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米国の連邦準備制度理事会(FRB)は、年に2回、金融政策に関する報告書を議会に提出し、併せて上院と下院で議長が証言を行います。これによって、最大雇用と物価安定の実現というFRBの2つの責務達成への見通し、方策を確認することができます。7月17日に上院銀行委員会で行われた今回の『議会証言』で、パウエルFRB議長は、良好な米国の景気、物価情勢を踏まえ、「緩やかな利上げの継続が妥当」と述べました。
【ポイント1】経済は堅調に拡大、物価は低い水準で安定
拡張的な財政政策、緩和的な金融環境等が米景気を押し上げ
パウエル議長は『議会証言』で、米国経済の見通しについて、(1)良好な金融環境、(2)家計、企業の資金需要に十分、対応しうる、より堅固な金融システム、(3)拡張的な財政政策および減税、(4)引き続き堅調な海外経済、等に支えられて拡大を続け、物価上昇率は今後数年にわたってFRBの目標である+2%近傍で推移する、と述べました。
【ポイント2】失業率のさらなる低下を見込む
保護主義的な通商政策等が景気の不透明要因
米国の失業率は、今年上期の平均で4.0%と、およそ18年ぶりの水準近傍まで低下しましたが、パウエル議長にインフレ高騰を懸念する様子は見られません。失業率が下がったにもかかわらず賃金上昇が緩慢なものにとどまっていること、アフリカ系やヒスパニック系の失業率になお改善の余地があること等が理由であり、さらなる失業率の低下を見込んでいます。
一方、経済見通しに対する不透明要因として、トランプ政権による保護主義的な通商政策の影響や、財政支出増加の景気押し上げ効果の規模および、効果が発現する時期等が挙げられました。
【今後の展開】物価の落ち着き等から、緩やかな利上げを継続する見通し
景気が拡大を続け、物価上昇率も+2%近傍で安定した動きとなっていること等から、パウエル議長は「当面は、緩やかなペースで利上げを継続するのが最善の道」と述べました。問題は、利上げの最終的な着地点ですが、米連邦公開市場委員会(FOMC)メンバーによる政策金利の長期予測の中央値が+2.9%であること等を踏まえると、+3.0%前後がひとつの目安になると考えられます。
パウエル議長の『議会証言』が行われた7月17日の米国市場では、米ドルが日本円、ユーロ等の主要通貨に対して買われ、株価が上昇しました。なかでもナスダック総合指数は、終値ベースで史上最高値を更新しました。パウエル議長の米経済に対する楽観的な見通しと、漸進的な利上げ継続の方針を好感したこと等によるものです。一方、10年国債利回りは小動きにとどまりました。
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