していなかった会社が配当金を出すようになった場合、「株主への還元姿勢が高まった」と安易に考えるべきではありません。
一言で「株主への還元」といっても、様々な手法があります。配当金を出すことはもちろん、自己株式を取得・消却する方法もありますし、積極的な投資や研究開発を行って、将来の利益を伸ばすことができれば株価上昇という形で株主の資産形成に貢献することになります。
ですから、成長著しい会社が配当金を出すようになった場合、「成長が鈍化するサイン」と捉える投資家も少なくありません。
もちろん、配当金を出しながら、かつ年々配当金を増額させながら利益を伸ばしている素晴らしい会社もあります。それでも、成長「率」という観点でみれば、やはり配当金を出さずに将来への投資にお金を回している会社の方が高くなる傾向にあります。
そして成長率が高い会社の方が株価も大きく上昇する可能性が高いのも事実です。もし配当金を今まで出していなかった会社が配当金を出すようになったら、その後の株価の推移に十分に注意しておくべきでしょう。
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