7月28日、米国の2017年4-6月期GDP(国内総生産)の速報値が発表されました。予想通りの数字でしたが、前期比で、実質年率+2.6%と加速し、日本や欧州と比べて一歩抜きん出た数字となりました。為替はインフレの伸びが鈍いことから大きくドル高とはなっていませんが、このままGDP成長率の加速が続くのであれば、いずれ物価も上がり、ドル高に回帰する可能性はあります。
一方で、日本の2017年4-6月期GDPも8月に発表されますが、日本も成長が加速していく方向であれば、ドル高の影響は軽減されます。2国間の成長率格差が為替に影響することを考えれば、今後の日本の成長率の行方に注目する必要があります。

まずは政府や日銀の日本の成長率に対する見通しを見てみましょう。7月の後半に政府と日銀が相次いで経済見通しを発表しました。内閣府は7月14日の経済財政諮問会議(議長・安倍首相)で、今年度と新たに2018年度の経済成長率(物価変動の影響を除いた実質GDP)を示しました。今年度は昨年12月時点の予測と同じ+1.5%に据置き、2018年度は+1.4%になるとの見通しでした。また、日銀は7月20日まで開催した金融政策委員会の資料となる展望リポートで実質GDP成長率とCPI(消費者物価指数)の見通しを下表の通り示しました。合わせて物価2%の達成目標は2019年度頃になると1年先送りの見通しも示しました。

※CPIは生鮮食品を除く、( )内は前回との増減

展望リポートの見通しによると、物価は今年度も、2018年度も、2019年度も引き下げていますが、GDPは、今年度は0.2%の増加、2018年度は+0.1%と強気の見方を示しました。内閣府の見通しと比べると、2018年度は同じ1.4%ですが、2017年度は日銀のほうがかなり強気ということがよくわかります。
7月にはIMF(国際通貨基金)も四半期毎の経済見通しを発表しています。日本についてどのように予測しているのでしょうか。米国の見通しと合わせて表にしたのが下表となります。

IMF経済見通し

※( )内は前回との増減                   (2017年7月時点)

 

日本の2017年見通しは4月時点よりも0.1%上方修正されて1.3%となっています。個人消費の持ち直しや堅調な輸出を反映したとの説明です。一方で、2018年は、勢いは続かないとみて前回の0.6%で据置かれています。内閣府や日銀との見通しと比べてみると、年度と暦年の違いはありますが、今年と来年のGDPの減速幅が内閣府は0.1%の減速、日銀は0.4%の減速、そしてIMFは0.7%の大幅な減速となっています。おもしろいものです。見事なほど見方が違います。

さらに、下表は日米の今年の4-6月期までの実績と政府や各機関の今年の見通しを一覧表にしたものです。日本のGDPの見通しは、強気の日銀を除けば総じて1.5%弱となっていることがわかります。直近4-6月期のGDPが1.0%ですので、今後は1%台後半以上の成長が続かないと達成できないかもしれません。ちなみに4-6月期GDPの民間予測は2%割れから2%台後半となっているため、期待が持てそうです。逆に米国は、2.1~2.2%の見通しに対しては、4-6月期の盛り返しによって巡航速度となっています。今後も2%近辺の成長が続くかどうかに注目です。
日米2017年GDPの実績値と予測(%)

※内閣府、日銀は年度見通し、( )内は前回との増減

米国の景気拡大局面は7月で9年目に突入し、戦後3番目の長さとなるそうです。戦後の景気拡大局面の平均期間は約5年のため、8月からはその倍の10年目に入ることから、そろそろ頭打ちではないかとの見方が広まりつつあります。また、この8年間の平均成長率は2%にとどまることから、戦後の景気拡大局面では最も低い成長とのことです。ひょっとしたら4-6月期の2.6%速報値は、これまでの実績と比べるとでき過ぎかもしれないと考えると、改定値や確報値で下方修正のシナリオも想定しておいたほうがよいかもしれません。

日欧よりも一歩抜きん出ても、歴史的には低成長であり、またインフレの伸びが鈍い環境では、成長率格差による為替への影響は、そんなに顕著ではないかもしれません。日本の4-6月期GDPは8月14日に発表されます。加速してきている米国の景気に対してどのような数字が出るのか注目です。