関税発動合戦がスタートするも市場は冷静
6月下旬に2週間ほど、英国・ロンドン、スイス・グリンデルワルド、スペイン・バルセロナと欧州を巡りました。
その間のドル/円の値動きが、110円台を行き来しただけの狭い範囲だったのには驚きました。
米朝首脳会談や日米欧の金融政策委員会などのビッグイベント後は、非核化への具体的な道筋が見られず、パウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長の記者会見も予想よりタカ派的ではありませんでした。こういったことから、マーケットの方向感の決め手に欠け、身動きが取れず、7月6日には関税引き上げの発動が控えていることも様子見相場の一因だったようです。
そして、世界が注目した7月6日、米国は予定通り中国に対する関税引き上げを発動。同日、中国も米国からの輸入品に対して関税を引き上げました。
ただ、関税発動は懸念材料として株式市場では大きな売り要因でしたが、実際に発動されると、もはや懸念材料ではなくなったことから株は反発。ドル/円は材料として既に織り込まれていたことから、相変わらず110円台を中心にさまよう展開となっています。
ドル/円の方向が未だ定まらないことから、相場の話はちょっと一休みして、今回は訪問した欧州事情の話をしたいと思います。
欧州事情と言っても、堅苦しい内容ではなく、欧州で見たり聞いたり、感じた点をお伝えしたいと思います。
肌で感じた英国の景気
ロンドンの景気はよかったという印象です。
サマーセールに入ったこともあり、どの店も買い物客でにぎわっていました。建設中のビルも多く、そのビルの上に重機が林立していたのが印象的でした。
ロンドン在住の投資顧問会社の知人にロンドンの景気とBrexit(ブレグジット:英国のEC[欧州連合]からの離脱)の影響を聞いたところ、「景気は悪くないが、Brexitは交渉が進まないことから、今後の不安材料だ。このままだと景気のブレーキになるのは間違いない」と話しました。
帰国後、政権内のEU離脱強硬派の閣僚がメイ首相の穏健路線に反発し、相次いで辞任するという報道が流れてきました。来年3月に離脱するためには今年10月までに大枠でEUと合意する必要がありますが、政権内でいまだ穏健派と強硬派が対立している状況では、英国民だけでなく、他の欧州諸国や先進国も不安にならざるを得ません。
スイス、スペインの現地事情
スイスやスペインの景気は悪くはないという印象でした。
スペイン・バルセロナは1年前にテロ事件があったものの、武装警官の数は少なく、観光客とショッピング客でにぎわっていましたが、ロンドンの方が活気がありました。
スイスでは、観光客にインド人の家族連れが多かったことが印象的でした。中国人や韓国人旅行者よりも多く、中間所得層が勢いよく増加していることを物語っているのでしょうか。
ハンバーガーで探る欧州の物価
海外旅行をしたときに、最も気にかけるのがその国の物価です。
ロンドンは高く、スイスはかなり高いと聞いていましたが、実際はどうなんだろうと思いながら、日本を出発しました。
各国の物価水準を比較するのに「ビッグマック・インデックス」というのがあります。マクドナルドは世界中に店舗を展開しているため、各国の物価水準をビッグマックの価格を比較することによって相対的に高いか低いかを判断する方法です。
今回も試してみたのですが、なぜかマクドナルドの店舗が少なく、バーガーキングの店舗の方が目立ちました。そこでバーガーキングの代表商品であるワッパー・セットの価格をチェックしました。「ワッパー・セット指数」です。
ワッパー・セット指数
ワッパー・セットの価格で比較すると、圧倒的にスイスが高く、日本の約2.1倍、ロンドン、スペインでも約1.2倍と日本よりも物価が高い状況となっています。
しかし、ロンドン在住の人に聞くと、生活実感ではそんなに高くないと話しました。事実、スーパーマーケットに行けば、食品の値段はほとんど日本と変わらず、スイスも同じでした。スイス・グリンデルワルドにも大きなスーパーマーケットができており、食品の値段は日本とほとんど変わりません。
この物価水準には驚きました。ロンドンの物価は3年前と比べてかなり下がっている印象でした。
まとめると、次のようになります。
- 英国景気の現状はよいが、先行きの不安材料が払拭されず、景気の足かせになる可能性がある
- スイス、スペインの景気は悪くはないが、英国ほどよくはない状況
- どの国も物価は高くはなく、食品や衣類などの生活必需品は日本とほとんど変わらない状況
この物価水準を見ると、金利はなかなか上がらないのではないかという思いになります。
6月21日のECB(英国中央銀行)の金融政策委員会では、政策金路は据え置かれましたが、9人のうち、3人が金利引き上げを主張。前回よりもひとり増えたことからポンドが買われました。
しかし、実際の利上げまでにはかなり時間がかかるのではないでしょうか。6月14日のECB理事会では「少なくとも2019年夏までは、政策金利は在の水準にとどまる」としていますが、このことは実感しました。
針の穴から象の体の一部だけをみてい見ているだけなのかもしれませんが、実際に当地で感じた印象は、これまでの経験から大事にしたいと考えています。
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