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欧州連合(EU)には『難民』の受け入れルールとして、『難民』が最初に到着した国での難民申請手続きを義務付ける「ダブリン規則」があります。しかし、『難民』の多くがイタリアやギリシャに到着することから、イタリアなどは受け入れ負担に不公平があると主張しています。また、EUに入った『難民』は経済の豊かなドイツなどに移動しており、こうした『難民』が流入する国では治安や費用面などで国民の不満の一種となっています。
【ポイント1】『難民』の到着口となっているイタリアは強硬な拒否姿勢
6月に誕生した新政権は反『難民』を掲げるポピュリズム政権
6月に誕生したイタリアの新政権で連立の一翼を担う極右政党・同盟は、強硬な反『難民』姿勢を示しています。政権発足早々には、イタリア近くに到着した難民救助船に対して、同盟の党首・サルビーニ副首相兼内相が、強い入港拒否を示したことで、同船が立ち往生する事態となり、結局スペインが受け入れるに至りました。
6月下旬のEU首脳会談でコンテ伊首相は、イタリアなどに到着した『難民』の受け入れを他の加盟国も分担するか、分担しない場合にはEU補助金を削減するなどの独自案を提出するなど、改めて強硬な姿勢を示しました。
【ポイント2】EU首脳会談では難民手続き施設設立で合意
具体策を欠き、ドイツ国内では一時政権崩壊の危機
EU首脳会談では、『難民』問題を含めたEUの改革案について議論されました。イタリアが強硬な姿勢を示したことなどから議論は紛糾しましたが、難民申請手続きのための施設をEUの域内及び域外でそれぞれ設置することを目指す基本方針でなんとか合意しました。
これに対しドイツでは、連立与党党首で内相のゼーホーファー氏が、『難民』は国境で追い払うべきと首脳会談の合意に難色を示し、辞任を示唆したため、一時は政権崩壊も懸念されました。結局、ドイツとオーストリアの国境付近にEU加盟国により登録された『難民』を収容する施設を設立することで合意し、政権危機はひとまず回避されました。
【今後の展開】EU改革を進展させて、より包括的な『難民』対策を
欧州への不法な『難民』の大量流入や、EU内での経済格差拡大によって台頭しているポピュリズムなどへの危機感から、フランスやドイツはEU改革を進めようとしています。メルケル独首相は、今春の政権発足後、EUの南北格差解消のための投資予算や、危機に対応するための欧州版国際通貨基金の創設、国境警備の強化を柱とする改革案を提示しています。EUの『難民』問題は、今回のEU首脳会談の基本合意にとどまらず、マクロン仏大統領やメルケル独首相が提案するEU改革を進展させて、より包括的な対策を講じる必要があると考えられます。また、中東やアフリカからの『難民』を生んでいる各地での紛争等の軋轢は解決していないことから、今後も『難民』の流入は続くと見られ、『難民』問題はEUの懸案事項としてくすぶり続けそうです。
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